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2008年Vol.9 No.2

論文

クレアチンキナーゼ測定試薬「エルシステム・CK」およびクレアチンキナーゼアイソザイム測定試薬「エルシステム・CK-MB」の基本性能

著者

宮本 郁弓, 角田 浩一, 萩野 浩史, 新井 信夫, 船越 國宏

シスメックス株式会社 学術本部

Summary

クレアチンキナーゼ ( CK ) は,心疾患や筋疾患の診断指標として広く臨床の場で利用され,特に,CK アイソザイムの一つであるCK-MB は,心筋マーカーとして急性心筋梗塞などの心疾患の診断に用いられている.今回,溶血の影響を低減させたエルシステム・CK とミトコンドリアCK ( MtCK ) の干渉を排除したエルシステム・CK-MB を開発したのでこれらの試薬の基本性能について報告する.

エルシステム・CK については,同時再現性,直線性および当社従来品 ( CPK 試薬・LB 「コクサイ」 ) との相関は良好であった. また,干渉物質の影響については,干渉チェック・Aプラスを用いて確認したところ,溶血ヘモグロビン濃度500mg/dL まで影響を受けなかった.

エルシステム・CK-MB は,エルシステム・CK と同様に同時再現性,直線性は良好であり,干渉物質の影響についても溶血ヘモグロビン濃度500mg/dL まで影響を受けなかった. また,本試薬には新規に自社開発した抗ヒトMtCK 抗体が添加されており,その阻害率はサルコメリックMtCK に対して98.3%,ユビキタスMtCK に対して96.3%であった. 患者検体を用いた当社従来品 ( CK-MB 試薬・L「 コクサイ」) との相関は,r = 0.900,y = 0.799x - 8.1 と乖離する検体が散見された. しかし,電気泳動法との相関では,r = 0.971,y = 0.909x + 5.1 と乖離する検体が減少したことから,当社従来品との乖離は,本試薬に添加された抗ヒトMtCK 抗体が検体中のMtCK 活性を阻害した結果と考えられた。さらに,心疾患症例を対象としたROC 解析を実施し,当社従来品およびエルシステム・CK-MB の曲線下面積 ( AUC ) を算出したところ,当社従来品では0.802 であったが,エルシステム・CK-MB では0.906 と,AUC の増加を認めた. また,本試薬を用いたCK-MB 活性の参考基準範囲は,0.6~ 5.7U/L と当社従来品よりも低値であった.

以上の結果から,エルシステム・CK は,検体ブランクを差し引いたレート法を採用することで溶血ヘモグロビン濃度500mg/dL まで影響が見られず,その他は当社従来品と同様の基本性能を有することが示された. 一方,エルシステム・CK-MB は,抗ヒトMtCK 抗体を添加することで従来の免疫阻害法に比べ,より特異的にCK-MB活性を測定することが可能となり,ROC 解析結果から心疾患の診断に対する有用性が高いことが示された.

Key Words

CK, CK-MB, ミトコンドリア CK ( MtCK ), 抗ヒトミトコンドリア CK 抗体 ( 抗ヒト MtCK 抗体 ), 免疫阻害法