気候変動への適応・緩和をはじめ、水資源や生物多様性の保全など、環境問題は世界全体が抱える大きな課題の一つです。企業の役割が問われるなか、シスメックスは、2024年3月期を最終年度とするグループ中期経営計画の重点アクションの一つに「サステナビリティ経営の強化・実践に向けたビジョン策定、施策展開」を掲げ、グループ全体で環境負荷低減への取り組みを推進しています。
シスメックス環境マネジメントオフィサーを務める小野隆は、環境への取り組みについてこう語ります。
「『環境問題』という言葉がよく使われますが、私自身は『問題』というより、企業の存在意義や存在価値、技術優位性を高める『機会』と捉えています。一方、一つの企業がどれだけ頑張っても、地球環境に与えられる影響は微々たるもの。だからこそ、世界中の国や企業がベクトルを合わせて取り組むべきテーマだと考えています」
シスメックスは、検体検査に必要な機器や試薬などを世界中に提供しています。こうしたヘルスケア事業と環境は、非常に密接な関係にあると小野は話します。
「健康に生きていくためには環境問題の解決が必須条件です。しかし世界では、人口の増加や経済の発展に伴い地球温暖化が進み、私たちが暮らす環境に影響を及ぼしています。一例として、世界三大感染症の一つであるマラリアの流行地域の拡大が挙げられます。マラリアは蚊を媒介して人への感染が広がりますが、気温上昇により蚊が生息する地域が拡大した結果として、マラリアの流行が広がっています」
「ヘルスケア企業の使命の一つである安定供給にも、環境問題は大きく関わっています。ヨーロッパでは近年、気候変動によって引き起こされる干ばつが貨物船の運航などに影響を及ぼし、物流に混乱が生じています。これらの影響を中長期視点でリスクと捉え、各企業が自発的にアクションを起こしていかねばならないと考えています」
一方、ヘルスケア事業に携わる者だからこそ持つべき意識があると小野は語ります。
「ヘルスケア事業そのものが社会貢献である、という考え方もありますが、事業を続けてさえいればいい、という傲慢さにつながる恐れもあります。人々の健康寿命の延伸に貢献するためには、生活を取り巻く環境をいかに良くしていくか、という観点を忘れてはなりません」
国や企業それぞれが環境のためにできることを積み重ねた先に、どんな未来が待っているのでしょうか。小野は最後に、自身が描くこれからの社会のあり方について熱く語ります。
「環境への取り組みは、企業にとってイノベーションの源泉になると考えています。『これまでのやり方を変えよう』という強い想いを持って、それぞれの企業が非連続な発想の転換に注力すれば、新たな技術がどんどん生まれ、世の中のビジネスや企業のあり方、国や世界のあり方までもが大きく変わっていくのではないでしょうか。私たちは、一つ空のもとで生きています。組織の枠を越え、企業同士が横のつながりを深め、持続可能な社会を一緒につくっていける、そんな未来を描いていきたいです」
シスメックスは今後も、持続可能な社会の実現を目指し、事業活動を通じて環境への取り組みを進めていきます。