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微量の血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬を発売

~全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/HISCL™-800を用いた血液中Aβの測定~

 シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役社長:浅野 薫)は、免疫検査分野の新製品として、血液中のアミロイドβ(Aβ)を測定する検査試薬「HISCL β-アミロイド 1-42 試薬」および「HISCL β-アミロイド 1-40 試薬」(以下、「本製品」)を日本で発売します。本製品は、自社の全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800(以下、「HISCLシリーズ」)を用いて血液中のAβを測定することで、アルツハイマー病の特徴の一つである脳内Aβの蓄積状態の把握を補助するものです。

 日本における認知症患者数は、2012年の約460万人(65歳以上の高齢者の約7人に1人)から、2025年には675万人~730万人(同約5人に1人)に増加すると推計※1されており、高齢化社会の進展に伴い大きな社会課題となっています。認知症の最も一般的な病型とされ、その約60~70%を占めるアルツハイマー病は、Aβペプチドが脳に蓄積し、神経細胞に障害を与えることが原因とされています。一度障害を受けた神経細胞は再生が困難であるため、早期診断・早期治療開始が重要です。
 
 一方、近年、国内外において、アルツハイマー病の病理に作用する治療薬の開発が活発化しています。米国では、2023年1月、エーザイ株式会社とバイオジェン・インクが共同開発した「レカネマブ」(一般名)※2がアルツハイマー病に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認されました。日本においては、エーザイ株式会社が2023年1月16日に「レカネマブ」の製造販売承認申請を実施しており、同月、厚生労働省より優先審査品目※3に指定されました。治療薬の適切な使用や普及には、脳内のAβの蓄積状態を把握する技術が必要とされていますが、アミロイドPET検査や、脳脊髄液検査などの従来の検査方法は、侵襲性やコストの面で課題がありました。これらのことから、治療薬の臨床実装に向けて、侵襲性が低く、簡便な検査へのニーズが高まっています。
 シスメックスは、これまで、アルツハイマー病の診断における課題の解決に向け、より簡便かつ迅速に脳内のAβの蓄積状態を把握する技術の開発を進めてきました。2016年2月には、エーザイ株式会社と認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結し、互いの技術・ナレッジの活用により、本製品の開発を進めてきました。
 
 このたび日本で発売する本製品は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を測定原理とする自社の全自動免疫測定装置 HISCLシリーズを用いて血液中のAβペプチド(1-42ペプチドと1-40ペプチド)の比率を測定することで、脳内Aβの蓄積状態の把握を補助するものです。認知症領域において、体外診断用医薬品として承認された日本初の血液バイオマーカーであり、低侵襲、簡便かつ迅速な検査が可能です。このため、脳内のAβの蓄積が疑われる患者さんに対し、検査に伴う身体的・精神的・経済的負担を軽減する上、早期診断・早期の治療方針決定に貢献することが期待されます。また、微量検体(10~30μL)、迅速測定(17分)を特長とするHISCLシリーズでの自動測定により、検査の効率化・標準化にも寄与します。
 
 今後は、患者さんの受診機会を早期に拡大するため、関連学会・KOL(Key Opinion Leader)との連携を推進し、診断ガイドラインへの収載、および保険適用に向けた活動を推進します。
 
 シスメックスは、健康で長生きをしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、人々のヘルスケアジャーニー※4がより良いものになるよう、患者さんにとってより負担の少ない検査・診断技術の確立および国内外への普及促進に取り組んでまいります。
 
【製品の概要】

一般的名称

β-アミロイドキット β-アミロイドキット
販売名 HISCL™ β-アミロイド 1-42 試薬 HISCL™ β-アミロイド 1-40 試薬
体外診断用医薬品製造販売承認番号 30400EZX00104000  30400EZX00105000 
使用目的 血漿中のβ-アミロイド 1-42の測定
(脳内アミロイドβの蓄積状態把握の補助)
血漿中のβ-アミロイド 1-40の測定
(脳内アミロイドβの蓄積状態把握の補助)
製造販売元 シスメックス株式会社
対象市場 日本
発売時期 2023年6月

【外観】


  【参考】
   

2016年2月15日リリース『シスメックスとエーザイが認知症領域に関する次世代診断薬の創出に向けた包括契約を締結』

https://www.sysmex.co.jp/news/2016/160215.html

     
    2022年1月5日リリース『脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態の把握を補助する検査試薬の製造販売承認申請を実施~全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/HISCL™-800を用いた血液中Aβの測定~』
https://www.sysmex.co.jp/news/2022/pdf/220105.pdf
     
    2022年12月22日リリース『微量の血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬について製造販売承認を取得~全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/HISCL™-800を用いた血液中Aβの測定~』
https://www.sysmex.co.jp/news/2022/221222.html
     
    2023年1月7日 エーザイ株式会社、バイオジェン・インク リリース『LEQEMBI(レカネマブ)、アルツハイマー病に対する治療薬として米国FDAより迅速承認を取得』
https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202301.html
*LEQEMBIはEisai R&D Management Co., Ltd.の登録商標です。
     
    2023年1月16日 エーザイ株式会社 リリース『抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、日本において早期アルツハイマー病に係る適応で新薬承認を申請』
https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202307.html
     
  【注釈】 
  ※1 出典:『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業)』、二宮 利治 (九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター・教授)、平成26年度総括研究報告書、(厚生労働科学研究成果データベース

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/141031/201405037A_upload/201405037A0003.pdf

     
  ※2 レカネマブ(lecanemab、一般名):
エーザイ株式会社とバイオジェン・インクが共同開発するアルツハイマー病の治療薬候補。2023年1月6日にアルツハイマー病の治療薬として米国FDAより迅速承認を取得したほか、欧州においても、2023年1月26日に欧州医薬品庁(EMA)が販売承認申請を受理している。日本においては、2023年1月16日に製造販売承認申請が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出され、同月、厚生労働省が優先審査品目に指定した。
     
  ※3 日本の優先審査は、希少疾病用医薬品、先駆的医薬品のほか、重篤な疾病であり、かつ、既存の治療法と比較して有効性または安全性が高いと認められた医薬品等に与えられるもので、通常の審査期間に比べ、総審査期間の目標が短縮される。
     
  ※4 「ヘルスケアジャーニー」とは、シスメックスが新たに提唱する概念であり、人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関などを含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるもの。シスメックスは、一人ひとりのヘルスケアジャーニーがより良いものになるよう、さまざまな協創を通じて新たな価値を提供し、社会にとって不可欠な存在として成長していくことを目指しています。
     
【シスメックスのマテリアリティ】
  シスメックスは、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)の一つに「健康社会への新たな価値創出」を特定し、イノベーションを通じた医療課題解決に取り組んでいます。今後も、健康で長生きをしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、独自のテクノロジーとソリューションを通じて、一人ひとりに最適な医療の実現に貢献します。
 
 
以上
  • 本プレスリリースは、ステークホルダーの皆さまに企業活動をお伝えするために実施しています。当社製品や研究開発の情報を含む場合がありますが、これらは製品に関するプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。また、掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。

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