社会
シスメックスは、世界中に高品質な製品をお届けすることで、正確な検査結果と確かな安心を提供し、医療を支えるという社会的使命のもと、製品・サービスの安定供給に取り組んでいます。「サプライチェーンマネジメントの強化」をマテリアリティの一つとして特定し、サプライヤー評価や是正計画の立案をはじめとしたサプライチェーン全体のリスク管理について、上席執行役員 金川晃久が責任者となり、サステナブル調達を推進しています。また、サステナビリティ目標としてCSR 調査回答率、サプライヤートレーニング件数等を設定し、半期ごとに取締役会に取り組み状況を報告しています。
シスメックスでは、サステナブル調達の重要性を踏まえ、サプライヤーリスクに関するデスクトップ調査を通じて重要なサプライヤーを特定しています。特定された重要サプライヤーに対しては、毎年CSR調査を実施し、サステナビリティに関する取り組み状況をモニタリングしています。
デスクトップ調査では、調達金額や代替の困難さに加え、地政学的リスク、生産国のリスク、医療品生産における原材料確保の競合リスク※、そしてCSRや環境リスク(人権・労働、製品に含まれる化学物質の管理、GHG排出対応)などを考慮しています。特に高リスク材料を早期に把握することで、2020年から2023年のコロナ禍やウクライナ紛争時にも大きな供給問題を避け、診断薬を安定的にお客様に提供することができました。
CSR調査では、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが開発したCSR調達セルフ・アセスメント・ツールを使用し、調査項目は人権、従業員の労働安全衛生を含む労働慣行、腐敗、環境など多岐にわたる調査を実施しています。新規取引においては、CSRの取り組みに問題がある場合は取引を実施しないことを定めており、CSR 調査に加えて経営者との面談も行います。こうした取り組みは海外の取引先についても同様であり、特に児童労働や職場環境については調達担当者が現地を訪れて状況を確認し、問題がないかを確認しています。また、年次取引先評価においてCSR評価結果をバイヤーと確認し、部品採用の際にはCSR評価においてリスクの小さい取引先を選定するよう努めています。取引先へのCSR調査は2013年以降継続して実施しており、2021年から二次取引先へのCSR調査も一次取引先にご協力いただき開始しています。
グループ各社においても取引先調査を定期的に実施しています。シスメックス ヨーロッパでは、すべての新規取引先に対して人権・グリーン調達などを含むCSR調査を行っているほか、済南シスメックスでは、環境や安全衛生調査に加え、四半期ごとに取引先とのミーティングを開催しリスク評価を行っています。シスメックス 無錫においては、取引先に定期的なリスクアセスメントを行うなかで、環境・安全性の管理強化を促しています。
2023年度に実施した原材料一次サプライヤーへのCSR調査は、回答率が95%と昨年度に引き続き高い回答率を維持しています。また、前年度に実施したCSR調査結果を分析し調査対象取引先にフィードバックしています。同じ原材料カテゴリーの企業様の平均得点を開示するなど、自社の強みや弱みを確認していただき、リスクが存在する項目に対しては、是正を促すことで改善活動をともに進めています。
シスメックスでは、品質に関する要求事項を明確にした品質保証協定書を提示し、当社の調達方針についてご理解いただいたうえで取引先との契約を締結しています。また、納入品の品質確認や取引先の監査を定期的に実施し、品質管理が適切に運用されているかどうかを確認しています。
シスメックスでは、当社の事業の方向性や調達方針をご理解いただいたうえで取引ができるよう、毎年サプライヤー向けの説明会を継続するなど、取引先との関係強化に努めています。
2022年度のCSR説明会では他社のCSR取り組み事例を紹介しており、会社規模に応じた取り組みを促しています。2023年度は、新たに策定した長期経営戦略、サプライチェーンマネジメント方針やエコソーシャル戦略を説明する場として調達方針説明会を開催し、約250社、500名と多くの取引先に参加いただきました。
海外でも取引先との連携を強化するため、定期的なミーティングを開催しています。シスメックス ヨーロッパでは、定期的にすべての取引先とミーティングを行い、事業活動に関する内容に加えて、環境・社会的責任に関するコンプライアンスへの適合状況についても確認しています。シスメックス マレーシアでは、販売代理店とのミーティングを毎月開催し、顧客からの要望や課題について話し合いを行い、品質改善や顧客満足向上に向けた取り組みを行っています。
シスメックスでは、電子調達システムを活用し、不当な代金減額や返品の防止に努めています。2020年10月にはパートナーシップ構築宣言を行い、サプライチェーン全体での付加価値向上に努めています。また、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組んでいます。
これらを実現するため、国内グループ会社の調達部門の関係者向けに、パートナーシップ構築宣言、下請法、CSR活動における発注側の役割に関する教育、新規配属者に対しては、調達方針、CSR調達、調達リスクに関する教育を実施しています。
2024年4月1日適用の運送・物流業務に対する「働き方改革関連法」の施行に向け、常温試薬と消耗品の出荷をこれまでの当日受注・当日出荷を中止し、当日受注・翌日出荷に変更しました※。これにより、トラックドライバーの過重労働につながる荷待ち時間が解消されるなど、いわゆる物流2024年問題に積極的に取り組んでいます。