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2022年Vol.23 No.2

論文

全自動血液凝固測定装置CN-6000におけるフィブリン・フィブリノーゲン分解産物キット リアスオート™ P-FDPおよびフィブリン分解産物キット リアスオート™・Dダイマー ネオの基礎的検討

著者

前田 里紗,牧 亜矢子,久保田 芽里,大坂 直文

大阪医科薬科大学病院 中央検査部

Summary

フィブリン・フィブリノゲン分解産物 (以下,FDP) およびフィブリン分解産物 (Dダイマー:以下,DD) は,血栓症および播種性血管内凝固症候群 (Disseminated Intravascular Coagulation:以下,DIC) の診断および治療経過のモニタリングとして日常の臨床検査に用いられる検査項目であるが,標準化がいまだ不十分で測定値に試薬間差を生じることが知られている。今回,我々は全自動血液凝固測定装置 CN-6000 (シスメックス株式会社:以下,シスメックス) におけるフィブリン・フィブリノーゲン分解産物キット リアスオートTM P-FDP (シスメックス:以下,LiaFDP),フィブリン分解産物キット リアスオートTM・Dダイマー ネオ (シスメックス:以下,LiaDD) の基礎的検討を行い,さらに,FDP異常高値例について,他試薬と比較検討した。

同時再現性,希釈直線性,最小検出感度,干渉物質による影響の性能は良好であり,日常業務での使用にあたり,十分な性能を有していた。

対照試薬との相関性においては,FDP,DDともに良好な相関性が得られたが,乖離検体も存在した.FDPでは,検討試薬が対照試薬に比べて,高値傾向および低値傾向の両方の乖離が存在し,両試薬に使用されている抗体のFDPの各分画に対する反応性の差が原因と考えられた。DDでは,検討試薬が対照試薬に比べて高値傾向を示す乖離が存在し,両試薬に使用されている抗体の低分子DD/E分画への反応性の差が原因と考えられた。

各種疾患における反応性においては,敗血症を基礎疾患とする線溶抑制型DIC,急性前骨髄球性白血病を基礎疾患とする線溶亢進型DICのいずれの症例においても両試薬の反応性は概ね一致していた。また,LiaFDP,LiaDDのFDPとDDのバランスをみることで,線溶亢進状態が推測できると考えられた。

FDPおよびDDは試薬間で反応性の違いがある場合があり,使用している試薬の反応性を十分に理解したうえで,使用する必要がある。

Key Words

フィブリン・フィブリノゲン分解産物 (FDP),フィブリン分解産物 (Dダイマー),CN-6000