社会

品質と信頼の追求

品質マネジメント

グループ品質マネジメント体制

 シスメックスでは、代表取締役社長の統括・管理の下、品質保証部門が中心となり品質マネジメントに取り組んでいます。具体的には、開発、製造、販売・サービスの各部門の責任者が出席する品質会議を毎月開催し、製品・サービスの品質・有効性および安全性のモニタリングと改善に向けた対策の検討を行っています。また、規制当局の査察、品質目標、マネジメントレビューからのアウトプット指示への対応などの審議を行う品質システム委員会を定期的に開催し、グループの品質マネジメントシステムの維持、改善に関する活動を推進しています。
 また、全ての最終製品の生産拠点で国際規格ISO 9001またはISO 13485の認証を取得しています。グループ全84社中では、ISO 9001は34社、ISO 13485は21社が認証を取得しています。2022年度の内部品質監査で2件、外部品質監査で5件の不適合が見つかり是正対応を進めています。さらに、「リコール件数」と「FDA Warning Letter件数」をサステナビリティ目標のモニタリング指標として設定し、品質の強化に努めています。

  • 100%子会社
詳細は下記 www.tuv.com の ID 0910589004 を参照。(活動およびサイトの適用範囲は規格により異なります。)

継続的な改善プログラム

各国法令・規制の遵守

 臨床検査で用いられるシスメックスの製品は、人々の生命と健康を守る上で極めて重要な役割を果たしています。シスメックスでは、製品開発、製造、調達活動において、日本の薬機法やEUのIVD規則、米国FDAの品質システム規則、中国の医療機器監督管理条例など、世界各国の規制遵守を徹底できる体制を構築し、製品の安全性、品質の維持・向上を図っています。

品質を維持・向上するための仕組みを強化

 シスメックスでは、製品開発プロセスにおいて、市場に導入するまでに5つの「クオリティ・ゲート」※1を設けて品質を確認しています。また新規製品には設計・開発段階で、既存製品には設計変更時に品質・安全性に関するリスクアセスメントを実施し、リスクの高い事象に関してはリスク低減の対応を実施しています。また、シスメックスが販売する他社製品についても製造業者への監査や製品の検査を実施し、品質確保に努めています。このような取り組みに加えて、万一不具合などがあった際には、すぐにそれを把握し、対応できる体制を整えています。
 製造現場においては、製造工程およびサプライヤーの不適合発生状況を毎月監視し、不適合率の高いサプライヤーに対しては品質改善を適宜指示するとともに、定期的に品質監査を実施することで品質を確保する体制を整えています。さらにグローバル品質苦情処理システムによって、グローバルかつタイムリーに市場から品質情報を収集し、不具合情報を入手した際は直ちに原因を究明し、不具合品の市場流出を防止しています。また、発生した不具合に対し是正処置・予防処置が必要な場合には、グループ規程に則って速やかに計画立案し、処置やその後の妥当性・有効性確認までを実施しています。
 また、2021年からは、品質とトレーサビリティの確保のため、一部の検査用試薬の輸送においてGPSや温度ロガー※2の活用を開始しました。今後、高度な品質保証が要求されている診断薬製品においても順次適用を拡大していきます。

  • 1 商品設計審査、工程設計審査、品質部門による評価、製造工程のQMS確認、量産品審査
  • 2 温度計に記録機能(ロガー)が付いた測定器

第三者機関から認定された品質の高い製品・サービスの提供

 シスメックスでは客観的な信頼性を高めるため、製品の検査結果に関する品質保証体制を強化しています。
 小野工場においては、標準物質生産者の能力に関する国際規格ISO 17034の認定を取得しています。この認定の取得は、適切な品質の標準物質を供給できる能力を証明するもので、血球計数検査分野では日本で初めての取得となりました。本認定の取得により、当社製品・サービスのデータ保証に関わる客観的信頼性が高まり、臨床検査機関のお客様は、適切な検査データを提供できる能力を持つことをグローバルに実証することができます。

従業員へのトレーニング

品質・安全に関わる教育に注力

 シスメックスでは、品質方針教育に加えて、品質マネジメントに関する関連部門への定期的な教育、特定の部門・職種を対象とした法規制に関する専門的な教育を実施しています。2022年度は国内グループ会社の開発、製造、販売・サービス部門およびISO認証取得事業所全従業員約2,800名に対して品質教育を行いました。海外グループ会社についても、全ての最終製品の生産拠点とISO認証取得事業所において品質教育を実施しています。

品質・安全性に関する情報

お客様からの情報をグループ内で共有

 シスメックスは、製品の品質と安全性に関する情報を管理する品質保証部門を設置して外部から寄せられる情報を調査・分析して設計・製造など各部門と共有し、品質改善だけでなく、次代を担う新製品の開発に活かす体制を整えています。

製品の品質と安全性に関する情報を管理する体制

ウェブサイトで回収・改修の情報を開示

 シスメックス株式会社では、製品の回収・改修などの情報を当社ウェブサイト内「製品に関する重要なお知らせ」で開示しています。

模倣試薬の積極的な取り締まり

 シスメックスは、正確な検査結果を保証するために、医療機関のお客様には純正の機器と試薬のセットでご使用いただくようお願いしています。近年、一部の地域でシスメックス製試薬の名称や容器の形状を模倣した試薬の流通が発見されています。模倣試薬を使用した場合、検査結果の信頼性が保証できず、場合によっては患者さんに健康被害をもたらす危険性があります。このため、模倣試薬の市場流通状況を継続的に監視しており、模倣試薬を発見した場合は、知的財産権を用いて現地の行政機関や司法機関を通じて迅速かつ徹底的な取り締まりを実施しています。

お客様満足度の向上

国内外でお客様満足度調査を実施

 シスメックスでは米州、EMEA、アジア・パシフィックの主要国に加え、中国や日本など、さまざまな国や地域でお客様の満足度調査を実施しています。展開している製品やサービスの内容に応じて、それぞれの国や地域で独自の指標を用いています。
 シスメックス アメリカは、医療用画像処理および臨床診断機器市場の市場調査を行うIMV社が主催する「IMV ServiceTrak」において、血球分析装置メーカー部門のお客様満足度No.1を16年連続で獲得したほか、システムパフォーマンス、サービスでも業界トップを獲得しました。また、ビジネスパートナーであるプレミア社より、低いコストで臨床現場の運用効率向上に寄与する製品・サービス提供の長年の功績が認められ、「Supplier Legacy Award」を受賞しました。
 シスメックス 上海は、中国の医療機器業界のカンファレンスにおいて、優れた製品品質とアフターサービスが認められ、複数の優秀賞を受賞しました。

  • 欧州・中東・アフリカ地域
  • 顧客満足度調査(米国)
  • IMV ServiceTrak

お客様の声を製品・サービスに活かす取り組み

 シスメックスでは、お客様からいただいたご要望をVOC(Voice of Customer:お客様の声)チームが集約し、さまざまな角度から分析した後、関係部門へフィードバックされ、新たな製品開発や業務改善に活用されています。2022年度には、国内市場から約 13,600件、またヨーロッパをはじめとする海外市場からも多数のお客様の声を収集しました。お客様の声から生まれた新たな機能や装備を搭載した装置は、製品カタログにVOCマークを記載しており、高い評価をいただいています。

満足度の高いユーザートレーニングの提供

バーチャルトレーニング
バーチャルトレーニング
 シスメックスでは、お客様サポートの一環として、機器の操作およびメンテナンスのトレーニングを各地域で実施しています。近年ではニューノーマルな社会に対応するため、世界各地域でオンラインでのトレーニング体制を整備し、ライブ配信やオンデマンドでの受講を可能としています。
 また、シスメックス アメリカやシスメックス ヨーロッパでそれぞれ提供していたユーザートレーニングプログラムを「Caresphere™ Academy」というグローバルで統合された新ブランド名のトレーニングとして提供を開始しています。

デジタル化推進プロジェクト

サービス&サポート改革による製品品質改善活動

 シスメックスは、世界190以上の国や地域で製品を提供しており、グローバルでの装置故障状況、サービス状況を正確に把握することが難しいという課題がありました。そこで、2019年より、各地域統括法人のサービス&サポートの関係者が集まり、サービス&サポート改革プロジェクトをスタートさせました。
 プロジェクトでは、各地域のサービス&サポート関連情報をグローバルで共通コード化することにより、装置故障状況やサービス対応状況などのグローバルなデータ集積を開始しました。同時に、エキスパートチームを結成し、そのデータのモニタリングにより、品質、サービス改善プロセスの迅速化につなげるとともに、不具合をプロアクティブに検知し装置故障率の低減に繋げています。

サービス&サポート改革による製品品質改善活動

トレーニング改革による技術サービス&学術サポート品質改善活動

 シスメックスは、トレーニング改革の一環として、世界中の技術サービス担当者、および学術サポート担当者向けの研修に、バーチャルトレーニングスペースを導入しました。世界各地からアバターとして参加し、新製品のソフトウェアを体験・学習するもので、バーチャル空間でソフトウェアのオペレーションを共有できるため、実機がなくても場所を選ばずに参加者全員が操作方法を習得できるようになりました。今後も習得度の高い研修を行い、世界中で高品質の技術サービスと学術サポートの提供を継続していきます。

トレーニング改革による技術サービス&学術サポート品質改善活動

役立つ情報の発信

ウェブサイト「サポートインフォメーション」
ウェブサイト「サポートインフォメーション」

 シスメックス株式会社では、当社ウェブサイト「サポートインフォメーション」で、お客様に役立つ情報の発信を行っています。最新情報をお伝えするメールマガジン配信サービス、コンテンツや閲覧履歴などを管理できるマイページ機能など、お客様によりご活用いただけるよう、継続的に機能の充実を図っています。

お問い合わせに、迅速・確実にお応えするために

 シスメックスでは、各地域にカスタマーサポートセンターを設けてお問い合わせに迅速・確実にお応えする体制を整えるとともに、お客様のご要望にいち早く応える仕組みの構築に努めています。
 日本では、お客様相談窓口「カスタマーサポートセンター」を設置し、豊富な知識を持った専任スタッフが、24時間365日体制でお問い合わせに対応しています(利用には別途契約が必要)。同センターでは、過去のお問い合わせ内容やメンテナンス履歴などを蓄積し、すぐに参照できるようにすることで、お客様からのお問い合わせ・ご要望に迅速・確実にお応えしています。

カスタマーサポートセンターお問い合わせ内容

学術活動

 シスメックスでは、世界のさまざまな国と地域で最新の臨床検査情報を提供する学術セミナーを開催しています。また、アジアにおいては各国の保健省などの国家機関や主要学会とともに、臨床検査の品質向上を支援するための学術活動を展開しています。

医療従事者向けの学術セミナーを開催

シスメックス学術セミナー2022
シスメックス学術セミナー2022

 シスメックスでは、医学研究における幅広い領域からテーマを取り上げ、その最新情報と研究から得られた知見を共有する場として1978年より毎年「シスメックス学術セミナー」を開催しています。2022年には、血液疾患をテーマにオンサイトとオンラインのハイブリッド形式で開催し、世界各国から約3,500人にご参加いただきました。また、セミナー開催後は講演動画をオンデマンドにて世界配信しました。国ごとに設定した参加者アンケートを行い、国や地域で異なる医療課題や関心事を把握することで、今後のセミナーテーマ設定や当社の取り組みに活かしています。
 その他にも世界各地域で多数のセミナーを開催し、広く多くの方にご参加いただいています。このような取り組みを継続することで、医療従事者との信頼関係を構築するとともに、医療の質の向上に貢献していきます。

一般の方、患者さん向けの活動

学術情報サイト「Medical meets Technology」
学術情報サイト「Medical meets Technology」

 シスメックスでは、学術情報サイト「Medical meets Technology」を公開し、医療におけるさまざまな技術の役割について、学術的観点から分かりやすく情報をまとめ発信しています。
 また、がんゲノムプロファイリング用の検査システムNCC オンコパネルの製品情報について、従来は医療従事者向けにのみ公開していましたが、インフォームドコンセントの観点から、新たに患者さんおよびご家族向けに分かりやすく解説した資料を作成し公開しています。薬剤耐性(AMR)に関する課題については、啓発活動「#AMRfighter」をグローバルに展開するとともに、学術冊子「抗菌薬との正しいつき合い方」を広く提供するなど、一般の方、患者さん向けのさまざまな取り組みを行っています。

  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。