環境

製品ライフサイクルにおける資源循環

製品ライフサイクルと各段階での取り組み

 シスメックスでは、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減に向け、あらゆる事業活動の段階でさまざまな取り組みを実施しています。2023年度からは、中期経営計画の基本戦略に含まれるエコソーシャル戦略のもと、従来の活動に加え、資源循環型バリューチェーンの実現に向けたさらなる活動を推進しています。

資源循環型バリューチェーン

研究開発における環境配慮

製品の省電力化・小型化

 シスメックスでは、お客様が製品を使用される際のエネルギーや廃棄物の削減に貢献するため、製品ライフサイクルマネジメントに関するグローバル規程に、製品ライフサイクルの各段階における経営上適切と考えられる環境配慮の取り組みを明記し、検体検査装置の省電力化、試薬使用量の削減などの製品開発に取り組んでいます。
 2021年に発売されたヘマトロジー分野の検体搬送システム商品群では、従来システムよりサイズ(横幅)を15%削減、消費電力も40%削減しました。また、2022年に発売された全自動尿中有形成分分析装置では、従来装置よりサイズを30%削減、1測定当たりに必要な洗浄液量を10%削減し、消費電力も約30%削減することで環境配慮設計を実現しました。

  • 小型化・設置面積30%縮小・洗浄液量10%削減
  • UF-1500

脱動物原料の開発(生物多様性への配慮)

カイコを利用した原料生産

 シスメックスでは、天然資源の使用抑制を目指して、診断薬における動物由来原料のタンパク質に関して、カイコや培養細胞を利用した生産手法を確立しました。従来、これらの原料の生産には多くのエネルギーを消費していましたが、カイコは一般室内飼育が可能であり、容器内で人工餌を与えるだけでよいため、原材料の安定供給・品質の安定化が図られるとともに、省エネルギーやCO2排出量・水使用量・廃棄物削減も期待できます。
 2017年度に販売を開始した血液凝固検査の試薬の原料にも、カイコから生産した遺伝子組み換えタンパク質を用いています。本試薬は、原料に遺伝子組み換えタンパク質を用いた試薬として、国内で初めて製造販売承認を取得しています。
 これらの生産手法の切り替えによる環境へのインパクトについて、LCA(ライフサイクルアセスメント)定量評価の共同研究を東京都市大学 伊坪徳宏教授(現 早稲田大学)と実施し、その結果、従来の原材料生産方法と比較して50%以上のCO2削減効果が確認できました。

従来法と細胞培養法切り替えによる環境インパクトの比較

調達における環境配慮

グリーン調達の推進

 シスメックスは、調達活動における環境配慮への基本的な考え方として、「グリーン調達基準」を制定し、環境負荷が少ない原材料・部品の調達推進と、環境保全に意欲的なサプライヤーとの取引を拡大しています。また、毎年各サプライヤーに対して実施しているCSR調査では、環境管理に関する方針、CO2削減や省エネルギーに関する目標、計画の有無などを確認しています。
 2023年の調達方針説明会では当社のエコソーシャル戦略を紹介し、CO2排出量削減やさまざまな環境配慮対応についてサプライヤーとの協働を依頼し、環境配慮の改善成果を上げられたサプライヤーの表彰を行いました。また、スコープ3排出削減に向け、サプライヤーに対してSBT申請またはSBTに準ずる目標設定を依頼するエンゲージメント目標を設定し、SBTiによる認定を受けました。今後はサプライヤー向け説明会を開催する等、サプライヤーとともに目標達成に向け取り組んでいきます。

製品の化学物質管理

 シスメックスは、RoHS指令など各国法令・規制を遵守するとともに、自社のグリーン調達基準に基づき、生産および販売する製品を構成する部品、デバイス、材料などに含有される化学物質(環境負荷物質)について、含有禁止物質、含有管理物質などに区分して管理しています。

製品輸送・販売・サービスにおける環境配慮

モーダルシフトや生産拠点移管などによる物流CO₂削減

 シスメックスでは、航空便から船便・鉄道便への切り替え(モーダルシフト)、コンテナ積載率の改善による効率的な輸送、試薬製品の生産拠点移管による域間輸送の低減を行っています。さらに、部品調達や製品輸送に使用する輸送・梱包資材のリサイクル化や軽量化も推進しています。これらの取り組みにより、製品の国内・域間物流におけるCO2排出量を削減しています。

ドライアイスフリーと混載輸送による物流CO₂削減

 シスメックス株式会社では、厳格な品質・温度管理が必要な遺伝子検査用試薬や生化学検査用精度管理物質については、チャーターなど専用便で輸送していたため、輸送コスト、流通の柔軟性、利便性が課題となっていました。また、保冷のために必要となるドライアイスは、超低温による凍傷や炭素ガスによる中毒のリスクがあり、安全性の面でも問題となっていました。
 2021年度には、ヤマト運輸株式会社と連携して、遺伝子検査用試薬のマイナス70℃超低温帯での混載輸送をドライアイスフリーで実現しました。さらに、2022年度には東邦薬品株式会社と協力し、生化学検査用精度管理物質の完全ドライアイスフリー輸送も実現しました。現在では他の広域代理店にも取り組みを拡大し、200施設以上のユーザーへ配送しています。これらの取り組みにより、CO2排出の削減と安全性の向上につながりました。
 今後も、高品質で環境に配慮したコールドチェーンのさらなる普及に取り組んでいきます。

輸送梱包の見直しによる省資源化

 シスメックス株式会社では、日本からの輸出が拡大しているバイオ診断薬について、輸送に必要なプラスチック製蓄冷剤のリユースをグローバルで開始し、蓄冷剤の廃棄削減を図っています。日本と中国、シンガポールの間でリユースを行い、2023年度は約8tの廃棄削減につながりました。また機器製品を輸送する際に使用する木製パレットを、リサイクル可能な環境配慮資材の段ボールパレットへ切り替えることで、梱包材の廃棄削減および軽量化による輸送時のCO2削減を実現しました。

部品のリサイクルによる省資源化

 シスメックスでは、これまで廃棄していた販売・サポート終了後の機器の保守部品について、新たな取り組みを開始しました。不要になった部品を回収し、有価物として売却することで廃棄物を削減しています。この廃棄ゼロ活動の結果、2023年度には34トンの廃棄物削減を達成しました。

  • 廃棄物すべてをプラスチックと仮定し、環境省の定めている産業廃棄物換算係数より試算

梱包資材の見直しによる省資源化

 シスメックスでは、省資源のための梱包材改革に継続的に取り組んでいます。梱包箱のサイズ最適化によるダウンサイジング、パーツ用ビニル系緩衝材の紙製緩衝材への切り替えなどを行っています。また、古紙再生紙が配合された段ボール、FSC認証素材を利用した試薬化粧箱への切り替えなど、製品梱包のリサイクル・環境配慮材料への代替を推進しています。

グループ会社での取り組み ~環境に配慮した物流パートナーとの連携~

 シスメックス ヨーロッパでは、物流パートナーの選定基準の中に、環境マネジメントシステムの認証取得やグリーン物流活用の有無を組み入れています。グループ会社の HITADOでは、再エネ電力や電気自動車を積極的に利用している物流パートナーを採用しており、シスメックス マレーシアでは、温度管理が必要な製品輸送において、再利用可能な真空断熱箱を使用し、節電によるCO2削減と発泡スチロール箱の廃棄削減を実現しています。また、シスメックス トルコにおいても、太陽光パネルが設置された外部倉庫に製品を保管するなど、パートナーと連携して環境負荷低減に取り組んでいます。

会社名 取り組み内容
シスメックス
リージェンツ・アメリカ
  • 原材料輸送用箱を再利用可能なコンテナに変更
  • 取引先と連携し、原材料のパッケージをリサイクル可能な容器に変更
シスメックス ヨーロッパ
他EMEA地域関係会社
  • 出荷/輸送の統合や組み合わせを検討し、輸送頻度を削減
  • 試薬容器にリサイクル可能な植物性繊維を使用
  • 保冷用発砲スチロール箱の代替品検討(羊毛断熱など)
  • 発泡スチロール緩衝材をペーパースクラップに切り替え
  • 梱包用のプラスチックテープを紙ベースのテープに切り替え
  • パッケージ、緩衝材の再利用
  • 電気フォークリフトの使用
  • 濃縮試薬の普及促進による紙パックの削減
  • 電気自動車の使用と充電インフラの拡充
シスメックス
オーストラリア
  • 温度管理が必要な製品輸送時に、推奨冷却温度での管理が可能で、再利用可能な断熱コンテナを使用

サービス&サポート活動における環境配慮

 シスメックスでは、機器のメンテナンスやユーザートレーニング、学術セミナーなど、世界各地域でオンライン開催できる環境を整備しており、移動にともなうCO2排出量の削減につなげています。
 2019年からは、グローバルでのサービス&サポート改革プロジェクトをスタートさせ、eラーニングとバーチャル研修を通じて、ユーザートレーニングのオンライン比率を高める取り組みを進めています。2023年度には新たに開設したトレーニングセンターにオンラインスタジオを設け、さらに充実させたユーザートレーニングを提供しています。

製品の使用・廃棄における環境配慮

濃縮試薬の導入

 シスメックスでは、ヘマトロジー分野の一部分析装置において、従来の試薬を25倍に濃縮した試薬を導入しています。この濃縮試薬の利用により、検査室での試薬交換頻度が低減し、在庫保管のスペースも削減されるなど、ユーザビリティの向上に大きく貢献しています。さらに、濃縮試薬の導入は、容器や梱包材の廃棄物削減に加え、輸送時のCO2排出量の削減など、環境への配慮も実現しています。また、濃縮試薬の普及率をサステナビリティ目標として設定し、今後も環境負荷低減に向けた取り組みを進めていきます。

ステークホルダーの声

システムエンジニアリング本部 係長 三原 崇仁

 新製品開発とは、お客様が何を求めているかを理解し、お客様のニーズにお応えできる高品質な製品を生み出すこと。シスメックスは、ヘマトロジー分野のリーディングカンパニーとして高い品質と目標を持つ責任があります。だからこそ、今後もお客様やその先にいる患者さんに寄り添い、安心して使用いただける製品をお届けしていきたい。品質やユーザビリティが高く、環境配慮にも対応している医療機器は、世界中の医療機関や社会のニーズに応えられる付加価値となっていきます。今後も、このようなサステナビリティの観点も取り入れた開発をさらに進めていきます。

  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。