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官民連携でPCR検査体制を構築しCOVID-19に立ち向かう

~国民と医療従事者への想いを胸に、ヘルスケアを担う企業として挑戦を続ける~

検体検査に関する多様な基盤技術と、研究開発、製造、販売、サービス&サポートまで一貫したバリューチェーンを有し、市場ニーズに応える製品やサービスを提供しているシスメックス。世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、日本国内へのPCR検査キットの導入と、地域におけるPCR検査体制の強化に先陣を切って挑み、医療課題解決に取り組み続けています。 コロナ禍で多くの困難を乗り越えながら前進を続けるCOVID-19プロジェクトの進捗と、メンバーたちの奮闘を追います。

COVID-19の脅威に立ち向かう

世界中で猛威を振るうCOVID-19。2020年1月以降世界中で感染が拡大し、同年3月11日には、世界保健機構(WHO)が世界的な大流行を意味する「パンデミック」を宣言しました。各国において入国制限の措置が取られるほか、緊急事態宣言や外出禁止令の発出など多くの対策が講じられているものの、2021年に入り今もなお、COVID-19によって世界は大きな不安に包まれています。
 
日本でも感染拡大が進むのでは——。2020年の初めからシスメックスでは、自分たちに何ができるのか、今必要とされていることは何なのか、議論が始まっていました。そんな中、2020年1月末に日本臨床検査薬協会を通じて国からある要請が届きます。
 
「新型コロナウイルス感染症の検査キットを開発できないだろうか」
 
日本政府は、内閣に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置、感染拡大に向けた取り組みを推進しており、中でも重要視されていたのが、患者さんを診断するための検査体制の構築でした。
 
COVID-19のような新しい感染症は、未知の病原体が原因であるため、流行初期段階では検査手法がありません。そこで日本では国立感染症研究所(以下、感染研)が遺伝子検査を確立、検査体制の整備を進めていたものの、高まる検査需要に追い付かない状況が続いていました。保健所や医療機関、受託検査会社での検査体制の構築、そして薬事承認済みで品質が担保されたPCR検査キットの導入が急務だったのです。

最速で検査を実現する

「ヘルスケアを担う企業として、シスメックスは医療課題の解決につながる製品やシステムを開発し、世の中に提供してきました。自分たちがやるべきこと、社会における役割を全うしようと早急にプロジェクトが立ち上がりました」と話すのは、LS(ライフサイエンス)事業本部の責任者を務める谷口充。シスメックスにおけるCOVID-19への取り組みの中心人物として、複数のプロジェクトをリードしています。

 
「とにかく検査が足りていない」というひっ迫した状況において、何より重要なのはスピード。自社で検査キットを開発する可能性も模索しましたが、一日でも早く課題解決に貢献すべく、他社製品を導入する計画が始動しました。同時期に中国で薬事承認を取得し世界各国への供給が始まっていたBGI Genomics社の製品に注目。新型コロナウイルス検査キットとして、国内初となる薬事承認を取得し、医療現場への早期提供を図りました。
 
通常、薬事申請から承認を取得するまでには1年以上を要するところ、厚生労働省(以下、厚労省)や医薬品医療機器総合機構のご尽力のもと、2020年3月に申請し、約2週間後の3月27日に承認取得を果たした本検査キット。「申請に必要なデータをつくるには臨床検体が必須ですが、民間企業であるがゆえに入手は困難を極めました。厚労省や感染研に掛け合って何度も交渉を重ね、ついに検体を手に入れることができました」。しかし、不活化された検体(感染性を失った状態)であってもCOVID-19の検体を輸送するにはさまざまな制約があり、その中で1日も早く神戸のシスメックス研究開発拠点に検体を届けることに苦労したと当時を振り返ります。
「何もかもが手探りで、こうしている間にもどんどん感染が広がっている。立ち止まっている時間なんて1秒もありませんでした」

「ノー」という選択肢はない

いち早い検査導入というミッションをクリアしたものの、依然として検査体制の構築は日本全体で大きな課題となっていました。特に3~4月にかけて検査需要は右肩上がりとなり、症状が出ている方でもすぐには検査が受けられないという事態が日本各地で発生。シスメックスが本社を置く神戸市においてもまた、検査はすでにキャパシティーを超過した状態でした。「検査体制の構築に力を貸してほしい」と、シスメックスに神戸市から応援要請が届いたのはこの頃でした。
 
「通常、新たな検査体制を構築するには半年から1年を要します。しかしヘルスケアを担う企業としての使命感から、この苦しい状況下での要望に『ノー』と言う選択肢はありませんでした。何としてもやらねばという一心でした」と当時を振り返ります。すぐに受託検査のエキスパートである株式会社エスアールエル(以下、エスアールエル社)に相談し、どのような体制をつくるべきかディスカッションを開始。検査体制の構築支援や検体回収・結果報告をエスアールエル社が、PCR検査をシスメックスが担当するという連携体制を構想していきました。
 
こうして2020年5月、神戸市、エスアールエル社、シスメックスは神戸市内におけるCOVID-19のPCR検査体制強化に関する合意書を締結。シスメックスが従来運用している神戸医療産業都市内の衛生検査所「シスメックスBMAラボラトリー」内に、新たにPCR検査体制を構築することが決定しました。

従業員の想いが集結したCoviLabが始動

COVID-19のPCR検査を実施するには、バイオセーフティレベルに基づき、不活化前の検体を取り扱うための前処理室を設置する必要があったため、急きょ既存のラボの工事をスタート。また検査手順の確立、資材や標準作業手順書の準備、安全性対策の構築や衛生検査所の登録など、タイトなスケジュールの中、関係者の協力を受けながらわずか1カ月半ほどで体制を整え、国内初の官民連携によるPCR検査機関「神戸COVID-19 PCR検査ラボラトリー(以下、CoviLab)」が6月より運用開始となりました。
※バイオセーフティレベル:WHOが制定したLaboratory biosafety manualに基づき、各国で細菌・ウイルスなどの微生物・病原体の危険性に応じて4段階のリスクグループが定められており、それらを取り扱う実験室・施設の格付けを指す。
 
CoviLabでの検査業務には従来のラボのメンバーだけでなく、社内公募により手を挙げたメンバーも参加。早速CoviLabに集合し、検査品質の維持・向上に向けて日々トレーニングを重ねました。「バイオセーフティレベルとは?」「防護服の正しい着用法は?」など、初歩的なところから知識を習得し、実践に向けて技術を身に着けていきました。
 
「PCR検査が十分に実施されていない状況に歯がゆさを感じ、自身の経験を生かして検査体制の拡充に貢献したいと思い応募した」「少しでも世の中の役に立ち、安心を提供できるならば立ち上がるしかない」と、強い想いを持ってCoviLabでの検査業務にチャレンジしている従業員たちに対し、谷口は「皆、使命感を持って本当に頑張ってくれています。2020年6月の検査業務開始時は第1波が収まりつつありましたが、8月頃に第2波が、年末から第3波が始まり、気力、体力ともに限界を感じたことも多々あったと思います。それでも前を向いて頑張り続けている。本当に感謝しかありません」と実感を込めて語ります。

 
特に検体数が多い時期は、検査スケジュールの組み方や勤務シフトを工夫するほか、社内外から緊急支援者に駆けつけてもらい、一丸となってCoviLabの運営に尽力しています。そんなメンバーたちを労うため、毎週末には差し入れを持って現場を訪れているという谷口。「ゴールが見えない中で走り続けるというのは本当に大変なこと。でもこれが、日本全国の医療現場で起こっている実情だと思っています。医療従事者の方々のためにも、我々なりにできることを継続していかねばならないと思っています」
 
CoviLabでの検査業務開始時は1日50件ほどだった検査数は、メンバーたちの着実なスキルアップにより、2021年3月時点で、1日最大300件のPCR検査が可能に。今後の需要拡大を見据えラボの拡張計画も進行中で、さらなる検査体制の拡充を図りつつ、今日もCoviLabでは検査業務が行われています。

医療課題の解決に、現場目線で挑む

新型コロナウイルス検査キットの導入・販売、そして検査体制の構築に加え、シスメックスはCOVID-19に対し多様な取り組みを進めています。
 
その1つが、CoviLabでの検査データの継続的な解析を通じた感染対策強化への貢献です。月別検査数と行政や医療機関など検査依頼区分別の陽性率の推移をもとに、より有効な対策の検討を進めています。また、検査工程の効率化に向けて開発に着手し、2020年9月に発売したのが、検体中のウイルスの感染性を低減する不活化試薬です。この製品の導入によって検査施設での検体不活化工程を削減することができ、50検体の検査にかかる時間を平均で6時間から4時間へと短縮可能。現在さまざまな検査施設への導入が急ピッチで進んでおり、医療従事者の負担軽減と安全確保に貢献しています。
 
CoviLabでは現在、1台の自動検査ロボットを導入・活用していますが、検査効率化と人員不足への打ち手として、川崎重工業株式会社、株式会社メディカロイドと協業して全自動PCR検査ロボットシステム開発にも注力。また、PCR検査キットの自社開発、抗原検査試薬およびCOVID-19の重症化予測や治療モニタリングを補助する検査試薬の開発と薬事承認・保険適用の取得、研究用抗体検査試薬の開発・実用化を通じて、社会課題の解決に取り組んでいます。
 
一連の取り組みから、谷口はシスメックスの社会的使命を強く実感していると語ります。「私たちの取り組みは、医療貢献そのものだと自負しています。さらに今回、『検査をする』というお客様の立場になってみて、臨床検査技師や医療従事者の皆さんが日々いかに苦労されているかを肌で感じることができました。身をもって経験した現場の医療課題やニーズを今後の製品開発に反映し、さらなる課題解決に貢献したいと考えています」


 
検査、ワクチン、治療薬。これらは、パンデミックを抑えるための三種の神器と言われています。「この中でも先陣を切って走るのが検体検査に携わる企業である我々だということを、COVID-19を通じて再認識しています。どのような状況においても、私たちはチャレンジし続ける企業でありたい。変化を恐れず、自らがどう変化し環境に対応していくかという柔軟な姿勢を持って、社会に必要とされる新しい価値を生み出していきます」
 
COVID-19といった未曾有の危機に際しても、ヘルスケアを担う企業としての使命を果たしてきました。シスメックスはこれからも検体検査のリーディングカンパニーとして新たな挑戦を続けていきます。
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