シスメックスの技術

細胞測定技術

血液中の細胞の数、種類の分析や、細胞内の情報の分析を可能とする技術に取り組んでいます。

シスメックスの細胞測定技術:フローサイトメトリー技術(FCM技術)

血球計測においては検出する血液細胞種に応じて専用試薬(溶血剤及び染色液)を有しています。溶血剤には界面活性剤が含まれており、反応チャンバで末梢血サンプルと混合されます。
界面活性剤の作用によって、赤血球は溶血し、白血球の細胞膜透過性が上がります。各白血球は、それぞれの細胞の特性に応じて、細胞の外形や内部構造が変化し、形態的に差異が生じます。さらに、専用の染色液により血液細胞内に含まれる核酸や細胞内小器官を特異的に蛍光染色します。核酸および細胞内小器官の種類や多寡により、血液細胞の蛍光に差が生じます。
検出された蛍光と散乱光に基づいてスキャッタグラムを作成し、解析アルゴリズムにより血液細胞種を特定することで、目的とする細胞を精度よく検出することが可能になっています。

■測定原理および、スキャッタグラムイメージ(XN WDFチャンネル)

半導体レーザー光による細胞の解析

現在取り組んでいる細胞測定技術

●MI(分子イメージング)-FCM

シスメックスのコアテクノロジーである「FCM技術(フローサイトメトリー技術)」による細胞群の計測・分析を発展させ、個々の細胞の状態に着目した診断技術を開発し、リキッドバイオプシーによる個別化医療を実現することを目的としています。
従来のFCM技術は、検体中の細胞数を大量・高速・精密に計測できますが、ひとつひとつの細胞が持つ詳細な特徴や機能の測定は困難でした。
しかし、フロー中の細胞画像を特殊なカメラで高精細に撮像する技術とその画像を自動分析する技術をFCM技術と組み合わせることで、細胞内のタンパク質の局在や染色体異常を検出し、血中に存在するCTC(血中循環がん細胞)などの希少な機能異常細胞の検出が可能になります。
シスメックスはメルク社とイメージングFCM技術に関するライセンス契約を締結し、その技術を当社技術と融合させることにより、臨床応用が可能な分子イメージングFCMを開発しています。

●フローFISH

MI(分子イメージング)-FCM開発の1stステップとして、2015年度よりイメージングFCM技術を活用したFISH(Fluorescence In Situ Hybridization)検査の自動化システムの共同開発を推進しています。
FISH検査は、がんの診断などに用いられる染色体の検査方法であり、光学顕微鏡を用いて目視で細胞中の正常・異常遺伝子を検出するため、多大な労力が必要な上に、検査対象となる細胞数が限定的だという課題があります。
共同開発中の製品は、自動化による検査プロセスの効率化や標準化に加え、FCMによる計測細胞数の増加によって高精度な検査を実現することに寄与します。まずは、白血病検査アプリケーションから適用を開始する予定です。
  • イメージングFCM技術
    イメージングFCMは、大量の細胞を処理できるFCMと、細胞形態・蛍光画像の高速撮像およびそれら画像を自動分析する能力を兼ね備えたメルク社独自の技術。

■フローFISHの解説動画