ストーリー

“こころ”に向き合うヘルスケアへ ~大阪・関西万博でシスメックス社員が描いた50年後の未来~

——2075年、私たちは “いのち”をどのようなものとして捉えているのだろう?

シスメックスは、大阪・関西万博(以下、「万博」)において、ロボット工学の第一人者である大阪大学・石黒浩教授がプロデュースするシグネチャーパビリオン「いのちの未来」にシルバーパートナーとして協賛しています。「協賛企業には共に未来を描いてほしい」——そんな石黒教授の想いに共鳴し、シスメックスは50年後の社会といのちの在り方を描く共創活動に参加しました。
社内で立ち上げたプロジェクトには、部門や職種、世代の違いを越え、約50名の社員が自ら手を挙げて集結。3年にわたる対話と試行錯誤の末に、未来の“いのち”を支える3つのプロダクトのアイデアが生まれました。

本記事では、プロジェクトの中核を担った5人の社員の声を通して、その軌跡をたどります。

プロジェクトリーダー集合写真
左から:DX戦略推進本部 内藤 貴道、次世代医療事業開発室 足立 暁子、LS事業本部 小林 万祐子、Sysmex R&D Center Europe GmbH 齊藤 朋子、中央研究所 岡田 昌也

未来を描く、という挑戦 〜“からだ”だけでなく“こころ”が鍵に〜

初期の議論で早くも浮かび上がったのは、「未来のヘルスケアにおいて本当に必要なのは、こころへのアプローチではないか」という視点です。シスメックスのヘルスケアはこれまで主にからだを対象に展開してきました。
今回のプロジェクトでは、その枠を超えてこころのヘルスケアに着目し、抽象的で正解のない問いに向き合いながら、未来のいのちを支えるプロダクトの構想へと歩みを進めていきました。

齊藤 朋子
 齊藤:予防医療や治療技術が進化し、寿命が飛躍的に伸びた50年後の未来では、からだだけでなくこころのケアがますます重要になってくる。その共通認識がまず得られ、そこからは、「こころとは何か、こころとはどうあるとよいのか」という問いに何度も立ち返ることになりました。
普段よく知るメンバーとの議論だけでは、ここまで深くいのちに向き合うことはできなかったと思います。異なる視点を持つ仲間を尊重し、時にぶつかりながらも、納得がいくまで何度も議論を重ね、考え抜くプロセスこそが、未来を描く力になったと感じています。

3つの未来プロダクトに込めた想い

 実際のパビリオン内にも登場する、3つの未来プロダクト。
どのような話し合いからこれらのプロダクトが考案されたのか、議論を取りまとめたメンバーが紹介します。


「アナザーストーリー」~夢の中で、もう一つの人生を追体験~

アナザーストーリー
睡眠中に映画を見るように夢で様々な経験を得られ、こころの幅を拡げて鍛えながら、後悔のない最良の人生の選択・行動をサポートする。
足立 暁子
足立:現代の睡眠は、ただ睡眠欲に身を預ける受け身の状態。未来にはこの時間をもっと能動的に活用できるのではないかと考えました。夢を通じてポジティブな思考の習慣を育んだり、迷いの中で納得のいく選択を導くサポートができるよう設計されています。ただし、自身にとって心地よい夢だけでは、かえってこころの幅が狭くなる懸念もあったため、バッドエンドや失敗のストーリーもあえて取り入れることで、こころを鍛える効果を持たせました。
また、シスメックスらしさとして、
からだこころの両面を見つめる視点も取り入れ、ドーム内には、心拍や体温、細胞レベルの変化を細かくモニタリングし、最適な夢体験を提供する仕組みも備えています。

「カラコロスピーク」~言葉にならない思いを伝える~

   カラコロスピーク
からだ”に捉われない新たな形でのコミュニケーションを可能にするシステム。身体に取り付けたマイクロチップから投影されるホログラム型アバターを通じて、ユーザーのこころを他者へスムーズに伝えたり、内なる自分との対話を深めることができる。

岡田 昌也
 岡田:2075年の世界では、コミュニケーションがいっそう複雑になることが予想されます。バーチャルリアリティ(VR)や進化したモビリティによって、人と人との距離が縮まり、多様な価値観が共存する社会になると考えたためです。
「カラコロスピーク」は、そうした課題に対して、ユーザーの思考や感情を代弁し、こころと深く関わる「コミュニケーション」をサポートします。集団での会話や医師と患者さんの意思疎通など、緊張や言語の壁がある場面だけでなく、自分自身との対話に使うことで、思考の整理やストレスケアにもつながります。さらに、赤ちゃんや動物とすら会話できるかもしれない——そんな可能性が広がるプロダクトです。
私たちがこだわった「アバターがユーザーの思考を代弁する」という発想は、新しいコミュニケーションの形として、未来のこころのヘルスケアに貢献する可能性を秘めていると考えています。

「ビジョンダイアリー」~“もしも”を見比べて、人生の選択肢を拡げる~

   ビジョンダイアリー
からだとこころの測定データに基づき自分と家族のからだ、こころ、生活をシミュレーションするプロダクト。
将来への不安をやわらげ、人生の選択肢を拡げることで、自分らしい人生を後押しする。
小林 万祐子
小林:育休明けにこのプロジェクトに関わることになり、子どもと一緒に未来を語れる展示にしたいと思いました。からだとこころの測定データをもとに、将来の自分や家族の姿を絵日記のように複数パターンで提示し、前向きな選択を後押しするツールです。1つの正解を示すのではなく、いくつかの“もしも”を見比べることで、そこから自分の価値観や本音、自覚していない自分自身の可能性に気付けるように設計。あえて緻密な分析結果を見せすぎないことで、行動を自分で考え、選び取るプロセスを大切にしています。
私自身も、迷ったときに“もっと挑戦しても大丈夫”と背中を押してもらえるような使い方をしてみたいです。

「未来は自ら切り拓くもの」シスメックス社員50人の実感。

健康寿命の延伸が当たり前になった未来では、人々は病気を治すだけでなく、より良く生きることを求めるようになる。
そのとき、ヘルスケアの定義そのものが変わるかもしれません。

内藤 貴道

内藤:50年後の未来を描くという自由度の高さに、最初は戸惑いもありました。しかし、宇宙でのヘルスケアや夢の活用といった寄り道のような発想や、石黒教授・他企業との共創は、思考の幅を拡げる貴重な経験となりました。

50名のメンバーは、「未来は与えられるものではなく、自ら切り拓くもの」という実感を得ただけでなく、未来を構想するためのヒントやアイデア、多様な視点、そして部門・会社を越えたつながりそれらすべてが、これからの挑戦を支える大きな財産になったと感じています。
社員一人ひとりの意識や行動にも変化が生まれ、日々の業務の向き合い方にも確かな影響をもたらし始めています。こうした変化・経験の積み重ねが、これからのシスメックスの企業文化を形作っていくものと、信じています。
万博は、未来の社会課題を次世代に問いかける場でもあります。ぜひ、シグネチャーパビリオン「いのちの未来」を体験し、自ら未来を考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。

このプロジェクトで得た経験はかけがえのないものであり、未来への大きな一歩につながります。私たちはこれからも、ヘルスケアの進化に向けて挑戦を続けていきます。

議論風景_1
議論風景_2
議論風景_3

本ストーリーで紹介した3つの未来プロダクトは、当社が実際に開発・発売を予定しているものではありません。

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