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2017年Vol.18 No.1

論文

POCT 装置2機種による血中CRP 測定性能およびユーザビリティーの比較試験

著者

菅原 直哉

神戸医療生活協同組合 神戸協同病院 検査科

Summary

プライマリ・ケアにおける炎症の診断において,簡便かつ精度良くC 反応性タンパク (CRP) 測定を実施しうるPoint of Care Testing (POCT) 装置の重要性が高まってきている.本試験では,2 機種のPOCT 装置によるCRP 測定の精度を試験し,これらのPOCT 装置がプライマリ・ケアの診断局面において臨床上の有用性を担保しうる性能を有しているかの検証を実施した.さらには,プライマリ・ケアの医療現場におけるユーザビリティーの観点からも両機種の比較を行った.

当検査室のルーティン検査で得たCRP 測定値に対する相関性および直線性は,機種A,機種B ともに要求性能を満たしていた.低域 ( < 1.0 mg/dL ) の測定再現性は明らかに機種A が優れており,高域 ( 2.0 ~ 16 mg/dL ) ではほぼ同等の結果であった.1.0 mg/dL の検体を用いた再現性試験 ( 20 回測定) においても,明らかに機種A が優れる結果を得た ( 機種A:CV=5.5%,機種B:CV=15.1% ).測定値の正確度に関しては,機種A が10%の正誤差,機種B が10%の負誤差を持つ結果であった.ユーザビリティーに関しては,ヘマトクリット値自動補正機能を有する機種B が優れると判断した.

本試験の結果から,POCT 装置の性能およびユーザビリティーは機種固有であり標準化されていないことが明らかとなった.POCT 装置を導入する際には,プライマリ・ケアの局面における使用の目的に合致する機種を慎重に選定する必要があると考える.

Key Words

POCT, プライマリ・ケア, C 反応性タンパク, CRP