松山赤十字病院 腎臓内科/血液浄化センターの医師・看護師の皆さん
医師の視点から
地域完結型医療の実現に向けた
デジタル技術への期待
上村 太朗 先生
松山赤十字病院
腎臓内科部長
総合内科専門医
腎臓内科専門医
透析専門医
腹膜透析認定医
——松山赤十字病院の腎臓内科の特色、透析治療で特に力を入れている点について教えてください。
松山赤十字病院は、愛媛県松山市を中心とした地域医療の中核を担う総合病院です。腎臓内科においては、地域のクリニックや在宅ケア施設の要望に応じて、初期の腎臓病の患者さんから腎不全、透析になった患者さんの合併症まで幅広く診療しています。中でも透析治療は、高齢の患者さんや合併症を抱える患者さんが増加傾向にあります。専門の看護師の指導のもとで、早期から腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)について情報提供を行い、患者さんがご自分の意志で、ご自身の生活環境や仕事の状況、信念や価値観にあった最適な治療を選択できるようサポートすることが私たちの重要な役割だと考えています。
上村 太朗 先生
松山赤十字病院
腎臓内科部長
総合内科専門医 腎臓内科専門医 透析専門医
腹膜透析認定医
——地域医療における現状の課題についての考えをお聞かせください。
病気や障害を抱えていても、住み慣れた地域で患者さんを包括的にケアする地域医療の実現が国の目標として掲げられています。透析治療においては、在宅で行うことのできる腹膜透析は国の進める地域ケアに非常にマッチした治療ですし、医学的な観点からも、移動能力の低下した高齢の方やさまざまな合併症を抱える方に適した治療法です。
この腹膜透析を積極的に推進するためには、地域全体の専門的な診療レベルの向上・腹膜透析への対応力強化が急務です。これらの課題に対しては、患者さんのケアに関わるさまざまな医療従事者間での十分な情報・知見の共有が効率的に行われる仕組みが重要だと考えます。
——病院と地域との連携が強化されたことで、患者さんのケアにどのような変化がありましたか?
当院では、腹膜透析を選択された患者さんのケアにおいて、積極的に訪問看護師さんのサポートをいただいています。数年前、シスメックスの担当者から看看連携アプリのアイデアを聞き、デジタルの力で病院と地域医療の連携をより密にしていく考えが合致して、アプリを院内に導入しました。臨床現場での使いやすさなど現場のリアルな声をフィードバックしています。
カレイドタッチを導入してから、病院の医師と看護師、地域の訪問看護師さんがリアルタイムに情報共有できるため、従来の一対一の電話でのコミュニケーションから、一対多数で意思決定ができるようになりました。電話による業務の中断が減ったことで病院看護師の時間外労働が減り、結果として、患者さんのケアや説明にかける時間が増えるなど、当院の多くの看護師がポジティブな変化を感じています。また、訪問看護師さんから自宅での状況を画像で送ってもらうことで、来院前に合併症のリスクを判断して適切な指示を行えるなど、病院と地域の連携が効率化・活性化されたことで、より良いケアにつながっています。
さらにカレイドタッチは、地域の医療従事者への教育ツールという意味合いでも活用できると考えています。専門的な知識・経験を持った医療従事者が、訪問看護師さんからの質問や報告にコメントを返すことの繰り返しにより、地域の訪問看護師さんたちが腹膜透析に対する理解・専門性を深めていただくことにつながると思います。
——デジタル技術に対する今後の期待や要望はありますか?
“質の高い医療”の基本は、医療従事者と患者さんとが直接接することで提供されていくものだと思うんですね。しかしながら、高齢化に伴う患者さんの移動能力の低下や、全国的な医師の偏在・看護師不足などの課題はあります。その足りない部分をデジタル技術によって補うことで、医療従事者と患者さんと接する時間を確保することが、いま、私が思い描いている一つの理想の地域医療の姿です。
また基幹病院として、地域のクリニックや訪問看護ステーションに情報を発信することで、地域の専門的な診療レベルを底上げしていくサポートができればと思っています。シスメックスとディピューラの皆さんには、今後も実際の医療現場のニーズ、臨床情報を積極的に取り入れて、より多くの地域で使いやすいアプリに進化させていくことを期待しています。