ストーリー

より身近な認知症診断への挑戦

~患者さんのより良いヘルスケアジャーニーを支えるために検査ができること~

血液などを調べる検体検査の領域で50年以上の歴史を持ち、検査機器・試薬の研究開発から調達・生産、販売、サービス&サポートまでのバリューチェーンを持つシスメックス。一人ひとりの生涯にわたるヘルスケアの旅路「ヘルスケアジャーニー」の各シーンにおいて、病気の早期発見、疾患の予防、より良い治療法の選択など、新たな価値の提供を目指しています。本記事では、シスメックスのCTOを務める吉田 智一へのインタビューを通じて、認知症領域における新たな検査法の確立に懸ける想いと奮闘に迫ります。

アルツハイマー病治療におけるパラダイムシフトを支える、低侵襲かつ簡便な検査・診断技術の確立を目指して

アルツハイマー病に起因する認知症の進行を抑える効果が期待される世界初の治療薬「レカネマブ(一般名)」が2023年12月、日本で発売されました。長年対症療法しか存在しなかったとされるアルツハイマー病。原因物質の一つである脳内の「アミロイドβ(Aβ)」の塊を除去することで進行を抑制するという新薬の登場により、アルツハイマー病の治療が転換点を迎えています。その新薬による治療のカギとなるのが、検査による「早期発見」です。シスメックスは、2023年6月にわずかな血液から、脳内Aβの蓄積状態を調べることができる検査試薬を日本で発売。従来手法と比較して、患者さんの精神的、身体的な負担が少なく、身近な医療機関で受けられる検査につながる技術を開発しました。検査への負担軽減とアクセス向上により、受診者が増えれば、より多くの患者さんの早期発見に繋がります。この検査試薬の誕生は、検査で医療に貢献したいという強い信念を持ち、吉田が尽力した10年にわたる取り組みが実を結んだものでした。

検査の価値を拡げ、検査で医療の進化に貢献したいと奔走した10年間

「シスメックスはこれまで、検体検査の領域で、さまざまなイノベーションをリードしてきました。一方で、私自身が前職で製薬企業にいた経験から、シスメックスの検査・診断技術と、製薬企業が持つナレッジ・アセットを組み合わせることで、これまでにない新たな医療の実現に貢献したい、との想いがありました。」そう語るのは、取締役 常務執行役員 CTOである吉田 智一。『異常を見つける』という従来の検査の概念を、『より良い治療につなげる』というところまで拡げることができないか、その糸口を探していました。

 

2013年ごろから、多くの製薬企業に足を運び、血液から読み取れるさまざまな情報を医療へどう活用できるか、意見交換を行うところからアプローチを始めた吉田。検査機器・試薬メーカーとしてシスメックスができることを理解してもらうため、実際に試作品の製作まで行うなど、地道な活動を1~2年続けました。そうした活動の末、2016年2月、認知症領域における豊富な経験とナレッジを有し、新薬開発に注力するエーザイ株式会社と、認知症の早期診断や治療法の選択、治療効果モニタリングを可能にする次世代の診断薬開発に向けた協創がスタートしたのです。当初の心境について、吉田は「長年、対症療法しか存在しなかった領域に対して、私たちが何か貢献できることはないだろうかという一心でした」と話します。

その後、2018年にはアルツハイマー病の原因の一つとされる脳内Aβの蓄積状態を血液バイオマーカーで測定できるという論文が他社から報告されたこともあり、血液による診断技術の研究開発は大きく加速。活動を開始してから実に10年という年月が経とうとしていた2022年12月、ついに脳内Aβの蓄積を血液で調べる検査に必要な技術を確立し、日本で体外診断用医薬品としての承認を取得しました。吉田の想い、そしてシスメックスが目指してきた未来が形になった瞬間でした。
 
「検査によって、アルツハイマー病の患者さんを早期の段階で見いだし、治療機会を提供することの重要性、すなわち“検査”の価値が製薬企業のみならず、世の中にも徐々に浸透しつつある手ごたえを感じました。」と吉田は語ります。

検査・診断が描く未来。より良いヘルスケアジャーニーをすべての人へ。

吉田は日本での薬事承認までの道のりを振り返り、「シスメックスの製品が、まずは日本で、脳内Aβの蓄積を血液で測定できる診断薬として認められたことは非常に大きな一歩です。検査があるからこそ、適切な治療につながる、治療の価値が高まる、ということをまさに体現した事例ではないでしょうか。」と話します。
 
現在、この血液中のAβを測定する検査試薬の提供地域は、日本から米国、そして欧州へと広がっています。さらにシスメックスは、認知症に関連する血液検査の社会実装に向けた取り組みや、血液検査項目の拡充に向けた研究開発も進めています。
 
「今回の血中Aβ検査試薬を一つのモデルケースとし、今後もさまざまなパートナーとの協創によって、検査という立場から新たな医療の形を生み出していきたいと思っています。『健康をどのように維持するのか』、『病気の兆候をどう早く見つけるのか』、『より良い医療にどうつなげていくのか』など、医療従事者と患者さん、そのご家族のより良い『ヘルスケアジャーニー』のために、私たちができることはまだまだたくさんありますから。」そう話す吉田の目は、現在の医療のさらに先の未来を映していました。
 
シスメックスは、これからも一人ひとりの生涯にわたるヘルスケアの旅路「ヘルスケアジャーニー」に寄り添い、さまざまなステークホルダーとの協創を通して、既存の検査・診断の枠を超えて、ヘルスケアの進化に貢献していきます。
 【注釈】
※レカネマブ(一般名):エーザイ株式会社とバイオジェン・インクが共同開発するアルツハイマー病の治療薬。アルツハイマー病に起因する認知症の進行を抑制する世界で初めての治療薬として、米国、日本および中国において、それぞれ2023年7月、2023年9月、2024年1月に承認され、欧州においても2023年1月に販売承認申請が受理されている。
 

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