品質と信頼の追求
品質マネジメント
グループ品質マネジメント体制
シスメックスでは、取締役社長の統括・管理の下、品質保証部門が中心となり品質マネジメントシステムの維持・改善に取り組んでいます。具体的には、開発、製造、販売・カスタマーケアの各部門の責任者が出席する品質会議を毎月開催し、製品・カスタマーケアの品質・有効性および安全性のモニタリングと、改善に向けた対策の検討を行っています。また、規制当局の査察、品質目標、マネジメントレビューからのアウトプット指示への対応などを審議する品質システム委員会を定期的に開催し、グループの品質マネジメントシステムの維持・改善を推進しています。
さらに、すべての最終製品の生産拠点※において、一般的な品質マネジメントに関する国際規格である ISO 9001、または医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO 13485の認証を取得しています。グループ全83社のうち、ISO 9001は38社、ISO 13485は21社が認証を取得しています。2025年度の内部品質監査で3件、外部品質監査で2件の不適合が確認され、是正対応を進めています。
また、外部監査における重大な不適合および再発不適合の年間0件を品質目標(2026年度)として設定し、継続的な改善に取り組んでいます。さらに、「リコール件数」と「FDA Warning Letter 件数」をサステナビリティ目標のモニタリング指標として設定し、品質の強化に努めています。
- ※100%子会社

詳細は下記 www.tuv.com の ID 0910589004 を参照。(活動およびサイトの適用範囲は規格により異なります。)
製品ライフサイクル全体での品質・安全性の確保
各国法令・規制の遵守
臨床検査で用いられるシスメックスの製品は、人々の生命と健康を守るうえで極めて重要な役割を果たしています。シスメックスでは、製品開発、製造、調達活動において、日本の薬機法やEUのIVD規則、米国FDAの品質マネジメントシステム規則、中国の医療機器監督管理条例など、世界各国の法令・規制を遵守するため、品質マネジメントシステムを運用するとともに、開発・製造・調達の各プロセスにおいて規制要求事項を管理しています。また、内部監査、サプライヤー監査、従業員教育および継続的改善活動を通じて、製品の安全性および品質の維持・向上を図っています。
品質を確保する仕組み
シスメックスでは、製品開発プロセスにおいて、市場に導入するまでに5つの「クオリティ・ゲート」※1を設けて品質を確認しています。また、設計・開発時だけでなく、製品のライフサイクル全体を通じて継続的に品質・安全性に関するリスクアセスメント※2を実施し、リスクの高い事象に対しては適切なリスク低減策を講じています。さらに、シスメックスが製造販売業者として責任を負う製品については、品質マネジメントシステムに基づく製造所管理や品質確認を行い、品質確保に努めています。万一、不具合が発生した場合には、速やかに内容を把握し、適切な対応を行う体制を整えています。
製造現場では、定期的な品質監査の実施に加え、製造工程の進捗状況や逸脱事項を継続的に監視しています。また、サプライヤーから購入した材料については受入検査や工程内検査を行い、品質状況を確認しています。不適合率の高いサプライヤーに対しては、品質改善に向けた指導や支援を行うことで品質を確保する体制を整えています。また、是正処置・予防処置が必要な場合には、社内の規程に基づき、速やかに計画を立案し、処置およびその後の妥当性・有効性の確認までを一貫して実施しています。さらに、品質とトレーサビリティの確保のため、RFID※3や一部の検査用試薬の輸送においてGPSや温度ロガー※4を導入し、高度な品質保証が求められる診断薬製品の輸送を行っています。
- ※1商品設計審査、工程設計審査、品質部門による評価、製造販売前QMS 確認、量産品審査
- ※2 製品に含まれる有害物質を含む化学物質のリスク評価を含め、製品の品質・安全性を確保するため、設計・開発段階において体系的な評価を実施。評価は、ハザードの特定(過去の不具合情報などに基づく危険要因の抽出)、危険特性評価(人体・環境への影響の重大性評価)、曝露評価(誤操作、機器不具合などに対する曝露可能性の評価)、リスク特性評価(発生確率と影響度に基づく総合評価)のプロセスから構成
- ※3電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム。使用するRFIDタグはパッシブ型でタグ自体は電波を発するものではなく、RFID リーダーの電波を受けて非接触かつ一括での情報読取が可能
- ※4温度計に記録機能(ロガー)が付いた測定器
品質情報を活用した継続的改善と未然防止
シスメックスでは、市販後監視や製造工程から得られる品質データの活用を高度化し、設計・開発段階へのフィードバックを通じた未然防止型の品質保証体制の強化に取り組んでいます。
具体的には、グローバル品質苦情処理システムにより、市場から品質情報をグローバルかつタイムリーに収集しています。不具合情報を入手した場合には速やかに原因究明を行い、不具合品の市場流出防止に努めています。
また、品質保証部門による定期的な情報精査と継続的な情報収集に基づき、市場および出荷前の不具合情報を全社データベースとして一元管理しています。
これらの品質情報は設計・開発段階へ確実にフィードバックされ、リスクアセスメントと連携することで、類似製品におけるハザード抽出や対策検討の高度化を図っています。

グローバルに信頼される精度保証体制
患者さんが適切な診断や治療を受けるためには、検査結果の信頼性が不可欠です。シスメックスは、医療機関や地域が異なっても信頼して活用できる検査結果を提供できるよう、国際規格に基づく精度保証の仕組みを構築しています。
当社はヘマトロジー分野において、ICSH※1やCLSI※2の標準化指針に基づき、30年以上にわたり計量トレーサビリティ(測定結果を国際的な基準につなげる仕組み)を構築・維持してきました。
こうした信頼性は、検査のプロセス全体で支えられています。当社は、検査の出発点から医療現場、そして患者さんに至るまでをつなぐ精度保証の体系を整備しています。
標準物質(検査結果の基準となる試料)により検査の“正しさの起点”を支え、ヘマトロジー分野ではISO 17034の認定を取得しています。さらに、計量トレーサビリティにより測定値を国際的な基準へ結びつけ、医療機関が異なっても同等の意味を持つ値を実現しています(日本ではISO/IEC 17025およびISO 15195を取得)。
また、ISO/IEC 17043に基づく外部精度管理サービスを提供し、多施設間での比較・評価を通じて臨床検査室の品質改善を支援しています。これらの取り組みは、ISO 15189やCAP認定などに基づく品質マネジメントを支え、信頼性の高い検査データの提供につながっています(日本ではISO 15189認定の取得・運用支援も実施)。
最終的に、これらの仕組みが医師の適切な判断を支え、患者さんへの適切な診断・治療につながります。
シスメックスは、標準物質、計量トレーサビリティ、外部精度管理から成る精度保証の体系を通じて、医療の質の向上と患者さんへの価値提供に貢献しています。
- ※1ICSH:International Council for Standardization in Haematology
- ※2CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute

従業員へのトレーニング
品質に関する教育に注力
シスメックスでは、患者さんや医療従事者に安全で信頼性の高い製品・サービスを提供するため、品質方針に関する教育に加え、関連部門を対象とした品質マネジメントに関する定期的な教育や、特定の部門・職種を対象とした法規制に関する専門的な教育を実施しています。
2025年度は、国内グループ会社の開発、製造、販売・サービス部門およびISO認証取得事業所全従業員約3,000名を対象に、品質に関する教育を行いました。海外グループ会社においても、すべての最終製品の生産拠点とISO認証取得事業所において品質に関する教育を実施しています。これらの取り組みを通じて、品質意識の向上と法規制遵守の徹底を図り、グループ全体で品質文化の醸成を推進しています。
品質・安全性に関する情報管理
お客様からの情報をグループ内で共有
シスメックスは、製品の品質と安全性に関する情報を管理する品質保証部門を設置しています。医療機関や販売代理店などから寄せられる情報を調査・分析し、設計・製造・品質保証などの関係部門で共有することで、品質改善や再発防止につなげています。さらに、得られた知見を新製品の開発や既存製品の改良に活用し、より安全で信頼性の高い製品・サービスの提供を目指しています。

ウェブサイトで回収・改修の情報を開示
シスメックス株式会社では、製品の回収・改修などに関する情報を、当社ウェブサイト内「製品に関する重要なお知らせ」で開示しています。お客様や医療機関への迅速かつ透明性の高い情報提供を通じて、製品の安全確保と信頼性の維持・向上に取り組んでいます。
模倣試薬流通への対応
シスメックスは、正確な検査結果を保証するために、医療機関のお客様には純正の機器と試薬のセットでご使用いただくようお願いしています。近年、一部の地域において、シスメックス製試薬の名称や容器形状を模倣した試薬の流通が確認されています。これらの模倣試薬は、検査結果の信頼性を損なうおそれがあり、適切な診断や治療の妨げとなる可能性があります。このため、模倣試薬の市場流通状況を継続的に監視するとともに、模倣試薬が確認された場合には、知的財産権に基づき、現地の行政機関や司法機関と連携し、迅速かつ徹底的な対応を実施しています。
お客様満足度の向上
お客様満足度調査で高評価獲得
シスメックスでは、さまざまな国や地域でお客様の満足度調査を実施しています。より良いカスタマーケアを提供するため、展開している製品・サービスの特性に応じて、それぞれの国や地域で独自の評価指標を設定しています。
シスメックス アメリカは、医療用画像処理および臨床診断機器市場の調査を行うIMV社が主催する「2025 ServiceTrakTM Clinical Laboratory Award」のヘマトロジー装置メーカー部門において、お客様満足度・サービス全般・システムパフォーマンスの 3 部門すべてで8 年連続受賞を達成しています。加えて、システム信頼性評価では、26年連続でNo.1を獲得するとともに、お客様からの厚い信頼が反映される再購入意向、NPS(顧客ロイヤルティ指数)の調査項目においても業界をリードする高い評価を受けています。
さらに、シスメックス 上海は、2025年中国医療業界データ調査において、市場シェア・総合顧客満足度・再購入意向・NPS・トレーニングシステム満足度の5項目すべてで最高評価となり、最優秀賞を獲得しました。
このような自社調査や第三者機関による評価を通じて、シスメックスでは、お客様にご満足いただける高品質な製品・サービスを継続的に提供できているかを定常的にモニタリングし、改善につなげています。


“検査が医療を支える”を実感できる現場 ~EMEAで広がる血液凝固検査の新たな挑戦~
EMEA地域の多様な医療課題に応えるため、私たちは装置の提供にとどまらず、導入から運用、教育まで一貫して現場に寄り添う体制へと転換してきました。
検査の統合や運用改善支援を通じて、診断の質とスピードを高め、患者さんがより早く適切な治療につながる環境を実現する――それが、私たちが届けたい価値です。

Director, Hemostasis Business Line / Sysmex Europe SE
詳細はこちらをご覧ください。
お客様の声を製品・カスタマーケアに生かす取り組み
シスメックスでは、お客様からいただいたご要望をVOC(Voice of Customer:お客様の声)チームが集約し、さまざまな角度から分析した後、関係部門へフィードバックされ、新たな製品開発や業務改善に活用されています。2025年度には、国内市場から約15,000件、またヨーロッパをはじめとする海外市場からも多数のお客様の声を収集しました。
お客様の声をもとに開発・改良した機能や装備を搭載した製品には、製品カタログにVOCマークを表示しています。シスメックスでは、お客様の声を継続的な改善につなげることで、顧客価値の向上に取り組んでいます。

満足度の高いユーザートレーニングの提供
シスメックスでは、「CaresphereTM Academy」と呼ばれるグローバル共通のデジタルプラットフォームを活用し、機器の操作やメンテナンス、アプリケーションサポートなどに関する各種トレーニングをお客様サポートの一環として提供しています。これらのトレーニングを通じて、お客様による製品の適正使用と検査品質の向上を支援し、より安全で信頼性の高い医療の実現に貢献しています。近年では、ブラジルとトルコにトレーニングセンターを開設し、ローカルニーズに対応した高水準な対面トレーニングを通じて、カスタマーケアの充実と強化を図っています。
さらに、世界各地域でオンライン受講が可能な環境の整備・拡充も進めています。お客様が任意のタイミングで、いつでもどこでもスキルを習得できるeラーニングに加え、本格的なオンラインスタジオを活用したライブ感あふれるバーチャルトレーニングを提供しています。これにより、トレーニングセンターから離れた地域であっても、標準化された高品質な製品トレーニングを受講できる体制を整えています。


最新デジタル技術と情報資産を活用したカスタマーケア活動の進化
シスメックスは、検査機器をネットワークに接続し、その状態をリモート監視することで予防保守につなげるネットワークソリューションを業界に先駆けて導入してきました。現在では、世界190以上の国や地域で提供している製品から収集される装置の故障状況やサービス対応状況などのデータを、グローバルのエキスパートチームが定期的にモニタリングし、品質向上やサービス改善プロセスの迅速化、装置故障率の低減などにつなげています。
また、世界中のどの地域からであっても、お客様の課題やお問い合わせをタイムリーに本社へ共有し、迅速に解決できる仕組みとして、市場サポートにおけるエスカレーションシステムを整備。カスタマーケアの品質と対応スピードを継続的に維持・向上するために活用しています。さらに、AIモデルによる装置状態判定と装置ログデータの可視化を通じて、カスタマーケア活動全般を支援するWebアプリケーションの開発も推進しています。
こうした取り組みにより、集積されたデジタル情報資産をAIなどの最新技術と組み合わせることで、よりプロアクティブなサービスモデルの進化を進めています。

グローバルでのナレッジ集約・共有によるカスタマーケア機能の強化
世界各地のカスタマーケア活動を通じて蓄積された知識・経験・スキル・ノウハウを集約し、グループ全体で共有・活用するためのシステムを構築・運用しています。
カスタマーケアの現場で得られたナレッジは、人や地域、経験の違いに依存しない高品質・高効率なお客様サポートの提供に活用しています。また、製品情報や問い合わせ対応事例、学術文献などの各種資料を一元的に集約・共有することで、アプリケーションサポート担当者の学術知識の向上を図るとともに、より効率的なお客様サポートの提供につなげています。
お客様の利便性向上を支えるデジタルサポート
シスメックス株式会社では、当社ウェブサイト「サポートインフォメーション」を通じて、日本地域のお客様に向けた各種サポート情報を提供しています。製品の利用に関するFAQを掲載することで、お客様の疑問や課題の迅速な解決を支援しています。
また、Webからのお問い合わせ履歴などを確認できるマイページ機能を提供し、お客様が必要な情報へ容易にアクセスできる環境を整えています。お客様の利便性向上と円滑な製品利用を支援するため、継続的な機能拡充に取り組んでいます。
お問い合わせに、迅速・確実にお応えするために
シスメックスでは、各地域にカスタマーサポートセンターを設け、お問い合わせに迅速かつ確実に対応できる体制を整えるとともに、お客様のご要望にいち早く応える仕組みの構築に努めています。
日本では、お客様相談窓口「カスタマーサポートセンター」を設置し、豊富な知識を持った専任スタッフが、24時間365日体制でお問い合わせに対応しています(利用には別途契約が必要)。同センターでは、過去のお問い合わせ内容やメンテナンス履歴などの情報を蓄積・活用することで、的確な対応につなげています。さらに、ネットワークを介して装置から送信されるデータを活用し、装置の状態をリアルタイムに把握することで、より正確で迅速なお問い合わせ対応を実現しています。これらの取り組みを通じて、お客様の業務継続と安定した検査運用を支援しています。
カスタマーサポートセンター お問い合わせ内容その他 12.1%
不良品などに関する苦情 0.1%
データに関するお問い合わせ 2.7%
操作方法に関するお問い合わせ 3.0%
精度管理に関するお問い合わせ 2.3%
商品に関するお問い合わせ 9.2%
修理・メンテナンスのご依頼 70.5%
2025年度 受付合計 79,857件
学術活動
シスメックスでは、世界のさまざまな国と地域で最新の臨床検査情報を提供する学術セミナーを開催しています。また、アジアにおいては、各国の保健省などの国家機関や主要学会と連携し、臨床検査の品質向上を支援するための学術活動を展開しています。
医療従事者向けの学術セミナーを開催

シスメックスでは、医学研究における幅広い領域からテーマを取り上げ、その最新情報と研究から得られた知見を共有する場として、1978年より毎年「シスメックス学術セミナー」を開催しています。2025年は、「正常組織における体細胞モザイクの新展開」をテーマに、オンサイトとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催しました。神戸会場での講演に加え、国内外へのWeb配信を行い、英語のほか、中国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語での同時通訳を実施しました。これにより、世界21カ国の方にご参加いただきました。また、セミナー開催後には講演動画をオンデマンドで世界配信しました。国ごとに設定した参加者アンケートを通じて、地域によって異なる医療課題や関心領域を把握し、今後のセミナーテーマ設定や当社の取り組みに生かしています。
そのほかにも、世界各地域で多数のセミナーを開催し、幅広い層の方にご参加いただいています。これらの取り組みを継続することで、医療従事者との信頼関係を構築するとともに、グローバルに医療の質の向上に貢献していきます。
エビデンス創出と情報発信を通じた診断価値の社会実装
検査データが医療現場で適切に活用されるためには、その臨床的有用性を示すエビデンスが蓄積され、医療従事者に広く理解されることが重要です。シスメックスでは、研究機関や医療従事者との連携による学術論文の発信や、診断・治療判断の一助となるエビデンス創出・情報提供を通じて、検査データの有用性に関する理解促進と認知向上に取り組んでいます。これにより、検査データの適切な活用を支援し、疾患の早期発見や早期治療開始など、医療の質向上に貢献していきます。
一般の方、患者さん向けの活動

シスメックスでは、一般の方や患者さんに医療や検査に対する理解を深めていただくために、学術情報サイト「Medical meets Technology」を公開し、医療におけるさまざまな技術の役割について、学術的観点から分かりやすく情報をまとめて発信しています。
また、がんゲノムプロファイリング用の検査システム NCC オンコパネルの製品情報について、従来は医療従事者向けにのみ公開していましたが、インフォームドコンセントの観点から、新たに患者さんおよびご家族向けに分かりやすく解説した資料を作成し、公開しています。薬剤耐性(AMR)に関する課題については、啓発活動「#AMRfighter」をグローバルに展開するとともに、学術冊子「抗菌薬との正しいつき合い方」を広く提供するなど、一般の方、患者さん向けのさまざまな取り組みを行っています。