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2007年Vol.8 No.2

論文

尿沈渣の視野容量について - 理論値と実際値-

著者

一柳 好江

岐阜市民病院 中央検査部

Summary

2006年3月に血尿診断ガイドライン検討委員会により「血尿診断ガイドライン」が提唱され,顕微鏡による尿沈渣検査で,赤血球およそ5個/HPF ( 400倍強拡大1視野 ) 以上,あるいは,無遠心尿を用いたフローサイトメトリー法( FCM法 ) で,およそ20個/μL以上を血尿とすると定義された. 尿沈渣検査法におけるHPF1 視野は,理論的には0.45 μ L の無遠心尿に相当するが,種々の要因により理論値と実際値には大きな隔たりがある. 今回,我々はコバスライドを用いて,この差異の検証を行なった. 無遠心尿と遠心尿で有形成分を計数し,その値を比較したところ,粒子の小さい有形成分ほど理論値に対する割合が少なく,これは,粒子の小さい有形成分ほど遠心過程での上清への残留や管壁への吸着があり沈降しにくいためと思われた. 尿沈渣検査法におけるHPF1 視野の無遠心換算値は,今回の検証結果では,扁平上皮0.31 μL,白血球0.20 μL,赤血球0.20 μLであった. 赤血球の値は,血尿診断ガイドラインにおける診断基準である20個/μLと5個/HPF ( 400倍強拡大1視野 ) の関係に合致していた.

Key Words

無遠心, 尿沈渣, 視野容量, コバスライド, セキスイ検鏡プレート