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2003年Vol.4 No.2

総説

便潜血検査による大腸がん検診

著者

東塚 伸一

財団法人兵庫県予防医学協会

Summary

免疫学的便潜血検査( 以下:便潜血検査 )をスクリーニング法とした大腸がん検診は,平成4年に老人保健法に基づく保健事業( 以下:老健法 )に組み込まれたことで,全国的に普及し,年を経るごとに受診者数を伸ばしてきた. しかし,平成10年,突然に旧厚生省は『がん検診は既に定着した』との理由で,全てのがん検診を老健法から外し,一般財源化によって地方自治体の自主的施行に委ねられることとなった. それまで順調に受診者数を拡大してきた大腸がん検診が予算面から縮小,あるいは廃止へと向かわないか懸念されたが,幸いにもタイミング良く,同年に厚生省の研究班から出された「がん検診の有効性評価に関する研究」報告の中で,「便潜血検査による大腸がん検診には死亡率減少効果を示す十分な根拠がある. 従って,現行の検診を継続することを勧奨する.」との研究結果が示された. 大腸がん検診に従事する我々をはじめ,検診関係者にとっては何よりも朗報であったと考える. 一部の地域で廃止,あるいは廃止を検討中との報道を目にしたが,結果的には,ほとんどの地方自治体で継続実施されている.

現在,地域大腸がん検診の受診者数は日本全国で約575万人であり,職域や個人検診の受診者を合わせると優に700万を超える人々が“ 便潜血検査による大腸がん検診 ”を受診されていると考える.

本稿では,“ 便潜血検査による大腸がん検診 ”の概要を解説し,実際の検診成績からその効果や問題点について,私見を述べる.

Key Words

大腸がん検診, 免疫便潜血検査, カットオフ値, 感度, 特異度