アルツハイマー病とAPOE遺伝学的検査
~抗アミロイドβ抗体薬による
治療を検討される方へ~
監修:池内 健(新潟大学脳研究所 教授)
はじめに
こちらのページは、アルツハイマー病に伴う軽度認知障害/軽度認知症と診断され、抗アミロイドβ抗体薬を用いた治療を検討されている方で、副作用リスクの把握を目的として、APOE遺伝学的検査の実施を検討されている患者さんおよびご家族の皆様に向けた内容です。
APOE遺伝学的検査の結果は、このような治療を検討・実施する際に、副作用に関連する体質的な傾向を理解し、治療方針を考える際の参考情報として用いられることがあります。
本ページの情報は、検査についての理解を補助するための一般的な内容であり、診断や治療の判断に代わるものではありません。
また、本検査は、認知症の診断を目的として行うものではありません。
アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)について
アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)とは

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプの病気です。
アルツハイマー型認知症では、脳に“アミロイドβ”や“タウ”という物質がたまり、脳の細胞の機能が障がいされることで認知機能の低下が起きると考えられています。
これは加齢とともに起こりやすく、今のところ完全に防ぐことは難しい病気です。
アルツハイマー病の診断方法は?
医療機関では、
- 問診・記憶の検査
- 血液検査
- MRIやCT検査(脳の状態を見る検査)
- 必要に応じて脳脊髄液検査やPET検査
などを組み合わせて診断しています。
アルツハイマー病は治るのか?
残念ながら、現在の医学では完治させることは難しい病気です。
ただし、進行をゆるやかにする薬(抗アミロイドβ抗体薬)や症状を和らげる薬、運動・脳トレなどのリハビリなどにより、日常生活機能をできるだけ長く維持できるように助けることができます。
抗アミロイドβ抗体薬の登場

アルツハイマー病の原因のひとつとされるアミロイドβというたんぱく質が脳にたまることを標的にした、新しいタイプの治療薬です。
この薬は、脳にたまったアミロイドβを取り除くことで、病気の進行そのものを遅らせる効果が期待できます。
日本では抗アミロイドβ抗体薬が保険適応となり、実臨床で使用されています。
ただしこの抗アミロイドβ抗体薬は、だれでもすぐに受けられる薬ではなく、次のような検査をして適応があるかを判断する必要があります。
- 【必要な主な検査】
-
- MMSE / CDR(認知機能検査)
- MRI(脳の萎縮や小さな出血の有無を確認)
- アミロイドPETまたは脳脊髄液検査(脳にアミロイドβが溜まっているか確認)
注意すべきことの1つとして、抗アミロイドβ抗体薬を使用した際に稀にアミロイド関連画像異常(ARIA: アリア)と呼ばれる脳の腫れ(浮腫)や小さな出血といった副作用が起きることが知られています。
この副作用の起こりやすさにはAPOE遺伝子が関与していることが分かっています。
APOE遺伝学的検査について
抗アミロイドβ抗体薬の副作用リスク予測のためのAPOE遺伝学的検査
抗アミロイドβ抗体薬を使用する際には、
効果だけでなく、副作用の起こりやすさについても理解することが重要とされています。
APOE遺伝学的検査は、こうした治療薬を検討・使用する場面で、
副作用に関連する体質的な傾向を理解し、治療方針を主治医とともに決定するための参考情報として用いられることがあります。
- ※本検査は、認知症の診断を行うものではありません。
APOE遺伝学的検査の位置づけ
軽度認知障害(MCI)
もしくは
軽度認知症と診断される
MRI
神経心理検査
アミロイドPET/脳脊髄液検査
副作用リスクの確認
※ ご本人の希望により受けない事も可能
APOE遺伝学的検査の結果と副作用リスクを踏まえて、抗アミロイドβ抗体薬の投与を検討
APOE遺伝子と副作用の関係
APOE遺伝子は、誰もがもっている遺伝子で、人によって型が異なります。
主に「ε2」「ε3」「ε4」という3つの型があり、父と母からそれぞれ1つずつAPOE遺伝子を受け継ぐため、2つの型の組み合わせ(例:ε3/ε3、ε3/ε4など)を持ちます。
これらの組み合わせによって抗アミロイドβ薬の副作用のリスクが変わることがわかっており、
特に「ε4」を持つ方は、副作用が起こりやすい傾向があることが報告されているため、治療を慎重に進める必要があります。

【抗アミロイドβ抗体薬の副作用のリスク】
APOE遺伝学的検査とは
APOE遺伝子の型(ε2・ε3・ε4)を調べる検査です。
この検査をすることで抗アミロイドβ薬による治療に伴う副作用(浮腫や出血など)が起こりやすいかどうかを事前に推定することができます。
APOE検査の流れ
医師から説明を受けます
不明な点や不安がある場合は、遠慮せず相談しましょう。

同意後、採血を行います
内容を十分に理解した上で、検査をうける場合は同意書にサインをします。

検査機関で解析します
採取した血液検体を国内の検査機関で解析します。

結果は医師から伝えられます
検査結果を受けて、治療方針について主治医と相談します。

検査結果について不安を感じた場合
遺伝学的検査の結果は、人によって不安を感じることがあります。
そのような場合は主治医や臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーなど、専門家に相談することが推奨されています。
APOE遺伝子は、アルツハイマー病の発症リスクにも関係していることが知られています。
本サイトで紹介している検査は、抗アミロイドβ抗体薬の副作用リスクに関する情報を得ることを目的としており、アルツハイマー病の発症リスクを評価するための検査ではありません。
安心して検査を受けていただくために検査についてわからないことや不安に思うことがあれば遠慮なく主治医の先生にご相談ください。
参考文献
小冊子:抗アミロイドβ抗体薬副作用リスク予測のためのAPOE遺伝学的検査を受ける方とそのご家族へ(非売品)
監修:池内 健(新潟大学脳研究所 教授)