社会

人材の育成 —エンプロイージャーニー—

グローバルHRポリシー

グローバルHRポリシー
 シスメックスでは、持続的な企業価値向上とエンゲージメントの高い組織をつくるうえで、従業員一人ひとりが充実したキャリアを実現できることが重要と考えています。採用から退職、セカンドキャリアまでの一連の流れを「エンプロイージャーニー」とし、多様な人材が自らのキャリアを構築し主体的かつ継続的に学ぶことを支援しています。
 キャリア自律を支援する基盤として、グループ全体でジョブ型人事制度を採用し、明確化された職務や人材要件に基づき、さまざまな施策を展開しています。これら一連の人材マネジメントは、「グローバルHRポリシー」を基本方針としています。

多様な人材の獲得

 シスメックス株式会社では、イノベーションの源泉は多様な人材であるとの考えから、さまざまな経験や価値観を持った人材の採用を行っています。「いつでも、どこでも、だれでも」をポリシーに、通年で採用活動を行うほか、国籍・人種・性別・年齢・職歴・障がいの有無を問わず、人物本位で採用を実施しています。
 職種別/ポジション別で募集を行っており、個々の専門性や希望に基づき応募できる採用形態を整えています。また、海外大学からの直接採用※1のモニタリングやジェンダー別の採用目標※2を設定し、多様な人材の獲得を積極的に推進しています。
 成長戦略を支える人材の獲得と育成は、人的資本戦略の重要テーマであり、付加価値生産性の持続的向上(2023年度実績:14,760円/時間)と総労働力コストのバランスを考慮し、人的資本への投資を進めています。

  • 1 新卒の外国籍直接採用比率:2023年度実績 13.5%
  • 2 新卒の女性採用比率:2023年度実績45.2% 2024年度目標:40%

個・組織のニーズのマッチングに基づく配置

 シスメックス株式会社では、一人ひとりの自律的なキャリア形成のために、従業員と組織のニーズのマッチングに基づき、配置を決定しています。
 新入社員の配属においては、本人と部門の希望に基づいたマッチングアルゴリズムを用いて、配属部門を決定する仕組みを採用しています。また、自律的なキャリア開発の基盤として、新たな職務にチャレンジすることができるアプレンティス制度を導入し、専門性の拡大などキャリアアップのための機会を提供しています。
 これらの施策の結果、2023年度の新卒採用者における3年間の離職率は6.5%となりました。また、自発的離職率は目標の3.0%未満に対して、2023年度は2.6%に抑えることができました。

  • 空きポジションに基づき一定のトライアル期間を設け、その職務や組織で活躍できるかを見極めたうえで、正式配属を決定する。

チャレンジを促し成果をたたえる評価・表彰

 シスメックス株式会社では、変化の激しい時代において、社内外の環境変化にアジャイルな対応を実現するために、CPM(Continuous Performance Management)の考えを取り入れた評価制度を導入しています。この制度では、期初の目標にこだわることなく、変化に応じて目標や施策を柔軟に見直し、加点的な評価を行うことで、チャレンジを促す仕組みをつくっています。組織風土や人材育成、個人の行動発揮に関する項目をはじめ、チーム業績についても評価項目として取り入れており、事業貢献と組織・個人の成長をともに実現することを目指しています。また、上司と部下の間では、年間を通じて定期的に1 on 1ミーティングを行い、目標設定や評価だけでなく、日々の業務やキャリア形成などについて話すことで、相互の信頼構築と部下の成長をサポートしています。年2回の企業風土調査では「リーダーシップへの信頼度」を測定し、リーダー育成と組織風土の改善を進めています。
 さらに、組織・グループをたたえる表彰制度「グループCEOアワード」では、毎年、グループ企業理念「Sysmex Way」を実践し、企業価値向上や社会課題の解決への貢献が認められた個人とグループを表彰しています。また、新たな長期経営戦略VA33の制定および企業理念のリファインにともない、2023年度より新たなグループ表彰制度として「チャレンジ&安心アワード」がスタートしました。「チャレンジ&安心アワード」は、5つの部門(特許・アイデア部門、Eco Social部門、販売・サービス部門、品質部門、オペレーション部門)での優れた貢献を表彰します。 
 また、研究開発者のモチベーション向上と知的財産に対する意識を高めることを目的とした「優秀特許賞」「パテントマイスター」「出願記念賞」を設けています。

個々に応じた育成プログラム

 シスメックス株式会社では、取締役 専務執行役員が管掌するコーポレートマネジメント領域に人材開発部門を設置しています。この部門では、多様な働き方や価値観を尊重し、個々のキャリアに基づいたビジネススキルやキャリアデザインを構築するための教育プログラムを多数提供しています。
 自宅からも参加が可能なオンライン講座も充実させており、国境を超えて参加できるプログラムも用意しています。2023年度の研修プログラムへの従業員参加率は100%を実現し、個々の成長に加え、スキル向上による生産性向上、受講生間の交流による相互理解の促進と部門横断ネットワーク形成などにつながっています。(2023年度の研修投資83,000円/人)
 企業風土調査では、「成長のための機会提供がある」という項目で、64%が好意的な回答をしており、育成プログラムに対して多くの従業員から支持を得ています。また、年齢や階層を問わず持続的な学びを支援しており、多様な働き方を推進するための「スマートワーク」制度では、勤務時間内の1日15分の自己学習を推奨しています。2023年度は、従業員一人当たりの平均教育時間は55.3時間となりました。

次世代リーダー育成

グローバルリーダー研修
グローバルリーダー研修

 シスメックスでは、持続的な企業価値向上のために、次世代リーダーの開発は人的資本戦略の重要なテーマと考えています。ジョブ型人事制度導入以降、ポジションに求められる役割とのギャップを測るタレントレビューを実施し、タレントプールや後継者の充足度を定期的にモニタリングしています。
 後継者候補となった人材については、個々の課題に基づいた育成計画を策定し、必要なリーダーシップ開発プログラムを提供しています。特に、後継者としてReady(準備完了)のステータスの従業員を対象とした選抜型の育成プログラムにおいては、受講を通じて、高い視点、視座で考える機会を提供し、上位ポジションへの登用を促進しています。2023年度のオンボーディング研修は延べ2,662名、選抜型研修(後継候補者)には延べ157名が参加しました。
 2023年度からは、コロナによって一時的に休止していたグローバル研修を再開し、グローバルリーダー育成に向けて地域・国境を越えた協力を進めています。

  • 新入社員をはじめ、中途採用社員など新しく組織に加わった社員の早期離職を防ぎ、企業にとって有用な人材に育成するための研修

リスキリング・キャリア転換

 シスメックスでは、新たなキャリアの可能性を広げる機会として、インプット中心の学習ではなく、実際の仕事や関連テーマの実体験を通じたリスキリングやキャリア転換をサポートしています。例えば、デジタル化に関するリスキリングとして、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に必要な知識・スキルを体系化し、それぞれのレベルに応じたプログラムを提供しています。また、本人の希望で配置転換を行う場合には、一定のトライアル期間を設け、その職務や組織で活躍できるかを見極めたうえで、正式配属を決定するアプレンティス制度を導入しています。
 さらにジョブ型の人事制度をグループ関係会社にも導入したことで、共通のグレードに基づき、部門・グループ会社間での比較が可能となるため、本人の希望地域や専門性をマッチングさせることで、キャリア探索期や確立期だけでなく、リスキリングによる学びや経験を生かしたセカンドキャリアの構築にも有効に作用しています。

デジタル人材の育成

 シスメックスではデジタル人材に関する育成プログラムとして、2023年度から従業員を対象とする「デジタル人材育成プログラム」の提供を開始しています。本プログラムは、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) が策定した「デジタルスキル標準 (DSS)」をベースに、当社向けのデジタル人材類型とレベル階層を定義し、それぞれの組み合わせに適した育成カリキュラムを提供しています。また、クロスリスキリング (「これまでに培ってきた経験や知見」×「デジタル技術や知識」) という考え方を提唱し、企業活動における従業員の活躍の場や選択肢を広げています。そして、学びの先にある実業務での課題解決や社会貢献などの具体的な成果にまでつなげることを目指しています。
 本プログラムの特徴の一つとして、「デジタルルーキー」というデジタル人材類型を設置しており、従業員が特定のデジタル人材類型に最初から縛られることなく、広くデジタルリテラシーを学び始めることができるカリキュラムを提供しています。そのうえで、従業員本人の指向やスキルに応じて専門性を生かせるデジタル人材類型を選択できるようにしています。また、デジタルリテラシーやスキルの向上を目指し、従業員同士が教え合い、助け合うことを目的としたコミュニティを開設し、学びの相互研鑽を促す仕組みも取り入れています。これらを通じて、2023年度はデジタル人材育成プログラムに延べ約2,500名が参加しました。また、人材開発の一環として、共同研究先である東京大学マーケットデザインセンター (UTMD)に従業員を派遣し、マッチング理論とマーケットデザインの研究に参加する場を提供しています。
 シスメックスは、デジタルリテラシーを学んだ従業員と高い専門性を身につけた従業員が共通言語を持ち、企業活動のさまざまな場面でデジタルトランスフォーメーション(DX)への挑戦が自然に行われる環境整備を進めています。

研究開発者向けの教育

 シスメックスでは、研究開発者を対象に「シスメックス・イノベーションフォーラム」を40年以上にわたり開催しています。先進的な研究開発活動の成果を共有し、創造性を育むことを目的にしており、毎年世界中から1,000名以上が集まります。この取り組みは技術志向である当社の技術基盤を支え、ヘルスケアの進化をデザインする新製品開発を推進しています。
 また、研究開発者向けの教育プログラムとして、自社の独自技術の継承と新たな技術の獲得を行う専門技術者教育プログラム、診断薬と検出装置のすり合わせ技術の神髄を学ぶインテグラル研修、国際標準のプロジェクトマネジメント手法を学ぶ教育プログラムなど、幅広いカリキュラムを提供し、研究開発者一人ひとりの育成に注力しています。

Sysmex EMEAキャンパス

EMEAキャンパス

 EMEA地域では、欧州、中東、アフリカ諸国の全従業員を対象に、オンライン/オフラインでさまざまな研修プログラムを提供するトレーニングスペース「EMEAキャンパス」を開設しています。EMEAキャンパスでは、一般的なビジネススキルから技術的なものまで、テーマに沿って講義やワークショップを企画し、将来のリーダー育成やスキルアップ、社内ネットワークづくりを目指します。また、管理職向けには、チームマネジメントに必要なスキルの習熟を目的としたカスタマイズ型リーダーシップ研修「Ready to lead」をはじめ、人材開発やコーチング、リバースメンタリングなど幅広いプログラムを提供し、リーダーシップ発揮に必要なスキル習得の支援に注力しています。

  • 欧州、中東、アフリカ地域

その他人材育成プログラム

会社名 プログラム名・施策名 目的・概要
シスメックス
株式会社
ものづくりプロフェッショナル 育成活動 生産改革活動の一環として、ものづくりの人材育成を推進。新人育成とともに、次世代のものづくりを指導できる人材の育成、多能工育成のための技能訓練、ものづくりに必要な専門知識教育などを実施
DX リテラシー教育 AIなどの新しい技術を生かし、データ活用方法を考える力、業務効率化・イノベーションの実行力を鍛える、DXリテラシー研修を実施
シスメックス
アメリカ
Sysmex University アメリカ、カナダ、ラテンアメリカの全従業員を対象とした、対面とオンラインを組み合わせた研修プログラム。リーダーシップスキルやプロジェクトマネジメントをはじめとしたビジネススキル、専門スキル、メンタリングなど、多様なコンテンツを提供
Sysmex Management Academy 新任管理職などを対象とした半年間の選抜型研修。シスメックスの経営の役割と責任に関する洞察力など、マネジメントスキルの強化を図る
シスメックス
ヨーロッパ
 
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのプログラムを提供。専門知識の向上とカスタマートレーニングのトレーナーを育成することを目的とする
シスメックス
上海
Sysmex Shanghai University 全従業員を対象としたオンライン・トレーニングで、従業員の成長支援を目的に2019年度より開始
シスメックス
アジア・パシフィック
LinkedIn ラーニング 全従業員対象のSNS(LinkedIn)を利用したオンライン・トレーニングを約100コース提供。マネジメント、リーダーシップ、クリティカル・シンキング、ビジネス分析力、データ分析力などのスキル習得・強化を図る
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのオンライン・トレーニングプログラム

最新テクノロジーを活用したタレントマネジメント

 シスメックスでは、グループ全体の人材情報を一元管理し、デジタルトランスフォーメーション(DX)や働きがいの創出に取り組んでいます。情報漏えいを防止するための施策として、システムによるデータマネジメント機能に加え、グローバルでのデータ管理規則を設け、データアクセスの制限を行っています。これにより安全かつタイムリーにデータを活用できる仕組みを構築しています。具体的には、リモートワークやオンライン研修の開催など、業務内容や個人の生活スタイルにあわせて柔軟に働くことができる環境の整備、マッチングアルゴリズムを利用した自律的なキャリア形成、従業員エンゲージメントサーベイのリアルタイムでのフィードバックなど、最新のテクノロジーを活用してタレントマネジメントを推進しています。

優れた人的資本経営・情報開示に取り組む企業として「人的資本リーダーズ2023」および「人的資本経営品質 2023(ゴールド)」に選定

 シスメックス株式会社は、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアムとHR総研、MS&ADインターリスク総研株式会社が共同で企画・実施した「人的資本調査2023」において、人的資本投資を中長期の投資と捉えて取り組みを進めていることや、投資とリターンについて指標を定め、社内データによる検証を行うなど科学的な取り組みを実施している点が高く評価され、「人的資本リーダーズ2023」および「人的資本経営品質2023(ゴールド)」に選定されました。
人的資本リーダーズ・人的資本経営品質2023
  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。