社会

イノベーションを通じた医療課題解決

がんゲノム医療の取り組み

 全世界におけるがん患者数は約1,810万人に上り、がんによる死亡数は約960万人と推計されています。また、今後20年間で患者数は6割増える可能性があるとされています
 シスメックスは、がん疾患の診断や治療方針の決定、治療中の効果測定、治療後のモニタリングなどに活用される検査の提供を通じて、患者さん一人ひとりのQOL向上と医療費抑制に貢献していきます。
  • WHO「WHO report on cancer」 (2020年2月発行)

がんゲノムプロファイリング検査

  近年がん治療では、確定診断に加え、薬剤の効果予測や再発モニタリングなどを目的に、遺伝子やタンパク質を用いた多くの検査が行われています。
 シスメックスと国立研究開発法人国立がん研究センターが共同で開発したがんゲノムプロファイリング検査用システムは、固形がんを解析対象とした腫瘍組織における124のがん関連遺伝子を測定し、包括的ながんゲノムプロファイルを取得することで、患者さんのがん固有の遺伝子変異を解析し、診断や抗がん剤選定などの治療方針決定に有用な情報を提供する検査として、臨床現場で用いられています。2021年2月には、検出可能な遺伝子の変異を拡大するなどの機能強化を行ったことで、適した薬剤投与の選択やそれに伴う治療成績の向上により寄与することが期待されます。
 2021年度より、サステナビリティ目標のモニタリング指標として、がんゲノムプロファイリング検査の実施件数を設定し、今後のさらなる普及を目指していきます。

OSNA法を用いたがんリンパ節転移検査

  がんの治療でのリンパ節転移検査は、術式選択などの治療方針を決定する上で重要です。通常、検査は手術で摘出したリンパ節の切片を用いて病理標本を作製し、術中または術後に病理医が顕微鏡によりがん細胞の有無を確認することで判定されますが、標本作製における作業負担が発生すること、また標本の質が作製者の技量に依存することや、病理医により標本の判定精度が異なることなどが医療現場における課題となっていました。
 シスメックスは、独自技術であるOSNA法を用いた乳がんリンパ節転移検査システムを開発し、リンパ節転移の有無を30分で判定可能にしました。検査を自動化・簡便化したことで、実施者の熟練度に依存せず、客観的な検査結果が得られるため、病理医の負担軽減と乳がん診療の標準化に貢献しています。また、短時間で検査結果が得られることで術中検査が可能となり、再手術による患者さんの負担軽減や再発リスクの低減にもつながります。
 2021年度より、サステナビリティ目標のモニタリング指標としてOSNA法を用いたがんリンパ節転移検査(乳がん)の実施件数を設定し、今後のさらなる普及を目指していきます。

  • シスメックスが開発した直接遺伝子増幅(One-Step Nucleic Acid Amplification)法。リンパ節へのがん転移の診断の補助を行う技術。

効率的な検査ワークフローを実現する 血液凝固検査

  血液凝固検査は、主に血友病などの「出血性疾患」や心筋梗塞・脳梗塞などの「血栓性疾患」の診断・治療に用いられる検査です。近年、生活習慣や高齢化に起因する血栓性疾患の増加や、出血性疾患におけるQOL向上を目的とした新しい血液製剤の開発などを背景として、これらの疾患の早期診断や適切な治療のため血液凝固検査へのニーズは多様化が進んでいます。その一方で、一般的な血液凝固検査は、免疫測定装置や血小板凝集能測定装置などの測定原理が異なる複数の装置を用いて行われるため、検査ワークフローの煩雑さや、患者さんの病態把握・診療に必要な検査結果の入手に時間を要するケースがあるなど、医療現場での課題となっています。
 シスメックスが提供する全自動血液凝固測定装置は、血液凝固項目や血小板凝集能項目に加え、CLEIA法を用いた凝固分子マーカーなど、血栓・止血領域における幅広い検査オーダーに応じて柔軟に測定することを可能とし、医療現場のニーズに応じた効率的な検査ワークフローを実現します。また、当社のネットワークソリューションCaresphereと連携することで、処理検体数や試薬等の消耗品残量、精度管理結果などの装置の稼働状態および検査室全体の稼働状況を、お客様自身がリモートで簡便に把握・分析することが可能となり、検査室における日々の業務遂行の効率化を支援します。
 
  • 化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescence Enzyme Immunoassay)

新型コロナウイルス感染症への取り組み

 シスメックスは、自社独自の測定技術やアッセイサービスに加え、グローバルに存在するネットワークを活用した新たな診断技術を医療従事者へお届けすることで、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に貢献します。

ストーリー:ステークホルダーの声

「新型コロナウイルス感染症の検査キットを開発できないだろうか」2020年1月末に日本臨床検査薬協会を通じて国からある要請が届きました。シスメックスにおけるCOVID-19への取り組みの中心人物として、複数のプロジェクトをリードしているLS(ライフサイエンス)事業本部の責任者である谷口充がプロジェクト立ち上げ当時のことを振り返ります。