シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長 CEO:家次 恒 以下「シスメックス」)は、マラリア原虫等感染赤血球の自動測定機能を搭載したヘマトロジー分野の新製品「Automated Hematology Analyzer XN-31」が、欧州IVD指令に適合してCEマークを取得したことをお知らせします。今後、本製品を欧州で発売するとともに、アフリカ・アジアにおいても各国許認可を取得次第順次発売予定です※1。一般的な血液検査に用いられる血球計数検査項目(CBC8項目※2)と同時に、マラリア原虫等感染赤血球の有無を約1分で自動測定するXN-31は、現在主流となっている顕微鏡や簡易キットを用いたマラリア検査の精度面、効率面での課題を解決し、マラリア検査の標準化および効率化を支援します。今後、各国での薬事承認取得に向けた活動を推進し、マラリアまん延地域や、マラリアの流入防止に取り組む先進諸国へ広く導入することで、世界におけるマラリア排除(マラリアエリミネーション)に貢献します。
マラリアは世界保健機構(WHO)が定める世界三大感染症の一つであり、蚊を媒介としてマラリア原虫によって引き起こされる原虫感染症です。2017年の罹患者数は約2.2億人、死亡者数は約44万人と報告されています※3。2015年に国際連合(UN)が発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」では、HIV/AIDS、結核などと並びマラリアのまん延防止が重要な課題の一つとして挙げられており、現在、マラリアエリミネーションに向けて国際団体によるさまざまな活動が行われています。
マラリア原虫を保有する蚊に刺されマラリア原虫が体内に侵入すると、一定の潜伏期間を経て血液中の赤血球に感染し、高熱、頭痛、嘔吐、貧血などの症状が認められます。現在のマラリア検査は、主に感染赤血球を目視する顕微鏡検査、もしくは抗原/抗体反応を用いた簡易キットによって行われていますが、いずれも前処理を含めて約15~30分の時間がかかる上、顕微鏡検査には熟練の技術を要するという課題がありました。
シスメックスは、持続可能な社会の実現および当社の持続的な成長に向けて優先的に取り組むべき課題の一つに「製品・サービスを通じた医療課題解決」を掲げており、その一つとして、マラリア検査の標準化・効率化支援により、マラリアの早期発見・早期治療に貢献することを目指しています。
このたびCEマークを取得し、海外向けに発売する「Automated Hematology Analyzer XN-31」は、ヘマトロジー分野で培ったフローサイトメトリー技術を応用した405nmの半導体レーザーを使用することで、前処理作業を伴うことなく、マラリア原虫等感染赤血球の有無を約1分で高精度に自動判定し、マラリア検査の標準化と効率化を支援します。このXN-31によるマラリア原虫等感染赤血球の有無判定は、南アフリカ・インドで行った臨床評価においては高い感度および特異度を得ており※4、臨床用途として、マラリアの診断補助に活用可能※5です。
また、参考情報として、マラリアの中でも最も重症化しやすく死亡率の高い熱帯熱マラリアと、それ以外の種類を予測するためのフラッギング情報※6も提示します。さらに、マラリア原虫等感染赤血球の有無・定量値や全赤血球数に対するマラリア原虫等感染赤血球の比率(感染率)などの項目に加えて、ヘモグロビンを含むCBC8項目を同時に自動測定できることから、マラリア患者に多いとされている貧血などの状態を一度に把握することが可能となります。
本日4月25日は、世界保健機関(WHO)が世界マラリア・デーに定めており、世界各地でマラリアエリミネーションに向けた活動が行われています。マラリアは適切な予防措置と早期発見、早期治療により感染者数および死亡者数を減らすことができる疾患です。
新興国や開発途上国のマラリアまん延地域や、マラリア流入防止に力を入れている先進諸国においてXN-31を広く活用いただくことでマラリアの早期発見・早期治療に貢献できるよう、今後、欧州での市場導入に加えて、各国の薬事承認取得を進め、発売地域を順次拡大していきます。
今後もシスメックスは、事業活動を通じた医療課題解決や医療アクセス改善のための活動を推進し、開発途上国を含めた世界中のお客様に安心をお届けしていきます。
※発表日現在、本製品は輸出専用品であり、日本国内で医療機器としてご使用いただくことはできません。
【新製品の概要】
販売名: | Automated Hematology Analyzer XN-31 | |
対象施設: | 大学病院・専門病院・検査センター等 他 | |
対象市場: | 欧州 (他、アフリカ、アジア諸国に順次拡大予定) | |
発売時期: | 各国許認可取得後、順次発売予定 | |
測定項目: | MI-RBC#/MI-RBC%※7, RBC, WBC, PLT, HGB, HCT, MCV, MCH, MCHC | |
フラッギング情報※6: | マラリア種に関する情報(熱帯熱マラリアまたはそれ以外) | |
研究用項目: | マラリア原虫ライフステージに関する情報 (リングフォーム、トロフォゾイト、シゾント、ガメトサイト、等) |
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処理能力: | 最大55テスト/時間 (LMモード) |
【外観】
Automated Hematology Analyzer XN-31
【注釈】
※1 | 発表日現在の発売予定地域はCEマークの取得により医療機器として販売が可能な欧州諸国です。アフリカ・アジア地域の一部諸国は各国許認可取得後発売開始となります。 |
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※2 | CBC8項目: 末梢血中の赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、赤血球の平均的な大きさ(MCV)、赤血球1個あたりの平均ヘモグロビン量(MCH)、赤血球中の平均ヘモグロビン濃度(MCHC)を指す。 |
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※3 | 出典: WHO 「World Malaria Report 2018」 |
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※4 | 感度: 100%(95%信頼区間97.0%-100%)、特異度: 100%(95%信頼区間92.6%-100%)。 出典: E. Pillay et la. Evaluation of automated malaria diagnosis using the Sysmex XN-30 analyser in a clinical setting Malaria Journal 2019 18:15 https://doi.org/10.1186/s12936-019-2655-8(英語のみ) |
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※5 | 本結果のみで診断を行うことはできません。その他の臨床情報を用いた医師の総合的な判断により確定診断がなされます。 |
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※6 | フラッギング情報: 予め装置に設定した基準値の範囲以外の数値が出た場合や、特定の異常検体の可能性を知らせる機能。検査の補助データとしてのみ使用され、診断に直結するものではありません。 |
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※7 | MI-RBC#/MI-RBC%: マラリア原虫等感染赤血球数および赤血球数に対する比率。 |
CSR活動ハイライト 「優れた技術でマラリア・エリミネーションに貢献します」 https://www.sysmex.co.jp/csr/social/solution/highlight.html |