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2020年Vol.21 No.3

論文

薬物中毒検出用キット SIGNIFY™ ER の基礎的評価

著者

斉藤 剛, 守田 誠司, 中川 儀英

東海大学 医学部 総合医療学系救命救急医学

Summary

薬物中毒検出用キット SIGNIFYTM ER ( アボット ダイアグノスティクス メディカル株式会社:以下,SIGNIFY ER ) の性能を,従来品トライエージ DOA ( アリーア メディカル株式会社:以下,トライエージ) と比較した.東海大学医学部付属病院高度救命救急センターへ搬送され薬物スクリーニング検査を実施した71例の尿について,トライエージとSIGNIFY ER を使用して交差反応性を調べた.尿試料の分析は,すべて液体クロマトグラフ質量分析計およびガスクロマトグラフ質量分析計を用いて行われた.SIGNIFY ER におけるカットオフ濃度はすべての化合物に対して明らかではないが,感度,特異度は概ね満足できる結果が得られた.しかしSIGNIFY ERでは以下の特徴が認められた.トライエージとSIGNIFY ER は,ベンゾジアゼピン類 ( BZO ) の構造によって反応性が異なる.クエチアピンとその代謝物は三環系抗うつ剤 ( TCA ) に対して偽陽性を示す.アンフェタミン類 ( AMP ) に対して偽陽性を示すことは原因不明であるが,エフェドリン類の影響による陽性とも考えられる. SIGNIFY ER は1回の操作で約5分後に結果が得られるが,使用する際には上記の特性を理解する必要がある.

Key Words

SIGNIFY ER, トライエージDOA, 尿中乱用薬物検査キット, 性能比較

Notes

* 今回評価に用いたのは Signify ER( 海外販売品 )であり,SIGNIFYTM ER と同等品である.
** 第42回日本中毒学会総会・学術集会にて発表済である.