社会
シスメックスでは、代表取締役社長の統括・管理の下、品質保証部門が中心となり品質マネジメントに取り組んでいます。具体的には、開発、製造、販売・サービスの各部門の責任者が出席する品質会議を毎月開催し、製品・サービスの品質・有効性および安全性のモニタリングと改善に向けた対策の検討を行っています。また、規制当局の査察、品質目標、マネジメントレビューからのアウトプット指示への対応などの審議を行う品質システム委員会を定期的に開催し、グループの品質マネジメントシステムの維持、改善に関する活動を推進しています。
また、すべての最終製品の生産拠点※で国際規格ISO 9001またはISO 13485の認証を取得しています。グループ全79社のうち、ISO 9001は34社、ISO 13485は21社が認証を取得しています。2023年度の内部品質監査で4件、外部品質監査で5件の不適合が見つかり是正対応を進めています。さらに、「リコール件数」と「FDA Warning Letter件数」をサステナビリティ目標のモニタリング指標として設定し、品質の強化に努めています。
臨床検査で用いられるシスメックスの製品は、人々の生命と健康を守るうえで極めて重要な役割を果たしています。シスメックスでは、製品開発、製造、調達活動において、日本の薬機法やEUのIVD規則、米国FDAの品質システム規則、中国の医療機器監督管理条例など、世界各国の規制遵守を徹底できる体制を構築し、製品の安全性、品質の維持・向上を図っています。
シスメックスでは、製品開発プロセスにおいて、市場に導入するまでに5つの「クオリティ・ゲート」※1を設けて品質を確認しています。また新規製品には設計・開発時に、既存製品には設計変更時に品質・安全性に関するリスクアセスメントを実施し、リスクの高い事象に関してはリスク低減の対応を実施しています。また、シスメックスが販売する他社製品についても製造業者への監査や製品の検査を実施し、品質確保に努めています。このような取り組みに加えて、万一不具合などが発生した際には、すぐにその内容を把握し、対応できる体制を整えています。
製造現場においては、定期的に品質監査を実施するとともに、製造工程およびサプライヤーの不適合発生状況を毎月監視し、不適合率の高いサプライヤーに対しては品質改善を適宜指示・支援することで品質を確保する体制を整えています。さらにグローバル品質苦情処理システムによって、グローバルかつタイムリーに市場から品質情報を収集し、不具合情報を入手した際は直ちに原因を究明し、不具合品の市場流出を防止しています。また、発生した不具合に対し是正処置・予防処置が必要な場合には、グループ規程に則って速やかに計画立案し、処置やその後の妥当性・有効性確認までを実施しています。
また、2021年からは、品質とトレーサビリティの確保のため、一部の検査用試薬の輸送においてGPSや温度ロガー※2の活用を開始しました。今後、高度な品質保証が要求されている診断薬製品の輸送においても順次適用を拡大していきます。
シスメックスでは客観的な信頼性を高めるため、製品の検査結果に関する品質保証体制を強化しています。
小野工場においては、標準物質生産者の能力に関する国際規格ISO 17034の認定を取得しています。この認定の取得は、適切な品質の標準物質を供給できる能力を証明するもので、血球計数検査分野では日本で初めての取得となりました。本認定の取得により、当社製品・サービスのデータ保証に関わる客観的信頼性が高まり、臨床検査機関のお客様は、適切な検査データを提供できる能力を持つことをグローバルに実証することができます。
シスメックスでは、品質方針教育に加えて、関連部門を対象とした品質マネジメントに関する定期的な教育、特定の部門・職種を対象とした法規制に関する専門的な教育を実施しています。2023年度は国内グループ会社の開発、製造、販売・サービス部門およびISO認証取得事業所全従業員約2,800名に対して品質に関する教育を行いました。海外グループ会社についても、すべての最終製品の生産拠点とISO認証取得事業所において品質に関する教育を実施しています。
シスメックスは、製品の品質と安全性に関する情報を管理する品質保証部門を設置して外部から寄せられる情報を調査・分析して設計・製造など各部門と共有し、品質改善だけでなく、次代を担う新製品の開発に生かす体制を整えています。
シスメックス株式会社では、製品の回収・改修などの情報を当社ウェブサイト内「製品に関する重要なお知らせ」で開示しています。
シスメックスは、正確な検査結果を保証するために、医療機関のお客様には純正の機器と試薬のセットでご使用いただくようお願いしています。近年、一部の地域でシスメックス製試薬の名称や容器の形状を模倣した試薬の流通が発見されています。模倣試薬を使用した場合、検査結果の信頼性が保証できず、場合によっては患者さんに健康被害をもたらす危険性があります。このため、模倣試薬の市場流通状況を継続的に監視しており、模倣試薬を発見した場合は知的財産権を用いて、現地の行政機関や司法機関と協力し、迅速かつ徹底的な対応を実施しています。
シスメックスでは米州、EMEA※、アジア・パシフィックの主要国に加え、中国や日本など、さまざまな国や地域でお客様の満足度調査を実施しています。展開している製品やサービスの内容に応じて、それぞれの国や地域で独自の指標を用いています。
シスメックス アメリカは、医療用画像処理および臨床診断機器市場の市場調査を行うIMV社が主催する「IMV ServiceTrakTM」において、血球分析装置メーカー部門のお客様満足度No.1を16年連続で獲得したほか、システムパフォーマンス、サービスでも業界トップを獲得しました。また、ビジネスパートナーであるプレミア社から、長年にわたり臨床現場の運用効率向上に貢献する低コストの製品・サービスを提供してきた功績が認められ、「Supplier Legacy Award」を受賞しました。
シスメックス 上海は、2024年中国医療機器産業データ調査において、市場シェア、顧客満足度、リテンション、NPS(顧客ロイヤルティ指数)、トレーニング満足度の5つのすべてのカテゴリーにおいてトップとなり、最優秀賞を獲得しました。この調査では、過去より3年連続で表彰されています。
シスメックスでは、お客様からいただいたご要望をVOC(Voice of Customer:お客様の声)チームが集約し、さまざまな角度から分析した後、関係部門へフィードバックされ、新たな製品開発や業務改善に活用されています。2023年度には、国内市場から約 13,500件、またヨーロッパをはじめとする海外市場からも多数のお客様の声を収集しました。お客様の声から生まれた新たな機能や装備を搭載した装置は、製品カタログにVOCマークを記載しており、高い評価をいただいています。
シスメックスは、世界190以上の国や地域で製品を提供しており、グローバルでの装置故障状況、サービス状況を正確に把握することが難しいという課題がありました。そこで、各地域統括法人の技術サービス&アプリケーションサポートの関係者が集まり、改革プロジェクトをスタートさせました。
プロジェクトでは、各地域のサービス情報をグローバルで共通コード化することにより、装置故障状況やサービス対応状況などのグローバルなデータ集積に加え、新たに市場サポートのエスカレーションシステムを刷新、デジタルデータ化を推進しました。本データは、グローバルのエキスパートチームが定期的にモニタリングを行い、品質、サービス改善プロセスの迅速化につなげるとともに、不具合をプロアクティブに検知し装置故障率の低減につなげています。
シスメックスは、トレーニング改革の一環として、世界中の技術サービス担当者、およびアプリケーションサポート担当者向けの研修に、バーチャルトレーニングスペースを導入しました。世界各地からアバターとして参加し、新製品のソフトウエアを体験・学習するもので、バーチャル空間でソフトウエアのオペレーションを共有できるため、実機がなくても場所を選ばずに参加者全員が操作方法を習得できるようになりました。今後も習得度の高い研修を行い、世界中で高品質の技術サービスとアプリケーションサポートの提供を継続していきます。
シスメックス株式会社では、当社ウェブサイト「サポートインフォメーション」で、日本地域のお客様に役立つ情報の発信を行っています。最新情報をお伝えするメールマガジン配信サービス、コンテンツや閲覧履歴などを管理できるマイページ機能など、お客様によりご活用いただけるよう、継続的に機能の充実を図っています。
シスメックスでは、各地域にカスタマーサポートセンターを設けてお問い合わせに迅速・確実にお応えする体制を整えるとともに、お客様のご要望にいち早く応える仕組みの構築に努めています。
日本では、お客様相談窓口「カスタマーサポートセンター」を設置し、豊富な知識を持った専任スタッフが、24時間365日体制でお問い合わせに対応しています(利用には別途契約が必要)。同センターでは、過去のお問い合わせ内容やメンテナンス履歴などを蓄積し、すぐに参照できるようにすることで、お客様からのお問い合わせ・ご要望に迅速・確実にお応えしています。
シスメックスでは、世界のさまざまな国と地域で最新の臨床検査情報を提供する学術セミナーを開催しています。また、アジアにおいては各国の保健省などの国家機関や主要学会とともに、臨床検査の品質向上を支援するための学術活動を展開しています。
シスメックスでは、医学研究における幅広い領域からテーマを取り上げ、その最新情報と研究から得られた知見を共有する場として1978年より毎年「シスメックス学術セミナー」を開催しています。2023年は、「クローン性造血」をテーマにオンサイトとオンラインのハイブリッド形式で開催し、神戸と東京の2会場での講演を、国内はもとより海外に配信しました。英語を中心に、中国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語での同時通訳を実施し、世界21カ国の方にご参加いただきました。また、セミナー開催後は講演動画をオンデマンドにて世界配信しました。国ごとに設定した参加者アンケートを行い、国や地域で異なる医療課題や関心事を把握することで、今後のセミナーテーマ設定や当社の取り組みに生かしています。
その他にも世界各地域で多数のセミナーを開催し、広く多くの方にご参加いただいています。このような取り組みを継続することで、医療従事者との信頼関係を構築するとともに、グローバルに医療の質の向上に貢献していきます。
シスメックスでは、学術情報サイト「Medical meets Technology」を公開し、医療におけるさまざまな技術の役割について、学術的観点から分かりやすく情報をまとめ発信しています。
また、がんゲノムプロファイリング用の検査システムNCC オンコパネルの製品情報について、従来は医療従事者向けにのみ公開していましたが、インフォームドコンセントの観点から、新たに患者さんおよびご家族向けに分かりやすく解説した資料を作成し公開しています。薬剤耐性(AMR)に関する課題については、啓発活動「#AMRfighter」をグローバルに展開するとともに、学術冊子「抗菌薬との正しいつき合い方」を広く提供するなど、一般の方、患者さん向けのさまざまな取り組みを行っています。