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2018年Vol.19 No.2

論文

全自動血液凝固測定装置に搭載した血小板凝集能検査を用いた研究用新規指標の抗血小板療法における薬物効果判定としての有用性の検討

著者

坂寄 輔*1, 渡邊 ゆり*1, 北野 圭介*1, 松井 陽平*2, 狩野 大樹*2, 新井 信夫*1, 小宮山 豊*3

*1 シスメックス株式会社 第一エンジニアリング本部
*2 シスメックス株式会社 第二エンジニアリング本部
*3 シスメックス株式会社 ICH事業推進本部 

Summary

抗血小板療法は,血栓性疾患の治療法として現在広く用いられているが,出血性合併症の制御は治療の成功にとって重要な問題のひとつである.そのため,現在の血小板凝集能の測定目的の半数以上は抗血小板薬の効果確認である.

全自動血液凝固測定装置CS-5100,CS-2500,CS-2400,CS-2100i,CS-2000i で血小板凝集能の測定ができるようになったが,現在本邦で汎用されている半自動の装置に備わっているような抗血小板薬の効果確認指標は搭載されていなかった.今回我々は,抗血小板薬の効果確認に応用を目指した研究用のスコアリングシステムであるPlatelet Aggregation Level ( 以下,PAL ) を開発した.PAL はADP 試薬を使用した場合はADP induced PAL ( 以下,APAL ),コラーゲン試薬を使用した場合はCollagen induced PAL ( 以下,CPAL ) として指標を算出する仕様である.

APAL はP2Y12 阻害薬であるカングレロールの添加試料に対して,CPAL はアスピリンの添加試料に対して,それぞれ濃度依存的に値が低下し,また,添加前後で有意に値が低下していた.既存のシステムである既存指標 ( 2 濃度法)に対してはAPAL,CPAL ともに相関係数が0.90 以上の高い関係性を示した.

これまで専用の半自動装置が必要であった抗血小板薬の効果確認の検査が全自動血液凝固測定装置で可能となることが示唆されたことより,これまで新規導入に伴うコストの観点で使用できなかった施設でも使用が容易になることに伴う医療貢献を期待する.

Key Words

血小板凝集,透過光血小板凝集検査法,抗血小板薬,PAL ( Platelet Aggregation Level )