環境

環境マネジメント

シスメックス・エコビジョン 2033

「シスメックス・エコビジョン 2033」の制定

 シスメックスでは、2023年5月に「シスメックス・エコビジョン 2033」を制定しました。これは、シスメックスグループが2033年に向けて目指す長期環境ビジョンであり、ステークホルダーと共にグリーンイノベーションに挑戦し、シスメックスならではの強みを生かし、循環型社会の実現に向けた新たな常識を協創することを目指します。そして、2040年までにグループの事業所から排出される温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル目標」を設定しました。オペレーションの効率化や省エネ施策を引き続き推進するとともに、自社の事業所の消費電力を再生可能エネルギー由来に段階的に切り替えるなど、温室効果ガス削減の取り組みを進めていきます。

  • 自社での燃料の使用による温室効果ガスの直接排出(スコープ 1)および自社が購入した電気・熱の使用による温室効果ガスの間接排出(スコープ 2)が対象

長期ビジョン

長期ビジョン

長期環境目標

長期環境目標

SBTiよりnear-term targetの認定

  シスメックスは、気候科学に基づき環境危機克服に取り組む国際的イニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」より、グループの2033年度温室効果ガス削減目標の認定を取得しました。
 当社は、「シスメックス・エコビジョン2033」の中で、自社GHG排出量(スコープ1, 2)とサプライチェーンのGHG排出量(スコープ3)の削減目標を設定しています。このうち、スコープ1,2を55%削減する目標について、1.5℃目標に沿う科学的根拠に基づいていることが認められ、スコープ3における販売した製品の使用によるGHG排出量を35%削減する目標が、2.0℃を十分に下回る水準であることが認められました。また、当社が新たに設定したエンゲージメント目標は、スコープ3の購入した製品・サービス、資本財、上および下流の輸送、配送における取引先の60%が、5年以内に科学的根拠のあるGHG削減目標を持つことを推進するものとして認められました。
 世界のGHG排出量削減がパリ協定の1.5℃目標まで隔たりがある中、さらなる社会要請の変化が訪れると考えられます。当社はSBTi認定を機会と捉え、事業所拠点のエネルギー調達および販売・サービスのあり方を変えることによるCO2 排出減、製品に環境配慮材を用いることによる資源循環などを進めます。グループの知恵を結集した創意工夫によりグリーンイノベーションを実行し、脱炭素の取り組みを推進してまいります。

    https://sciencebasedtargets.org/

TCFDに基づく情報開示

TCFD

 近年、気候変動が与える影響は、金融市場において大きなリスクとなってきています。2015年12月に金融システムの安定化を図る国際組織である金融安定理事会が「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」を立ち上げ、2017年6月には気候関連の「リスク」と「機会」が企業の財務に及ぼす影響を開示するよう、最終提言を行っています。
 シスメックスは2021年1月にTCFDの提言に賛同を表明しました。TCFDのフレームワークに基づき、情報開示を推進しています。

1. ガバナンス

 シスメックスは、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めています。内部統制委員会にて、リスク領域毎の対応計画を審議・決定し、環境課題については、環境マネジメントオフィサー(取締役 常務執行役員 小野 隆)の統括・管理のもと、環境管理委員会を定期的に開催し計画を推進しています。また、内部統制委員会では計画に対する活動状況をモニタリングし、取締役会に報告しています。

2. 戦略

 シスメックスは、2020年に実施の2℃シナリオに加え、1.5℃シナリオ※1を取り込んでシナリオを更新し、それに伴うリスクと機会の再評価を実施しました。グループの全事業※2を対象に特定したリスクと機会が及ぼす財務影響は、2033年度の営業利益に与える影響を基準として3段階で評価しました。1.5℃シナリオでは市場リスクや評判リスク、4℃シナリオ※3では自然災害などの物理的リスクの影響が大きく、機会の観点では、資源の効率、製品およびサービス、レジリエンスにおける影響が相対的に大きいと分析しています。

  • 1 IEA NZE2050、IPCC RCP2.6など。気候変動に対する厳しい対策を取ることにより、産業革命前からの世界の平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられるシナリオ。
  • 2 自社のみならず、原材料や出荷物流などの上流や製品の使用など下流を含めたサプライチェーン全体を分析対象としている。
  • 3 IPCC RCP8.5など。現状を上回る温暖化対策をとらないことにより、産業革命前からの世界の平均気温上昇が4℃未満となるシナリオ。

3. リスク管理

 グループ全体のリスクマネジメント体制の中で、内部統制委員会にて環境や気候変動を含むリスクと機会全般におけるアセスメントを毎年実施し、グループとして事業に与える影響が大きなリスクと機会を特定し対策を講じる体制を構築しています。リスクの抽出に漏れが生じないよう、主要なリスク領域を担当する委員会や部門、及び関係会社にてリスクを特定し、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しております。
 また、環境管理委員会では年2回の頻度で気候変動を含む環境関連のリスクと機会を抽出し、環境管理委員会や関連する各部門が中心となって必要な取り組みを行っています。

4. 指標と目標

 シスメックスは、2040年までにグループの事業所から排出される温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を行いました。2023年5月に新たに策定した長期環境目標「シスメックス・エコビジョン2033」では、温室効果ガス排出量削減と再エネ比率の目標を設定し、研究開発から生産・物流・廃棄まで製品ライフサイクルのあらゆる段階で、さまざまな取り組みを継続して推進していきます。

リスクと機会

リスク※1 シナリオ 影響
期間
※2
財務
影響
※3
取り組み※1
移行リスク
  • 法規制の変化により、特定の物質や技術の使用が禁止され、製品供給が困難または高額な代替品が必要となる
1.5℃ 中長期 L
  • 各地域の統括拠点を中心に品質保証・薬事部門を設置し、専任スタッフが各国の法規制に対応
  • プラスチックの使用量削減を含めた環境負荷の低い素材や技術への移行にともない研究開発コストや設備投資が増加する
1.5℃ 中長期 L
  • 病院検査室の要求や市場・業界動向を踏まえた製品・技術開発
  • エネルギーコストや原材料コスト、グローバル物流コストが増大する
1.5℃ 短~長期 H
  • 省エネルギー対策、設備の効率化
  • 再生可能エネルギーの導入
  • 輸送効率の高い濃縮試薬の普及、生産移管による域間輸送低減、物流効率化
  • 顧客の環境意識の変化により、当社製品の環境負荷に対して批判が生じ需要が低下する
1.5℃ 中長期 H
  • 顧客の声を製品開発や品質改善に活用するしくみ(VOC:Voice of Customer)の構築
  • 省電力化・小型化製品など環境に配慮した製品開発
物理的リスク
  • 大規模な自然災害により製品やサービスの安定的な供給が困難になる
4℃ 短~長期 H
  • 事業継続計画(BCP)を策定し、原材料の調達先や供給体制、輸送ルート、安全在庫の確保などリスクの分散化を実施
  • 干ばつに伴う地域的な水不足により製品の安定的な供給が困難になる
4℃ 中長期 M
  • リスクを定期的に監視するとともに、事業継続計画 (BCP)を策定し、リスクを低減


機会 シナリオ 影響
期間
※2
財務
影響
※3
取り組み※1
資源の効率
  • より効率的な輸送手段の利用やIoT活用によりオペレーションが最適化される
  • 梱包や製品設計の見直しにより、原材料コストや廃棄物量が低下する
1.5℃ 短~長期 H
  • グローバル物流プロセスのデジタライゼーションやリモートサービスによるCO2削減の推進
  • 梱包の資材や形態の見直しによる省資源化・脱プラスチック素材への代替
  • ドライアイスフリーの超低温輸送
エネルギー源
  • 省エネルギー化によるエネルギーコストの削減や低炭素エネルギーへのシフトによる社会的評価が向上する
1.5℃ 中長期 L
  • 省エネルギー対策、設備の効率化
  • 再生可能エネルギーの導入
製品およびサービス
  • 顧客の購入意識の変化により、環境配慮製品の購入が促進される
1.5℃ 中長期 M
  • 省電力化・小型化製品など環境に配慮した製品開発
  • 長期的な疾患動向の変化により新たな検査機会が創出され、検査需要が拡大する
4℃ 中長期 M
  • マラリアなどの感染症対策に寄与する製品開発
市場
  • 気候変動への取り組みと情報開示により金融市場で評価・期待が高まる
1.5℃ 短~中期 L
  • TCFD対応をはじめ、シスメックスサステナビリティデータブック等による環境に関する情報開示
レジリエンス(回復力)
  • 自然災害発生時における製品・サービスの安定供給により、顧客からの信頼が向上する
4℃ 中長期 M
  • グローバルな供給体制、原材料の複数調達によるバックアップ体制の構築
  • 1 太字:2020年実施の評価からの変更箇所
  • 2 短期:1年、中期:~3年、長期:~10年
  • 3 H:High、M:Middle 、L:Low

持続可能な社会の実現に向けた環境への取り組み

環境マネジメントオフィサー 小野 隆

 環境への取り組みは、企業にとってイノベーションの源泉となると考えています。「これまでのやり方を変えよう」という強い想いを持って、それぞれの企業が非連続な発想の転換に注力すれば、新たな技術がどんどん生まれ、世の中のビジネスや企業のあり方、国や世界のあり方までもが大きく変わっていくのではないでしょうか。私たちは、一つの空のもとで生きています。組織の枠を越え、企業同士が横のつながりを深め、持続可能な社会を一緒につくっていける、そんな未来を描いていきたいです。

環境マネジメントシステム

グループ環境マネジメント体制

ISO14001認証取得状況

 シスメックスでは、グループの主要な関係会社において環境マネジメントシステムの国際規格ISO 14001の取得を進めています。
 2024年3月末現在、グループ19社で認証を取得し、認証取得拠点の売上比率は約70%となっています。
 また、一部では活動の進捗状況や問題点をグループとして把握しマネジメント活動を強化していくために環境活動を一元化し、シスメックス株式会社、シスメックスRA、シスメックスメディカの3社9拠点で、統合認証を取得しています。この結果、環境経営に関わる情報を体系的に共有することが可能となりました。

ISO14001取得拠点一覧

地域 会社名
日本 シスメックス株式会社、シスメックスメディカ、
シスメックスRA
米州 シスメックスアメリカ、シスメックスリージェンツ・アメリカ、
シスメックスブラジル
EMEA シスメックス ヨーロッパ、シスメックス ドイツ、シスメックス フランス、
シスメックス スペイン、シスメックスUK、シスメックス・ベルギー、
シスメックス・オランダ、シスメックス・ハンガリー
中国 シスメックス 無錫、済南シスメックス
AP シスメックスアジア・パシフィック、シスメックス インディア、
シスメックス オーストラリア
  • 欧州、中東、アフリカ地域

環境監査の実施

 ISO 14001認証を取得している各拠点では、環境マネジメントシステムの要求事項に従って、「内部環境監査」および「外部環境審査」を定期的に実施しています。2023年度は、認証統合している国内グループ拠点の内部環境監査、外部環境審査の不適合は、ともに0件でした。

環境教育

環境教育・訓練の実施

 シスメックスでは、グループの環境活動やそれぞれの業務がどのように環境に影響を及ぼすかを周知するための全従業員向け一般教育と、各部門に設定した環境マネジメントシステム推進責任者および推進担当者に対する実務知識習得のための専門教育を実施しています。さらに、各部門で必要に応じて専門教育や緊急事態訓練なども行っています。
 2023年度は、ISO統合認証の適合事業所に所属する全従業員向けにeラーニングによる環境一般教育を行いました。また、事業所担当者および製品ライフサイクル部門の担当者向けの法規制セミナーを実施しました。

  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。