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2005年Vol.6 No.3

総説

「測定の不確かさ」の概念と基本的な評価方法について

著者

白上 篤, 新改 悦郎, 北川 隆

シスメックス株式会社 学術本部 学術情報部

Summary

近年,臨床検査の分野において,「トレーサビリティ ( traceability )」や「測定の不確かさ(uncertainty in measurement,以下,不確かさ)」への関心が急速に高まってきている。この背景として,欧州を中心とした ISO国際規格にもとづく国際標準化の動き,国内における臨床検査標準化の新しい体制作り等がある. 臨床検査標準化へのアプローチとしては,これまでも“ 内部・外部精度管理を含めた精度保証にもとづく検査の質の向上 ”といったいわゆる精度保証 ( Quality Assurance ) の手法が検査室に浸透し,ここ30年の間に日常検査の精度は著しく改善してきた. 今後は精度保証の視点に加えて,“ トレーサビリティ ”,“ 不確かさ ”という考え方で,測定結果の信頼性,質を表現し,臨床検査の標準化を実現していこうという動きが出てきている.

本稿では,これらの概念が生まれた背景,基本用語の定義,不確かさの概念とその基本的な評価方法,および臨床検査におけるトレーサビリティの最近の動向についてレビューし,現在臨床検査室に求められている事項について概説する.

Key Words

測定の不確かさ, トレーサビリティ, GUM, ISO15189, JCTLM