環境

事業活動における環境負荷低減

温室効果ガスの排出量削減

事業所の温室効果ガス排出量の削減活動

 シスメックスでは、直接的または間接的に発生する温室効果ガスの排出量を削減するため、高効率な空調システムや LED照明、人感センサー、需要電力を計測・監視するデマンド制御など、省エネルギーを実現するための設備の導入を進めています。
 2023年度には、国内試薬生産工場、研究開発拠点など、国内主要施設の全電力を再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えました。また、グループの基幹工場の一つであるシスメックス RA は、2025年4月の稼働に向け拡張を進めている新工場の建物について、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS※1)でネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB※2)の認証を取得しました。
 シスメックス ヨーロッパの試薬生産工場では、太陽光パネルの設置に加え、氷蓄熱空調システム※3を導入し、試薬製造に必要なエネルギーの約35%を補っています。その他EMEA※4、米州をはじめとした各拠点で再生可能エネルギー由来の電力採用を進めています。
 シスメックス アメリカでは、本社サイトのLEED認証※5取得に向け、部門横断の「グリーンチーム」を結成し、環境活動を推進しています。電気自動車の充電ポートの設置やLED照明の改善、太陽光パネルの設置など、認定に向けてさまざまな取り組みを継続して行っています。

  • 1 BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System):建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)に基づく建築物の省エネ性能表示制度
  • 2 ZEB(Net Zero Energy Building) : 高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化(省エネ)を実現したうえで、再生可能エネルギーを導入することにより(創エネ)、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した建築物のこと
  • 3 氷を利用して熱エネルギーを貯蔵する技術
  • 4 欧州、中東、アフリカ地域
  • 5 水利用効率、エネルギー使用の最適化、材料の省資源化、室内における空気質環境を評価するなど、建物の環境負荷低減と利用者の健康の観点から、多角的に建物の環境性能を評価する認証制度
  • 新工場の外観イメージ(シスメックスRA)
    新工場の外観イメージ(シスメックスRA)
  • BELSに基づくZEB認証プレート

各事業所の主な取り組み

取り組み 会社名 内容
設備などの高効率化 シスメックス株式会社 高効率型の空調およびLED照明への切替
生産改革による生産性向上
シスメックスCNA 全照明のLED化
シスメックス アメリカ 全照明のLED化
シスメックス ヨーロッパ 主要な試薬充填室の照明のLED化
人感センサーの採用
シスメックス
アジア・パシフィック
工場と倉庫の照明のLED化
エアコンプレッサ未使用時は機器を休止させ節電する制御盤を導入
シスメックス インディア 工場内照明のLED化
済南シスメックス 天然ガスボイラーの使用(石油ボイラーからの切り替え)
冬季暖房と純水原水加熱のためのガスボイラーを空気熱源ヒートポンプに切り替え
シスメックス無錫 空調温度の制限設定による節電
再生可能エネルギーなどの導入 シスメックス株式会社 太陽光パネルの設置
自然光採り入れによる節電(アイ スクエア)
再生可能エネルギー由来の電力使用
シスメックス アメリカ
シスメックス リージェンツ・アメリカ

再生可能エネルギー由来の電力使用
カーボンニュートラルの天然ガスに100%切り替え

シスメックス ヨーロッパ 太陽光パネルの設置
再生可能エネルギー由来の電力使用(全電力)
シスメックスUK 太陽光パネルの設置
済南シスメックス 太陽光パネルの設置
従業員への啓発 シスメックス ヨーロッパ 出張時の電車利用に対するインセンティブ付与、カーシェアリング社内サイトの設置、通勤時の自転車提供
シスメックス マレーシア 通勤時にハイブリッド車を使用している従業員にインセンティブを付与
シスメックス インディア 通勤時に利用している従業員の自家用車はすべてPUC証明を受けたものであることを確認
シスメックス ブラジル 社用車燃料のバイオ燃料への切り替え
  • Pollution Under Controlの略で、車からの排出ガスが公害規制基準値以下であることを証明するもの。

社用車のCO2排出量削減

 シスメックス株式会社では、約400台ある国内の社用車の燃料消費量を抑えCO2排出量を削減するため、全社用車にドラレコ型テレマティクスを搭載し、各車両のエコドライブ状況、法令遵守などの可視化を行い、運転の質の見える化を行っています。また、全従業員を対象としたエコドライブ研修を実施し、ドライバー一人ひとりの環境に対する意識の向上を図っています。これらの活動が評価され、交通エコロジー・モビリティ財団主催「2023年度エコドライブ活動コンクール」で優秀賞を受賞しました。低燃費車への切り替えも進めており、2023年度は全体の約50%をハイブリッドカーへ切り替えました。
 シスメックス ブラジルでは、社用車の燃料をサトウキビ由来のバイオ燃料に切り替え、シスメックスUKでは、ディーゼル車の撤廃と全車両のハイブリッドカーへの入れ替えを進めており、事業所内に充電ポイントを設置しています。

  • 充電ポイント(シスメックスUK)
    充電ポイント(シスメックスUK)
  • エコドライブ活動コンクール授賞式
    エコドライブ活動コンクール授賞式

水資源の有効利用

水使用量の削減

 シスメックスでは、試薬生産において水を原料として使用するなど、事業活動の中で上水や地下水を使用しています。そのため、水使用量の削減を重要な課題の一つと位置付け、シスメックス・エコビジョン2033で水使用量の削減目標を設定し、試薬生産工場での水の使用効率を高めるなどの取り組みを進めています。
 試薬生産工場である小野工場では、従来、試薬製品製造後に製造ラインである配管内の一部に製品液を残したまま洗浄を行っていましたが、製造プロセスの見直しを行い、配管内に残り廃液となっていた製品液を製品化する技術を獲得しました。この取り組みにより、廃棄ロスの改善に加え、水使用量の削減、排液による環境負荷低減を実現しました。

各事業所の主な取り組み

会社名 取り組み
シスメックス株式会社
  • 各工場で生産効率の改善を進めることにより、水使用量を削減
  • バイオ診断薬拠点では、井戸から取水し緑化用水、トイレ用水として使用
シスメックス
アジア・パシフィック
  • 超純水プラントを改良し、工場が稼働していない時間帯を利用してRO水(純水)をリサイクル
  • 精製水製造設備の精製効率モニタリングによる水使用量削減
  • 試薬製造後の製造設備洗浄用水の削減
シスメックス
インディア
  • 生産工程で生じた水をリサイクルし、灌漑用水として活用
  • 敷地外への排水ゼロを目指すゼロリキッドディスチャージシステムを新工場に導入
シスメックス
ブラジル
  • 生産工程で生じた水をリサイクルし、生活用水として活用
  • 24時間稼働していた精製水製造設備の洗浄システムを平日のみの稼働に変更
シスメックス無錫
  • 水消費量の削減目標を定め、環境・安全衛生専任者を設置し、環境・安全衛生の定期監査を実施
  • 水質汚染リスクの低減と排水の再生および再利用の観点から、産業排水処理に使用される戦略的な廃水処理ソリューション
  • インド新生産拠点
    インド新生産拠点

水リスクの評価

 シスメックスでは、水ストレスに関するリスク評価を行っています。WRI(世界資源研究所)のアセスメントツール Aqueductを用いて分析し、試薬生産拠点がある中国、ブラジル、インドが相対的に水ストレスの高い地域であることが分かりました。現在のところ各試薬生産拠点において水リスクは顕在化していませんが、現地と連携してモニタリングを継続するとともに、生産工程における水使用の効率化や安全在庫の確保による供給リスクの低減など、リスク低減に向けた施策を展開しています。

排水管理・処理

 シスメックスでは水質の保全を重視し、化学物質を扱う開発拠点や工場からの排水で河川や地下水に影響が及ばないように独自の排出基準を設定し、管理しています。

各事業所の主な取り組み

会社名 方法
シスメックス株式会社
  • 診断薬生産工場の小野工場でBOD(生物化学的酸素要求量)の基準値を超えた場合にアラーム(警報)を発出するシステムを導入し、有機物を含む廃液の流出を未然防止
シスメックスRA
  • 廃液処理装置を導入し、感染性廃液を加熱滅菌で無害化して直接下水へ排出
シスメックス
アメリカ
  • 排水処理システムを導入し、試薬製造時に発生する廃液からホウ素含有物を除去
シスメックス
アジア・パシフィック
  • 排水処理システムを導入し、試薬製造時に発生する廃液を下水道に排出する前に浄化
済南シスメックス
  • 生産過程で発生した廃ドラム缶や廃紙などのリサイクル可能な廃棄物をリサイクルと適切処理のために第三者機関に委託

生物多様性との関わり

自然との接点と生物多様性の保護

 シスメックスでは、事業活動を行うにあたり地球上の生物から多くの恩恵を受けています。国連や金融機関により開発されたENCOREというツールを用いて簡易リスク分析を実施したところ、製造プロセスでの水への依存度と、水質・土壌への影響度が相対的に大きいことが示唆されました。今後はこの結果をもとにリスクと機会を特定しその対応を進めます。

森林保全活動

HITADO植樹活動(1300本を植樹)
HITADO植樹活動(1300本を植樹)

 シスメックス株式会社では、地域の水源涵養に寄与する森林の保全を重要な社会的責任の一つと位置付けるとともに、2013年より、試薬生産工場が立地する兵庫県小野市にある「かわい快適の森」の一部を借り受け、「シスメックスの森」として、植樹や下草刈り、間伐などにより森林保全を継続して行っています。
 また、ドイツにあるグループ会社HITADOでは、2021年度より地域で行われている森林保全活動「Waldlokal」プロジェクトに参加し、従業員ボランティアによる植樹活動や寄付を通じて、地域の森づくりを支援しています。

廃棄物の管理とリサイクル

廃棄物量の削減と安定したリサイクル率の維持

段ボール廃棄量
 シスメックスでは、廃棄物の削減やリサイクル率の向上に継続的に取り組んでいます。研究開発拠点のテクノパークでは、2023年度より発泡スチロールの溶融機と機密紙用大型シュレッダーを導入しました。この設備を活用し、事業所内で発生する発泡スチロールを再生プラスチック原料へ変換し、有価物として売却しています。また、大型シュレッダーで細かくした紙くずをトイレットペーパーに加工し再利用しています。これにより廃棄物の量を大幅に削減することができています。
 国内試薬生産工場では、取引先と連携した取り組みを推進しており、段ボールのリユースや過剰包装の見直しをすることで納品用梱包材の廃棄削減を実現しました。2023年度のダンボール廃棄量は、前年と比較し約15トン削減しました。2025年度までにダンボール廃棄量ゼロを目指します。
 国内機器生産工場の加古川工場では、社員食堂での生ごみの廃棄量を減らすため、専用の処理機を利用して生ごみを有機肥料に変換し、生産農家に提供しています。そこで栽培された農産物を購入するなど、循環共生型社会の実現に貢献しています。

資料の電子データ化を推進

 シスメックスではパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどを活用した電子データの送受信でペーパーレス化に取り組んでおり、紙使用量および廃棄量の削減を実現しています。また、製造拠点においても、製造記録やマニュアルの電子化によりペーパーレス化を推進しています。

各事業所の主な取り組み

会社名 取り組み
シスメックスアメリカ
  • 試薬廃棄物の処理方法を埋め立てから廃棄物エネルギー処理に切り替え中。(2025年までの3年間で50〜100トンの廃棄物をリサイクル予定)
シスメックスメディカ
  • コピー用紙の100%を普通紙から環境対応用紙に変更
シスメックス
アジア・パシフィック
  • 計量用ドラムに使用しているアルミ箔を再利用可能な素材に変更
  • 廃棄していた化学原料の容器をリサイクル
シスメックス マレーシア
  • 段ボール箱、プラスチック材料のリサイクルおよび慈善団体へ寄付
シスメックス 済南
  • 汚泥フィルタープレス設備の入れ替えとQC活動により、汚泥の含水率を下げ、有害廃棄物の排出量を削減

有害物質の管理

化学物質の管理

 シスメックスでは、製品の研究開発や生産工程で化学物質を扱っています。そのため紛失・漏えいの防止はもちろん、現場で作業に従事する従業員に健康被害が及ばないように化学物質の適正管理に努めています。

有害廃棄物の管理・処理

 シスメックスでは、生物由来の物質による万が一の感染の危険性に備え、マニュアルに基づいて保管・使用場所を制限するなど厳重に管理するとともに、一般廃棄物とは厳格に分別して適切に処理しています。また、その他の有害物質についても、飛散の抑制、流出や地下浸透がないように設備・管理手法の両面から対策を講じ、排出を法規制の基準値以下に抑えるよう努めています。

大気への排出に関する管理・処理

 国内のグループ会社では、2015年に改正施行されたフロン排出抑制法に対応するために、各社で対応手順マニュアルを作成し、所有・管理するフロン含有機器の明確化、適切使用、点検の実施、算定漏えい量の把握を実施しています。

  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。