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2002年Vol.3 No.2

論文

中国における血小板数基準範囲の調査研究

著者

岡田 德弘*1, 本射 滋己*1, 近藤 民章*1, Meiyi Jiang*2

*1 シスメックス株式会社 中央研究所 セルアナリシスセンター
*2 シスメックス株式会社 学術部

Summary

私たちは中国江蘇省の蘇州大学附属第一医院における外来において,血小板数が100 × 10/L 以下を示す患者が極めて多いことに気付いた. そこで2000年度には蘇州大学附属第一医院を含む中国3都市在住の病院職員と医学生を対象に血小板数の基準範囲を算出した. さらに2001年には調査対象を中国15都市に拡げ,基準範囲の調査を行った.

その結果,中国においては血小板数が全体的に低値を示す健常者が多い都市,日本や欧米諸国と同等の基準範囲にある都市,そしてその中間を示す都市があることが判った. また,血小板数が100 × 10/L 以下の低値を示す検体においては,大型の血小板が血液塗抹標本上にも多数観察され,自動血球計数装置が計測する平均血小板容積( MPV )も大きくなっている. したがってMPVの基準範囲も地域ごとに設定しなければならない.

都市によって血小板数の低い健常者が多い理由やその体内での生理的機序については全く判っていない. ただし,血小板数の低い都市に短期間( 3~5日間程度 )滞在すると血小板数の減少とMPVの大型化が認められることから,飲食物などの環境要因がその原因であろうと推定されるが,その物質は特定できていない.

Key Words

血小板数, MPV, 基準範囲, 正常値, 血小板減少, 中国