皆さんが健康診断や病院を受診した際に行われる採血。その血液はどこへ行き、誰が、どのように検査しているのか、そしてなぜ血液検査が必要なのか、考えたことはありますか?本記事では、皆さんにとって最も身近な検査の一つ、「血液検査」の役割と仕組み、そして血液検査を支える人々やシスメックスの検査機器について、ご紹介します。
大きな規模の病院には検査を専門に行う臨床検査室があります。検査は、お医者さんの指示に基づき、国家資格を持つ臨床検査技師さんが行います。病気での診察や健康診断の際に看護師さんが採血した血液は、まず臨床検査室に運ばれます※1。その後、検査技師さんが、血液の入った採血管を検査機器にセットすると、検査機器が自動で血液を測定・分析し、正常か異常かを振り分けます。異常がある場合は、検査技師さんが、顕微鏡などでさらに詳しく調べることもあります。そうして得られた検査結果は、お医者さんに送られたのち、お医者さんは、検査結果やその他の所見などに基づき、患者さんに診断結果を説明します。
検査技師さんが正確な検査結果をタイムリーにお医者さんへ伝えることで、お医者さんは適切に患者さんの診断や治療を行うことができ、ひいては患者さんの病気の早期発見や早期治療にもつながります。
※1 臨床検査室を施設内にもつ大きな病院の例
病院の臨床検査室では、さまざまな検査機器が設置され、日々多くの検査が行われている
血液や尿のように患者さんの身体から採取したサンプルである「検体」を使って、身体の状態を調べる検査を「検体検査」といいます。検体検査は、予防のための健康診断や、病気の診断、治療方針の決定、投薬の効果測定など、医療におけるさまざまな場面で行われています。患者さんの状態を迅速かつ正確に把握し、適切な診断・治療を行うために、検体検査は重要な役割を担っています。
予防から予後までさまざまな場面で行われる検体検査
わずかな血液にも、身体の状態や異常の原因を知るための膨大な情報が詰まっています。血液中の赤血球や白血球、血小板の数や大きさを測定し貧血や健康状態を調べる検査、出血のしやすさや固まりやすさを調べる検査、体内に入ってきた細菌やウイルスを撃退するためにできたタンパク質(抗体)を検出し感染症などの診断に用いる検査など、さまざまな種類があります。
血液検査の種類と分かる病気
1980年代後半、医療費の増加やAIDSなどの新興感染症の脅威を背景に、医療機関は臨床検査室の運営コスト削減や検査技師さんの安全性確保という重要な課題に直面していました。そこでシスメックスは、1990年、世界で初めて血球計数・白血球分類、骨髄での造血能力を調べる網赤血球測定から、異常な値の原因を調べるために必要な血液標本の作製までを完全自動化した搬送システムHSシリーズを開発しました。検体の搬送から測定前後の手作業工程を含む検査のワークフローを全自動化するこの搬送システムは、臨床検査室の効率性向上と血液を扱う際の感染リスク軽減を実現し、臨床検査室の課題解決に大きく貢献しました。
今回の記事では、皆さんにとって最も身近な検査の一つといえる血液検査について、その仕組みと役割、そして、血液検査を影で支える人々や検査機器についてご紹介しました。血液検査の重要性や皆さんの生活とのつながりを感じていただけたでしょうか。
採血のみで身体の状態を調べることができる血液検査。その可能性は、留まることを知りません。例えば、侵襲性が高く手術を伴う組織生検に代わって、がんなどの診断や治療の指標となる物質を血液から検出する検査や、わずかな血液から認知症の予兆を見つけるための検査など、その簡便さを生かして、よりよいヘルスケアジャーニー※2につなげるための技術開発が世界中で進められています。
シスメックスは今後も、血液検査におけるさらなるイノベーション創出により、検査の現場を支えるとともに、皆さんの健康に寄り添い続けます。血液の未知なる可能性を信じ、患者さんや医療現場へ新たな価値を提供するべく奮闘する従業員のストーリーを以下にてご紹介しています。是非ご覧ください。
世界を脅かす「薬剤耐性(AMR)」に、新たな検査技術で立ち向かう
タンパク測定技術を通じて医療の発展と人々の健康への貢献を目指す
※2 「ヘルスケアジャーニー」とは、シスメックスが提唱する概念であり、人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関などを含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるもの。シスメックスは、一人ひとりのヘルスケアジャーニーがより良いものになるよう、さまざまな協創を通じて新たな価値を提供し、社会にとって不可欠な存在として成長していくことを目指しています。「ヘルスケアジャーニー」はシスメックス株式会社の登録商標です。