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「薬剤耐性(AMR)」ってなんだろう?

~世界的な脅威に取り組み、持続可能な社会を目指す~

現代の医学や医療において、欠かすことのできない薬剤の一つである「抗菌薬」。しかし、抗菌薬の消費拡大に伴い発生する「薬剤耐性(AMR)」が世界中で大きな問題となっています。これに対し、シスメックスはヘルスケアに携わる企業として、AMR対策の重要性を認識し、持続可能な社会の実現に向けて、検査・診断価値の創出や学術的な啓発活動などを展開しています。その一環として、より多くの人々にAMRに関する正しい知識を持っていただくための情報発信にも取り組んでいます。

「薬剤耐性」の原因は身近なところに

薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)とは、一般的に抗生物質や抗生剤と呼ばれる「抗菌薬」の不適切な使用などにより、抗菌薬が効きにくくなる、または効かなくなることです。不適切な使用とは、医師や薬剤師から「1日2回服用」と指示されたのに対し自己判断で1日1回に減らす、症状が良くなったからと5日分の抗菌薬を1日でやめるなど、適切な服用期間や量を守らないこと。これにより抗菌薬を服用しても体内の細菌を十分に死滅させることができず、生き残った細菌は、薬剤耐性を持つ「薬剤耐性菌」となることがあります。

体の中で薬剤耐性菌が増殖すると、抗菌薬が効きづらくなり、本来軽症で回復できるはずの感染症の治療が難しくなり重症化しやすくなる、さらには死亡に至る可能性があります。AMRは決して人ごとではない、誰にでも起こり得る身近な問題といえます。

世界全体で取り組むべき社会課題

AMRが原因で亡くなった人の数は、2013年に世界で少なくとも70万人に上り、何も対策を講じない場合、2050年には1,000万人に増えると予想※1されています。また、AMRによって引き起こされる感染症の治療には長期にわたる入院や高額な薬剤が必要とされ、その経済的負担は非常に重いものとなります。

このほか、体内に薬剤耐性菌を持っているものの感染症を発症していない人が、知らぬ間に多くの人と接触することで感染が広がり、薬剤耐性菌が世に広くまん延してしまう「サイレント・パンデミック」という事態も危惧されています。こうした現状を踏まえ、世界保健機関(WHO)をはじめとするさまざまな団体はAMRを世界中で取り組むべき社会的課題と位置づけ、抗菌薬の適正使用や感染予防につながる啓発活動を積極的に行っています。世界的な脅威であるAMRに取り組むことは、持続可能な社会の実現に向けたSDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながります。
 
  • 1 出典:アクションプラン. https://amr.ncgm.go.jp/medics/2-4.html (参照 2021-05-26)



 

迅速な検査が抗菌薬の適正使用につながる

抗菌薬は、感染症の治療や予防を目的としてさまざまな場面で使用されています。しかし一方で、抗菌薬が不要なケースでの処方や原因菌に効果のない抗菌薬の処方など、不適切な処方が行われているという現実があります。2019年には、米国において抗菌薬使用の実に43%が不適切であったとの報告があり※2、抗菌薬の適正使用がより一層強く求められています。


抗菌薬の適正使用のために必要なのが、医療現場での迅速なスクリーニング検査です。患者さんが感染している細菌の種類や薬剤耐性の有無を調べることで、効果的な抗菌薬の投与が可能となります。また、ウイルスによる感染症には抗菌薬が効かないため、患者さんの症状がウイルスによるものか、細菌によるものなのかを見極めることも必要です。

  • 2 出典:Ray MJ, Tallman GB, et al. Antibiotic prescribing without documented indication in ambulatory care clinics: national cross-sectional study. BMJ. 2019 Dec 11;367.



 

  

例えば、感染症の一つである尿路感染症は、膀胱内で細菌が繁殖することで起きる疾患です。約60%の女性が生涯のうちに一度はかかる※3という罹患者数の多いこの疾患においてもAMRが問題となっています。尿路感染症は発熱などの症状に基づいて投薬が行われているケースが多く、細菌が尿中に存在していないにもかかわらず抗菌薬が投与されることがあると報告されています。

シスメックスは、尿検査装置で尿路感染症の診断をサポートしています。この装置は、約1分という短い時間で、尿中に出現する細菌や白血球などの成分を検出することができます。また、同時に細菌の性質に関する参考情報も提示し、不要な抗菌薬投与の抑制など、適正な治療をいち早く導くことにつながります。

さらに、尿検査によって効果のある抗菌薬を迅速に判断できれば、適切な抗菌薬選択が可能となります。シスメックスは、治療薬の選択にも役立てられる新しい迅速検査技術の確立、および製品開発をパートナー企業と進めています。

  • 3 出典:Urinary Tract Infections in Adults. https://www.urologyhealth.org/urology-a-z/u/urinary-tract-infections-in-adults (参照 2021-10-01)
 

人々の健康と明るい未来のために

AMRに対するシスメックスの取り組みは、製品の提供・普及だけにとどまりません。臨床検査に携わるメーカーの責務として、そして「すべての⼈に健康と福祉を(目標3)」を中心としたSDGs達成への貢献に向けて、シスメックスはAMRに関する啓発活動「#AMRfighter」をグローバルに展開したり、学術冊子を広く提供したりと、さまざまな取り組みに注力しています。

AMRの発生・拡大を防ぎ、世界中の人々が健やかな毎日を過ごせるために。シスメックスは、これからもAMRへの取り組みを継続していきます。

「#AMRfighter」の啓発動画(英語のみ)

 


<AMRを発生させないために>
 
AMRの発生・拡大を防ぐために、私たちはどんなことに注意をすればよいのでしょうか。
日頃から取り組んでいただける6つの対策をご紹介します。
 
AMRについて皆さんに理解を深めていただくため、シスメックスでは学術冊子を提供しています。世界におけるAMRの拡大状況や、日頃からできるAMR対策、AMRに関する検査の重要性などをより詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。

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