レジリエントなサプライチェーン構築による安定供給の維持

サプライチェーンマネジメント

サプライチェーンマネジメントに関する各種ポリシー

シスメックスのサステナブル調達の考え方

医療の安定供給を支えるサプライチェーンには、地政学リスク、市況変動、技術革新の加速など、外部環境の急激な変化を前提としたマネジメントが求められています。加えて、原材料調達や製造プロセスにおける人権・環境への配慮の不足は、供給停止、コスト増、レピュテーション毀損など、企業経営に影響を及ぼす重要なリスクとなり得ます。
シスメックスは、医療に不可欠な製品・サービスを提供する企業として、こうした外部環境の不確実性や人権・環境・コンプライアンスなどの社会要請を経営リスクとして捉え、先を見据えた対応を行うことで、製品・サービスの安定供給と持続的な価値創出の両立を目指しています。その中核に位置付けているのが、サステナブル調達の推進です。

サステナブル調達体制

シスメックスは、「レジリエントなサプライチェーン構築による安定供給の維持」をマテリアリティとして特定し、サプライチェーン全体のリスク管理を推進しています。生産・SCM担当執行役員を責任者とし、全社的な管理体制のもとで取り組んでいます。
具体的には、サプライヤー評価や是正計画の立案・フォローを通じて、供給リスクに加え、人権・環境・コンプライアンスに関するESGリスクの把握・管理を実施しています。また、サプライヤーとの継続的な対話と協働を通じて課題の共有を図り、改善に向けた支援を行うことで、リスクの低減とサプライチェーン全体の強靭化を推進しています。さらに、調達活動全体の可視化と継続的な改善を進め、サプライヤーとの信頼関係を基盤とした責任ある調達を実践し、製品・サービスの信頼性向上および持続的な成長につなげています。

事例:先読みと自律的判断に基づくプロアクティブ調達

サプライチェーンマネジメント高度化の一例として、生成AI需要拡大を背景とした半導体需給変動への対応があります。
当社は、コロナ禍における半導体供給混乱を踏まえ、サプライヤーからの情報提供を起点とする調達から、市況を自ら把握し判断する調達へと転換しました。半導体メーカーとの直接的なコンタクトを開始するとともに、市況データの収集・分析を通じて、需給逼迫の兆候を早期に捉え、リスクが顕在化する前に対応できる体制を整備しています。
その結果、生成AI需要の急増により供給逼迫が懸念されたメモリー半導体について、調達困難になる前に十分な在庫を確保し、製品の安定供給を維持しました。また、電子部品メーカーとの協議を重ね、BCP在庫の確保と供給体制の強化について合意を進めるなど、製品の安定供給とサプライチェーンのレジリエンス向上につなげています。

重要サプライヤーの特定と新規サプライヤー選定

シスメックスでは、サステナブル調達の重要性を踏まえ、机上調査(デスクトップ調査)により、調達上の重要性およびESGリスクを考慮し、重要なサプライヤーを特定しています。調査では、調達金額や代替の困難さに加え、地政学、生産国、医療品生産における原材料確保に関する競合リスク、さらに人権・労働、化学物質、GHG排出、贈収賄や腐敗などのESGリスクを総合的に評価しています。
新規にサプライヤーを選定する際には、ESG基準を含むCSR調査を実施し、サプライヤーの取り組み状況を確認しています。ESGに問題がある場合には取引を行わない方針としており、必要に応じて経営者との対話も実施しています。こうした取り組みは海外のサプライヤーについても同様であり、特に児童労働や職場環境については調達担当者が現地を訪れて状況を確認し、問題がないかを確認しています。

  • 各リスクへの対応実績

    地政学的リスク:ウクライナ紛争発生時は欧州生産品、北朝鮮リスク上昇時は韓国・中国北部生産品で調達先の分散化を実施。
    生産国のリスク:診断薬容器・ディスポーザルで複数国からの調達体制を構築。
    セクター固有のリスク(原材料確保の競合リスク):ガラス瓶、ゴム栓、生化学用緩衝剤、PCR 用原料、培養用資材で代替調達先の確保を実施。

既存サプライヤーへのCSR調査と二次サプライヤー調査

シスメックスでは、既存の原材料一次サプライヤーに対して、毎年CSR調査を実施し、サステナビリティに関する取り組み状況を継続的にモニタリングするとともにフィードバックを行い、改善を要求しています。CSR 調査には、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのセルフ・アセスメント・ツールを使用し、人権、労働安全衛生を含む労働慣行、腐敗、環境などの項目を確認しています。また、2021年からは一次サプライヤーの協力のもと、二次サプライヤーへの調査も開始し、サプライチェーン全体でのリスク把握を進めています。
グループ各社においてもサプライヤー調査を定期的に実施しています。シスメックス ヨーロッパやシスメックス アメリカでは、すべての新規サプライヤーに対して人権・グリーン調達などのサステナビリティに関する調査を行っているほか、済南シスメックスでは、環境や安全衛生調査に加え、四半期ごとにサプライヤーとのミーティングを開催しリスク評価を行っています。シスメックス 無錫においては、サプライヤーに定期的なリスクアセスメントを行う中で、環境・安全性の管理強化を促しています。

CSR調査の結果

2025年度に実施したすべての原材料一次サプライヤーへのCSR調査は、回答率が95%と昨年度に引き続き高い回答率を維持しています。また、前年度に実施したCSR調査結果を分析し調査対象サプライヤーにフィードバックしています。同じ原材料カテゴリーのサプライヤーの平均得点を開示するなど、自社の強みや弱みを確認していただき、リスクが存在する項目に対しては、是正を促すとともに、改善に向けた対話や支援を行い、サプライヤーとともに改善活動を推進しています。

CSR実地確認監査と是正・改善の推進

シスメックスでは、サプライヤーのリスク管理をさらに強化するため、2022年度から2025年度にかけて、CSR調査の得点率が低い一次サプライヤー17社に実地確認監査を実施しました。リスクが特定された場合には、改善要望を行い改善計画の提出をお願いしております。また、一次サプライヤーと協力して、二次サプライヤー向けのCSR調査も実施しています。(2023~2025年度の3年間の累計209社)
CSR調査を行うにあたり、当社は調査フォーマット(GCNJ共通版CSR調査票)や集計サービス、フィードバックなどを一次サプライヤーに提供し、一次サプライヤーの負担を軽減しながらCSR調査を実施できるよう配慮しています。

紛争鉱物への取り組み

シスメックスでは、紛争鉱物(金や、スズ、タンタル、タングステン)を含有する原材料メーカーに対し、紛争鉱物調査を実施し、サプライチェーンにおけるリスク把握に取り組んでいます。紛争鉱物については、SCM部門が主管し、サプライヤーへの調査やリスク評価を通じて、責任ある鉱物調達の推進および関連リスクの管理を行っています。

調達部品・原材料の品質確保

シスメックスでは、品質に関する要求事項を明確にした品質保証協定書を提示し、当社の調達方針についてご理解いただいたうえでサプライヤーとの契約を締結しています。また、納入品の品質確認やサプライヤー監査を定期的に実施し、品質管理が適切に運用されているかどうかを確認しています。

サプライヤーエンゲージメントと能力向上の取り組み

シスメックスでは、当社の事業の方向性や調達方針をご理解いただいたうえで取引ができるよう、毎年サプライヤー向けに説明会を継続実施し、関係強化を図るとともにサステナビリティ活動を推進しております。
2023年度は、新たに策定した長期経営戦略、サプライチェーンマネジメント方針やエコソーシャル戦略を説明する場として調達方針説明会を開催し、約250社、500名と多くのサプライヤーに参加いただきました。2024年度は、SBT取り組み説明会、温室効果ガス排出量算定の重要性と実践についての勉強会を開催し、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に向けて活動しています。2025年度は、温室効果ガス排出量算定方法の説明会を実施し、51社のサプライヤーから一次データを取得しました。サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を可視化し、削減に向けた取り組みを推進しております。
海外グループ会社においても、サプライヤーや販売代理店との定期的な対話を通じて、品質・環境・コンプライアンスに関する課題を共有し、改善に向けた取り組みを進めています。これらの活動を通じて、サプライチェーン全体の持続可能性と安定供給の維持・向上に取り組んでいます。

責任ある調達・物流の推進

シスメックスは、サプライヤーとの公正・適正な取引を推進するとともに、調達・物流に関わる法令遵守と、サプライチェーン上の労働環境への配慮に取り組んでいます。

適正取引と調達関連法規制の遵守

シスメックスでは、取引プロセスの透明性向上を目的として電子調達システムを活用し、適正な取引の推進に取り組んでいます。2020年10月にはパートナーシップ構築宣言を行い、サプライチェーン全体での付加価値向上に努めています。
また、下請法および受託中小企業振興法に基づく振興基準などの関連法令・指針を遵守し、発注者と受注者の間における望ましい取引慣行の徹底を図っています。合わせて、サプライヤーとのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に取り組んでいます。

調達に関わる従業員への教育

シスメックスでは、調達に関わる従業員の法令遵守および適正取引に関する理解向上に取り組んでいます。
2025年度には、改定された下請関連法規に関する教育を、国内グループ会社の調達部門の関係者や各部門の適正取引責任者および担当者に実施しています。
また、調達部門の関係者へはパートナーシップ構築宣言、CSR活動における発注側の役割に関する教育、新規配属者に対しては、調達方針、CSR調達、調達リスクに関する教育を実施し、適切な調達活動を推進するための知識・意識の向上を図っています。さらに、調達活動がESG要件の遵守を阻害するものとなっていないか定期的な社内レビューを実施し、その結果を踏まえた業務改善や関係者への教育を行うことで、持続可能で責任ある調達活動の推進に努めています。

物流における労働時間適正化と労働環境への配慮

シスメックスでは、2024年4月1日適用の運送・物流業務に対する「働き方改革関連法」の施行後、常温試薬と消耗品の出荷をこれまでの当日受注・当日出荷を中止し、当日受注・翌日出荷に変更しました。これにより、トラックドライバーの過重労働につながる荷待ち時間を削減しております。
また、重量物の荷役作業を機械化し、倉庫内従事者の労働環境改善や、人権尊重に関するアンケート調査の実施など、いわゆる物流2024年問題に積極的に取り組んでいます。
さらに、2026年1月1日に施行された下請関連法規の改正(適用範囲の拡大)を踏まえ、運送事業者を含む取引においても、発注内容の明示や支払期日の設定などを徹底しています。これらの取り組みを通じて、物流における持続可能な労働環境の実現と安定供給の維持に取り組んでいます。

  • 常温試薬、消耗品以外の保冷試薬や機器などの商品は、以前より当日受注・翌日出荷を行っています。