環境

製品ライフサイクルにおける資源循環

製品ライフサイクルと各段階での取り組み

 シスメックスでは、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減に向け、あらゆる事業活動の段階でさまざまな取り組みを実施しています。環境管理委員会の活動の一つとして、「環境に優しい製品設計」、「輸送におけるCO2排出量の削減」などをテーマに掲げた全社横断のワーキンググループを設置し、さらなる活動を推進しています。

環境マネジメントワーキンググループ
製品ライフサイクルと各段階での取り組み

製品設計における環境配慮

省電力化・小型化製品の開発

 シスメックスでは、お客様が製品を使用される際のエネルギーや廃棄物の削減に貢献するため、製品ライフサイクルマネジメントに関するグローバル規程に、製品ライフサイクルの各段階において、経営上適切と考えられる環境配慮の取り組みを盛り込み、検体検査装置の省電力化、試薬使用量の削減などに配慮した製品開発に取り組んでいます。
 2022年に発売された全自動尿中有形成分分析装置では、従来装置よりサイズを30%削減、1測定あたりの洗浄液量を10%削減し、消費電力も約30%削減することで環境配慮設計を実現しました。

  • 小型化・設置面積30%縮小・洗浄液量10%削減
  • UF-1500

原料物質の生産における生物多様性への配慮

カイコを利用した原料生産

 シスメックスでは、天然資源の使用抑制を目指して、診断薬における動物由来原料のタンパク質に関して、カイコによる遺伝子組み換えタンパク質の生産手法を確立しました。従来、これらの原料の生産には多くのエネルギーを消費していましたが、カイコは一般室内飼育が可能であり、容器内で人工餌を与えるだけでよいため、安定供給が図れるとともに、省エネルギーや廃棄物削減も期待できます。
 2017年度に販売を開始した血液凝固検査の試薬の原料にも、カイコから生産した遺伝子組み換えタンパク質を用いています。本試薬は、原料に遺伝子組み換えタンパク質を用いた試薬として、国内で初めて製造販売承認を取得しています。

調達における環境配慮

グリーン調達の推進

 シスメックスは、調達活動における環境配慮への基本的な考え方として、「グリーン調達基準」を制定し、環境負荷が少ない原材料・部品の調達推進と、環境保全に意欲的なサプライヤーとの取引を拡大しています。また、毎年各取引先に対して実施しているCSR調査では、環境管理に対する方針、 CO2削減や省エネルギーに関する目標、計画の有無などを確認しています。

製品の化学物質管理

 シスメックスは、RoHS指令など各国法令・規制を遵守するとともに、自社のグリーン調達基準に基づき、生産および販売する製品を構成する部品、デバイス、材料などに含有される化学物質(環境負荷物質)への対応について、禁止物質、削減物質等を明確にしています。

製品輸送における環境配慮

製品の国内・域間物流のCO2排出量削減活動

 シスメックスでは、航空便から船便・鉄道便への切り替え(モーダルシフト)、コンテナ積載率の改善による効率的な輸送、試薬製品の生産移管による域間輸送の低減を行っています。さらに、部品調達や製品輸送に使用する輸送・梱包資材のリサイクル化や軽量化により、CO2排出量削減のための取り組みを進めています。

ドライアイスフリーの超低温輸送を実現

 シスメックス株式会社では、厳格な品質・温度管理が必要な遺伝子検査用試薬については、チャーターなど専用便で輸送していたため、輸送コスト、流通の柔軟性、利便性が課題となっていました。また、保冷のために必要となるドライアイスは石油精製の過程で排出されるCO2などを原料としており、環境配慮の観点からも使用量削減に向けた取り組みを検討しています。
 2021年度には、ヤマト運輸株式会社と連携して、遺伝子検査用試薬のマイナス70℃超低温帯での混載輸送をドライアイスフリーで実現しました。2022年度には東邦薬品株式会社と協力し、生化学検査用精度管理物質にも完全ドライアイスフリー輸送の適用を開始しました。
 今後も、高品質で環境に配慮したコールドチェーンのさらなる普及に取り組んでいきます。

輸送梱包時の環境配慮

 シスメックス株式会社では、日本からの輸出が拡大しているバイオ診断薬について、輸送に必要なプラスチック製蓄冷剤のリユースをグローバルで開始し、蓄冷剤の廃棄削減を図っています。日本と中国、シンガポールの間でリユースを行い、2022年度は約6tの廃棄削減につながりました。
 また、サプライヤーと連携して資材輸送梱包材を段ボールから通い箱(プラスチック製コンテナ)への切り替えを推進しており、全梱包材の30%まで切り替えることができました。

梱包資材の見直しによる省資源化

石油由来緩衝材の使用量(月平均)

 シスメックス株式会社では、省資源のための梱包材改革に継続的に取り組んでいます。梱包箱のサイズ最適化によるダウンサイジングやパーツ用ビニル系緩衝材を紙製緩衝材(ボーガスペーパー)に順次切り替え、梱包方法を袋状緩衝材からフィルム梱包へ変更するなどにより、2022年度の石油由来の緩衝材の使用量は、2017年度から約51%削減することができました。また、シスメックス ドイツでは、梱包資材は全てリサイクル可能なものを使用しています。

グループ会社での取り組み ~環境に配慮した物流パートナーとの連携~

 シスメックス ヨーロッパでは、物流パートナーの選定基準の中に、環境マネジメントシステムの認証取得やグリーン物流活用の有無を組み入れています。グループ会社の HITADOでは、再エネ電力や電気自動車を積極的に利用している物流パートナーを採用しており、シスメックス マレーシアでは、温度管理が必要な製品輸送において、再利用可能な真空断熱箱を使用し、節電によるCO2削減と発泡スチロール箱の廃棄削減を実現しています。 また、シスメックス トルコにおいても、太陽光パネルが設置された外部倉庫に製品を保管するなど、パートナーと連携して環境負荷低減に取り組んでいます。

会社名 取り組み内容
シスメックス
リージェンツ・アメリカ
  • 装置廃棄コンテナを6倍の大きさに変更し、輸送頻度を削減
  • 原材料輸送用箱を再利用可能なコンテナに変更
シスメックス ヨーロッパ
他EMEA地域関係会社
  • 出荷/輸送の統合や組み合わせを検討し、輸送頻度を削減
  • 試薬容器にリサイクル可能な植物性繊維を使用
  • 保冷用発砲スチロール箱の代替品検討(羊毛断熱等)
  • 発泡スチロール緩衝材をペーパースクラップに切り替え
  • 梱包用のプラスチックテープを紙ベースのテープに切り替え
  • パッケージ、緩衝材の再利用
  • 電気フォークリフトの使用
  • 濃縮試薬の普及促進による紙パックの削減
  • 電気自動車の使用と充電インフラの拡充
シスメックス
オーストラリア
  • 温度管理が必要な製品輸送時に、推奨冷却温度での管理が可能で、再利用可能な断熱コンテナを使用

販売・サービス&サポート活動における環境配慮

 シスメックスでは、機器のメンテナンスやユーザートレーニング、学術セミナーの開催など、世界各地域でオンラインでの開催環境を整備しており、移動に伴うCO2排出量の削減につなげています。
 2019年からは、グローバルでのサービス&サポート改革プロジェクトをスタートさせ、eラーニングとバーチャル研修によるユーザートレーニングのオンライン比率を高めるための取り組みを進めています。2022年度は約60%のユーザートレーニングをオンラインで開催しました。

製品の使用・廃棄における環境配慮

濃縮試薬の使用

 ヘマトロジー分野の一部分析装置では、従来試薬を25倍に濃縮した試薬が利用できます。この濃縮試薬は、検査室での試薬の交換頻度の低減や在庫保管の省スペース化などユーザビリティの向上に大きく貢献していることに加え、容器・梱包材の廃棄物削減、輸送時のCO2削減など環境への配慮も実現しています。シスメックスでは濃縮試薬の普及率をサステナビリティ目標として設定し、環境負荷の低減を進めています。

ステークホルダーの声

システムエンジニアリング本部 係長 三原 崇仁

 新製品開発とは、お客様が何を求めているかを理解し、お客様のニーズにお応えできる高品質な製品を生み出すこと。シスメックスは、ヘマトロジー分野のリーディングカンパニーとして高い品質と目標を持つ責任があります。だからこそ、今後もお客様やその先にいる患者さんに寄り添い、安心して使用いただける製品をお届けしていきたい。品質やユーザビリティが高く、環境配慮にも対応している医療機器は、世界中の医療機関や社会のニーズに応えられる付加価値となっていきます。今後も、このようなサステナビリティの観点も取り入れた開発をさらに進めていきます。

  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。