社会

人材の育成 —エンプロイージャーニー—

グローバルHRポリシー

グローバルHRポリシー
 シスメックスでは、持続的な企業価値向上とエンゲージメントの高い組織をつくるうえで、従業員一人ひとりが充実したキャリアを実現できることが重要と考えています。採用から退職、セカンドキャリアまでの一連の流れを「エンプロイージャーニー」とし、多様な人材が自らのキャリアを構築し、主体的かつ継続的に学ぶことを支援しています。
 キャリア自律を支援する基盤として、グループ全体でジョブ型人事制度を採用し、明確化された職務や人材要件に基づき、さまざまな施策を展開しています。これら一連の人材マネジメントは、「グローバルHRポリシー」を基本方針としています。

多様な人材の獲得

 シスメックス株式会社では、イノベーションの源泉は多様な人材であるとの考えから、さまざまな経験や価値観を持った人材の採用を行っています。「いつでも、どこでも、だれでも」をポリシーに、国籍・人種・性別・年齢・職歴・障がいの有無を問わず、人物本位で採用を実施しています。
 新卒採用、キャリア採用ともに、職種別/ポジション別に募集を行っており、個々の専門性や志向、働き方の希望に基づき応募を受け付けています。また、新卒採用では海外大学からの直接採用や日本に留学中の外国籍学生の採用実績※1をモニタリングし、ジェンダー別の採用目標※2を設定し、多様な人材の獲得を積極的に推進しています。
 成長戦略を支える人材の獲得と育成は、人的資本戦略の重要テーマであり、付加価値生産性の持続的向上(2024年度実績:15,042円/時間)と総労働力コストのバランスを考慮し、人的資本への投資を進めています。

  • 1 新卒の外国籍直接採用比率:2024年度実績 9.9%
  • 2 新卒の女性採用比率:2024年度実績43.0% 2025年度目標:40%

個・組織のニーズのマッチングに基づく配置

 シスメックス株式会社では、一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援するため、従業員と組織のニーズのマッチングに基づき、配属部門を決定しています。新入社員の配属では、本人と部門の希望に基づいたマッチングアルゴリズムを用いて、最適な配属部門を決定する仕組みを採用しています。これらの施策により、2024年度の新卒採用者における3年間の離職率(2021年度入社者の3年未満での離職率)は16.7%となりました。また、自発的離職率は目標の3.0%未満に対して、2024年度は1.8%にとどまりました。

チャレンジを促し成果をたたえる評価・表彰

 シスメックス株式会社では、変化の激しい時代において、社内外の環境変化にアジャイルな対応を実現するために、CPM(Continuous Performance Management)の考えを取り入れた評価制度を導入しています。この制度では、期初の目標にこだわることなく、変化に応じて目標や施策を柔軟に見直し、加点的な評価を行うことで、チャレンジを促す仕組みをつくっています。組織風土や人材育成、個人の行動発揮に関する項目をはじめ、チーム業績についても評価項目として取り入れており、事業貢献と組織・個人の成長をともに実現することを目指しています。また、上司と部下の間では、年間を通じて定期的に1 on 1ミーティングを行い、目標設定や評価だけでなく、日々の業務やキャリア形成などについて話すことで、相互の信頼構築と部下の成長をサポートしています。年2回の企業風土調査では「リーダーシップへの信頼度」を測定し、リーダー育成と組織風土の改善を進めています。
 さらに、組織・グループをたたえる表彰制度「グループCEOアワード」では、毎年、グループ企業理念「Sysmex Way」を実践し、企業価値向上や社会課題の解決への貢献が認められた個人とグループを表彰しています。また、新たな長期経営戦略の制定および企業理念のリファインにともない、2023年度より新たなグループ表彰制度として「チャレンジ&安心アワード」がスタートしました。このアワードは、特許・アイデア部門、Eco Social部門、販売・サービス部門、品質部門、オペレーション部門の5部門での優れた貢献を表彰します。
 また、研究開発者のモチベーション向上と知的財産に対する意識を高めることを目的とした「優秀特許賞」「パテントマイスター」「出願記念賞」を設けています。

個々に応じた育成プログラム

 シスメックス株式会社では、多様な働き方や価値観を尊重し、個々のキャリアに基づいたビジネススキルやキャリアデザインを構築するための教育プログラムを多数提供しています。
 自宅からも参加が可能なオンライン講座も充実させており、国境を超えて参加できるプログラムも用意しています。2024年度の研修プログラムへの従業員参加率は100%を実現し、個々の成長に加え、スキル向上による生産性向上、受講生間の交流による相互理解の促進と部門横断ネットワーク形成などにつながっています。(2024年度の研修投資82,400円/人)
 企業風土調査では、「成長のための機会提供がある」という項目で、68%が好意的な回答をしており、育成プログラムに対して多くの従業員から支持を得ています。また、年齢や階層を問わず持続的な学びを支援しており、多様な働き方を推進するための「スマートワーク」制度では、勤務時間内の1日15分の自己学習を推奨しています。2024年度は、従業員一人当たりの平均教育時間は53.4時間となりました。

次世代リーダー育成

グローバルオンボーディング研修
グローバルオンボーディング研修

 シスメックスは、持続的な企業価値向上のために次世代リーダーの開発を人的資本戦略の重要なテーマと考えています。入社時や新規登用時には、オンボーディング研修を通じて早期の活躍を支援しています。また、ジョブ型人事制度導入後、ポジションに求められる役割とのギャップを測るタレントレビューを実施し、タレントプールや後継者の充足度を定期的にモニタリングしています。
 後継者候補となった人材については、個々の課題に基づいた育成計画を策定し、必要なリーダーシップ開発プログラムを提供しています。特に、後継者としてReady(準備完了)のステータスの従業員を対象とした選抜型育成プログラムにおいては、受講を通じて高い視点、視座で考える機会を提供し、上位ポジションへの登用を促進しています。2024年度のオンボーディング研修には延べ611名、選抜型研修(後継候補者)には延べ163名が参加しました。また、グローバルリーダー育成を目的として、地域・国境を越えた研修を実施しています。

  • 新入社員をはじめ、中途採用社員など新しく組織に加わった従業員の企業理解を促進し、早期に企業において活躍する人材として育成するための研修

キャリアデザイン支援

 シスメックスは、新たなキャリアの可能性を広げる機会として、自律的なキャリアデザインをサポートしています。例えば、自身のキャリアがどの段階にあるのか、これまでの職務経験などをもとにスキルの棚卸しや価値観を見つめ直すことを目的としたキャリアデザインプログラムを実施しています。本人の希望でキャリアチェンジを行う場合、一定のトライアル期間を設け、その職務や組織で活躍できるかを見極めたうえで、正式配属を決定するアプレンティス制度を導入しています。
 さらに、ジョブ型人事制度をグループ関係会社にも導入したことで、共通のグレードに基づき、部門間やグループ会社間で従業員の職務内容やスキルレベルを横断的に比較できるようになりました。これにより、本人の希望地域や専門性をマッチングさせることで、キャリア探索や自立期、確立期だけでなく、リスキリングによる学びや経験を生かしたセカンドキャリアの構築にも有効に作用しています。

デジタル人材の育成(クロスリスキリング)

 シスメックスでは、2023年度から「デジタル人材育成プログラム」を提供し、全従業員のデジタルリテラシー向上を支援しています。本プログラムは、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」をベースに、当社向けのデジタル人材類型とレベル階層を定義し、それぞれの組み合わせに適した育成カリキュラムを提供しています。また、クロスリスキリング(「これまでに培ってきた経験や知見」×「デジタル技術や知識」)という考え方を提唱し、企業活動における従業員の活躍の場や選択肢を広げています。さらに、学びの先にある実業務での課題解決や社会貢献などの具体的な成果につなげることを目指しています。
 本プログラムの特徴の一つは、「デジタルルーキー」というデジタル人材類型を導入し、従業員が特定の類型に縛られずに、広くデジタルリテラシーを学び始められるカリキュラムを提供している点です。そのうえで、本人の志向やスキルに応じて、専門性を生かせるデジタル人材類型を選択できる仕組みも整備しています。さらに、従業員同士が教え合い、助け合うコミュニティを開設し、デジタルリテラシーやスキル向上を目的とした相互研鑽の文化づくりにも取り組んでいます。2024年度までに、延べ約5,000名がデジタル人材育成プログラムに参加し、階層別では、初級で約500名、中級で190名以上が社内認定を取得しました。また、市民開発者の育成にも注力しており、顧客価値の創出や業務の生産性向上に寄与するアプリケーションが、これまでに約180件開発されています。
 さらに、2023年度からは一般社団法人 数理人材育成協会と連携し、AI人材育成プログラムを開講しています。大学教授やデータサイエンティストの指導・伴走のもと、実践的なAIモデルの作成やプロジェクト推進力の習得を目指しています。
 シスメックスは、デジタルリテラシーを学んだ従業員と高い専門性を身につけた従業員が共通言語を持ち、企業活動のさまざまな場面でデジタルトランスフォーメーション(DX)への挑戦が自然に行われる環境整備を進めています。

  • IT専門職ではないビジネス部門の社員が、ローコード/ノーコードツールを活用して自ら業務アプリを開発し、現場主導で DX を推進する取り組みを市民開発といい、その開発者を市民開発者と呼ぶ。

研究開発者向けの教育

 シスメックスでは、研究開発者を対象に「シスメックス・イノベーションフォーラム」を40年以上にわたり開催しています。先進的な研究開発活動の成果を共有し、創造性を育むことを目的としており、毎年世界中から1,000名以上の研究開発者が集まります。この取り組みは技術志向である当社の技術基盤を支え、ヘルスケアの進化をデザインする新製品開発を推進しています。
 また、研究開発者向けの教育プログラムとして、自社の独自技術の継承と新たな技術の獲得を行う専門技術者教育プログラム、イノベーションを通じた医療課題解決を探求する管理専門職層教育プログラム、国際標準のプロジェクトマネジメント手法を学ぶ教育プログラムなど、幅広いカリキュラムを提供し、研究開発者一人ひとりの育成に注力しています。さらに、研究開発部門では個々の研究開発者の成長を組織全体の力につなげる「組織の学び」にも注力しています。研究開発活動で得られた知見や経験を、定期的な対話や共有の場を通じて組織の学びとして蓄積することで、研究開発活動の継続的な改善と進化を支える基盤となっています。

Sysmex EMEAキャンパス

EMEAキャンパス

 EMEA地域では、欧州、中東、アフリカ諸国の全従業員を対象に、オンライン/オフラインでさまざまな研修プログラムを提供するトレーニングスペース「EMEAキャンパス」を開設しています。EMEAキャンパスでは、一般的なビジネススキルから技術的なものまで、テーマに沿って講義やワークショップを企画し、将来のリーダー育成やスキルアップ、社内ネットワークづくりを目指します。また、管理職向けには、チームマネジメントに必要なスキルの習熟を目的としたカスタマイズ型リーダーシップ研修「Ready to lead」をはじめ、人材開発やコーチング、リバースメンタリングなど幅広いプログラムを提供し、リーダーシップ発揮に必要なスキル習得の支援に注力しています。

  • 欧州、中東、アフリカ地域

その他人材育成プログラム

会社名 プログラム名・施策名 目的・概要
シスメックス
株式会社
ものづくりプロフェッショナル 育成活動 生産改革活動の一環として、ものづくりの人材育成を推進。新人育成とともに、次世代のものづくりを指導できる人材の育成、多能工育成のための技能訓練、ものづくりに必要な専門知識教育などを実施
DX リテラシー教育 AIなどの新しい技術を生かし、データ活用方法を考える力、業務効率化・イノベーションの実行力を鍛える、DXリテラシー研修を実施
シスメックス
アメリカ
Sysmex University アメリカ、カナダ、ラテンアメリカの全従業員を対象とした、対面とオンラインを組み合わせた研修プログラム。リーダーシップスキルやプロジェクトマネジメントをはじめとしたビジネススキル、専門スキル、メンタリングなど、多様なコンテンツを提供
Sysmex Managerial Excellence Development 新任管理職などを対象とした半年間の選抜型研修。シスメックスの経営の役割と責任に関する洞察力など、マネジメントスキルの強化を図る
リーダーシップ サークル 次世代リーダーを対象とした約1週間の集中型研修
シスメックス
ヨーロッパ
 
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのプログラムを提供。専門知識の向上とカスタマートレーニングのトレーナーを育成することを目的とする
シスメックス
上海
Sysmex Shanghai University 全従業員を対象としたオンライン・トレーニングで、従業員の成長支援を目的に2019年度より開始
シスメックス
アジア・パシフィック
LinkedIn ラーニング 全従業員対象のSNS(LinkedIn)を利用したオンライン・トレーニングを約100コース提供。マネジメント、リーダーシップ、クリティカル・シンキング、ビジネス分析力、データ分析力などのスキル習得・強化を図る
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのオンライン・トレーニングプログラム

最新テクノロジーを活用したタレントマネジメント

 シスメックスでは、グループ全体の人材情報を一元管理し、デジタルトランスフォーメーション(DX)や働きがいの創出に取り組んでいます。情報漏えいを防止するための施策として、システムによるデータマネジメント機能に加え、グローバルでのデータ管理規則を設け、データアクセスの制限を行っています。これにより、安全かつタイムリーにデータを活用できる仕組みを構築しています。具体的には、リモートワークやオンライン研修の開催など、業務内容や個人の生活スタイルにあわせて柔軟に働くことができる環境の整備、マッチングアルゴリズムを利用した自律的なキャリア形成、従業員エンゲージメントサーベイのリアルタイムでのフィードバックなど、最新のテクノロジーを活用してタレントマネジメントを推進しています。

優れた人的資本経営・情報開示に取り組む企業として「人的資本経営品質 2024(ゴールド)」に選定

人的資本経営品質2024
 シスメックス株式会社は、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム、HR総研、MS&ADインターリスク総研株式会社、一般社団法人人的資本と企業価値向上研究会が共同で企画・実施した「人的資本調査2024」において、企業価値向上につながる人的資本の取り組みを高く評価され、「人的資本経営品質2024(ゴールド)」に選定されました。