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2008年Vol.9 No.3

論文

ルーチン診断手順におけるNEUT-X 測定の有用性:骨髄異形成症候群への適用

著者

Florence Cymbalista

Haematology Biology Department, Hopital Avicenne, APHP ( Public assistance-hospital of Paris )

Summary

骨髄異形成症候群 ( myelodysplastic syndrome;MDS ) は,よく見られる予後不良の悪性疾患であり,成熟赤血球の産生不能という共通の特徴を持った異なる骨髄疾患群の総称である. WHO の診断基準によると,MDS は以下の6群に分類される.
 ・5q- 症候群
 ・不応性貧血 ( refractory anaemia;RA )
 ・芽球増加を伴う不応性貧血 ( refractory anaemia with excess of blasts;RAEB )
 ・鉄芽球を伴う不応性貧血 ( refractory anaemia with ring sideroblasts;RARS )
 ・多血球系異形成を伴う不応性血球減少症( refractory cytopenia with multilineage dysplasia;
    RCMD )
 ・多血球系異形成と鉄芽球を伴う不応性血球減少症 ( RCMD with ring sideroblasts;
    RCMD-RS )
これらの症候群にはすべての年齢層が罹患し得るが,MDS 発症のリスクは加齢とともに増大する. MDS と診断される患者の平均年齢は60歳代半ばである. MDS と診断することは,患者の20 ~30%には,急性骨髄性白血病 ( acute myeloid leukemia;AML ) に転化し,ほとんど致死的となるリスクがあることを意味する. これ以外のMDS の致死的合併症には,しばしば感染症を伴う血球減少症がある. 最近までMDS の治療は輸血などの支持的治療のみであったが,高リスクMDS の治療法が進歩してきたことにより,MDS の分類を早期かつ正確に行うことが重要となってきている. 5q 欠失を伴うMDS の一部には,免疫抑制薬であるレナリノマイドTM( LenalinomideTM ) が非常に有効であることが証明されている. エリスロポエチン治療などの早期の支持療法は有効であり,疾患の経過において輸血の必要性が低減される. MDS を発症すると,高齢患者に多い他の合併症の治療効果を低下させることがある.

残念ながらMDS の診断上の特徴は多様かつ非特異的である. 大多数のMDS 患者には貧血が見られるが,われわれの検査室ではすべての血算検査のうち3分の1が貧血を示す. MDS の貧血は通常,正球性または大球性である. MDS 患者の40%には診断時に好中球減少症が見られ,3分の1には血小板減少症が見られる. これらの異常は単独で存在したり併存したりする. こういった特徴は非常に非特異的であり,血球分析装置で得られる標準的なパラメータはMDSの鑑別診断に役立つ情報を提供してくれない. 最終的な診断は末梢血と骨髄の形態学的検査による.

Note(s)

この論文は、Sysmex European Haematology Symposium 2007 にて、Sysmex Outstanding Science Award 第一位を受賞した論文を翻訳したものです.