ストーリー

世界各国における医療アクセス改善と人材育成の取り組み

~医療の基盤を支え、生活者に安心を届ける~

世界には、医療環境や医療制度など保健システムの未整備により、適切な医療を受けることが困難な地域が存在します。シスメックスは、グローバルに事業を展開する企業が果たすべき責務の1つとして、1人でも多くの方が適切な医療を受けられるよう、医療アクセスの改善に向けた取り組みを進めています。

開発途上国・新興国の医療水準向上を目指して

体の不調を感じたら、病院に行って適切な診断や治療を受ける。そんな医療の「当たり前」が確立していない国が、世界にはまだ多く存在します。シスメックスはこれまで培ってきた検査・診断技術や学術的ノウハウを土台に、各国において医療人材の育成や学術支援活動を展開し、社会課題の1つである医療アクセスの改善に取り組んでいます。
 
アフリカでは、南アフリカ、ガーナ、ブルキナファソ、ナイジェリア、エジプトの5カ国に現地法人を設立し、約50カ国へ販売・サービス&サポートを展開。販売代理店や医療従事者などを対象とした技術トレーニングや政府機関、研究機関との連携などを幅広く行うことで、現地の医療水準の向上を目指しています。
 
また、アジアにおいては中国、モンゴル、カンボジア、ミャンマー、タイ、フィリピンの政府機関や基幹病院、大学などと契約を締結し、臨床検査の標準化・質向上に向けた学術支援活動を行っています。
ここからは実際の事例を取り上げ、各国における取り組みを詳しくご紹介します。

<事例1:ナミビアでの臨床検査室の品質管理技術向上支援プログラム>
「人」を育て、臨床検査の管理技術向上を図る
 
ナミビアは、豊富な鉱物資源を背景とする経済基盤と民主的な政治運営により、サブサハラ地域※1の中でも高所得国とされています。しかし、医師数は人口1万人に対し5.9人※2と、医療人材の不足とともに医療の質確保が課題です。また、血液や尿などを採取して検査する検体検査は病気の診断や治療に不可欠であるものの、環境が整備されていない中での検査実施により、患者さんへ適切な検査結果を提供できないという問題があります。
※1 サブサハラ地域:アフリカ大陸のサハラ砂漠よりも南に位置する地域の総称。
※2 出典:世界保健機構(WHO)報告書「Global Health Observatory data repository」(2017年)
 (参考)1万人当たり医師数(2018年) 日本:24.7人、アメリカ合衆国:26人
 
こうした背景から、ナミビア政府は公立医療機関の品質改善対策を展開する中で、臨床検査分野においては、臨床検査室に特化した品質マネジメントシステム規格ISO15189認証取得による品質改善施策を実施しています。シスメックスは、ナミビアの政府から臨床検査事業の運営管理を委託されているNamibia Institute of Pathologyの管轄下の3施設に対し、国際基準に適合した臨床検査室の品質管理システム運用マニュアル「Sysmex Quality Guidance Manual」を用いたメンターシップ※3プログラムを提供する事業を国際協力機構(JICA)と官民連携で推進。アフリカ地域ではザンビア、ジンバブエでも同様の取り組みを通じて臨床検査室の品質管理技術向上支援活動を展開しており、将来的には各国での実績を布石に、近隣諸国への水平展開を目指しています。
※3 メンターシップ:人を単に管理するという発想ではなく、組織の方向性や価値観を明確にした上で、事業に関わる全ての人の成長と成功を追求し、人を動機付け、能力を向上させるように導く姿勢やスキル、また、その仕組みによって組織を活性化していくマネジメントのこと。

~プログラム受講者の声~
検査室の品質管理向上につながる有意義なトレーニング
メンターシッププログラムでは、私たちスタッフに対して、検査室の品質向上に向けたトレーニングが行われました。国際基準に適合した臨床検査室の品質管理システムを学べることは非常に有意義で、検査の目的や有用性を再認識することができました。このプログラムを通じて、臨床検査の質向上が図れると実感しています。

<事例2:ブルキナファソでの血液検査機会と雇用の創出>
医療インフラの整備に貢献し早期発見・早期治療に寄与
 
西アフリカに位置するブルキナファソは、内陸国で資源に乏しく、産業基盤が脆弱で、生活の豊かさを表す人間開発指数では189カ国中182位※4に位置します。
※4 出典:国連開発計画(UNDP)「人間開発報告書2020」
 
医療インフラの整備が追い付かず、貧困により基本的な医療サービスを受けられない人が多い現状に対し、シスメックスはブルキナファソの保健省と連携し、農村地域や遠隔地域での血液検査機会と雇用の創出を図るプロジェクトを展開しています。
 
これまでに約100台の血液検査装置を各施設に設置し、650名以上の臨床検査技師やエンジニア、小児科医に対し役割に応じたトレーニングを行いました。これにより地方施設でも年間約120万回の血液検査が可能となり、早期発見・早期治療開始に貢献。また、装置導入により医療従事者の雇用が創出されています。
 
政府や医療従事者から高く評価されたこの取り組みは、2019年にベルリンで開催されたG20 Compact with Africaにて、官民連携の事例として紹介されました。シスメックスは、アフリカ全土で各国保健省や世界保健機構(WHO)など多くの政府機関や国際機関と連携し、各地の医療アクセス向上に取り組んでいます。
 

  
~現地従業員の声~
人々の暮らしを支えるシスメックスの仕事
ブルキナファソにおいて、一般市民はテロ行為や武装組織と国軍の戦闘など危険と隣り合わせの⽣活を余儀なくされています。私たちのサービスやサポートを安全にかつ安定的に提供し続けるために、医療機関から修理対応依頼や試薬・消耗品の注文が⼊ると周辺の情勢を確認し、警察や軍隊などの治安部隊と綿密に連携を取っています。こうした厳しい環境の中で、シスメックスが果たしている役割は非常に⼤きいと感じます。
 
 
Sysmex Partec Burkina Faso SARL(ブルキナファソ)
Managing Director
Professor Yves Traore
<事例3:モンゴル・中国での学術支援活動>
現地医療従事者に技術的・学術的ノウハウを提供
 
シスメックスは、アジア各国においても臨床検査に関する学術支援活動を展開しています。
 
モンゴルでは、近年の経済発展に伴い医療インフラ整備が進んでいますが、その中で課題となっているのが感染症検査の精度向上です。シスメックスは2016年に現地の臨床検査技師に対し、感染症検査において重要な役割を担う血液形態に関する技術的、学術的ノウハウを提供する活動を開始しました。また、国家的に実施される血液形態検査の外部精度管理※5の仕組みの構築・運営をサポートし、モンゴルの医療水準の向上に貢献しています。このほか、ミャンマーおよびカンボジアにおいては、血球計数検査の外部精度管理において同様の活動を展開し、臨床検査の質向上を支援しています。
※5 外部精度管理:複数の臨床検査室に同一の試料(人工的に作られた血液など)を配付、測定結果を回収し、統計的手法を用いて解析することにより、各検査室の測定結果の精度を評価する手法のこと。結果は各検査室へフィードバックされ、検査の質向上に役立てられる。



シスメックスは、臨床検査において不可欠である、正確なデータを安定的に提供するための環境づくりもサポートしています。中国では、血球計数検査の国家の標準器※6として、シスメックスの血球計数標準器が採用されています。また、血液検査・基準測定操作法の技術移管・技術交流、臨床検査国家ガイドラインの策定支援とともに、2019年度からは最新型の標準器の貸与を実施。中国における血球計数検査の精度向上および検査の標準化に貢献しています。
※6 標準器:血球計数検査の国家標準の値を決めるための装置。

医療課題解決を通じてSDGs達成に貢献

今回ご紹介した活動は、臨床検査の質向上と医療人材のスキルアップなどによる医療アクセスの改善を通じて各国の医療水準向上など医療課題の解決に貢献する取り組みです。
また、SDGs(持続可能な開発目標)の⽬標3:「すべての⼈に健康と福祉を」、⽬標9:「産業と技術⾰新の基盤をつくろう」、目標17:「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に密接に結びついています。
 
事業活動を通じて社会課題を解決することは、シスメックスの重要な使命であり、医療従事者や患者さんの安心やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上につながります。シスメックスは今後も、開発途上国・新興国における医療アクセスの改善を推進することで、世界中の人々に安心をお届けしていきます。
  • ストーリーに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
    その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。

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