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2011年Vol.34 Suppl.3
総説三室 淳
自治医科大学医学部分子病態治療研究センター 分子病態研究部
ヒトの体は骨格,筋肉,種々臓器とそれらをつなぐ神経・心血管・ホルモン・血液などのネットワークが整然と機能している.血液凝固反応は,そのネットワークの一つである血流を維持する生体防御機構である.血管の中を血液が流れているということは一見あたりまえのようだが,血管の中では血液は固まらず血管の外にでれば直ちに固まる ( 凝固する )という難しい命題を抱えている.この命題をなしとげているのが,血小板・血液凝固と制御系・線溶系・血管である.
血液に接する血管内皮細胞はトロンボモジュリンに代表される抗血栓因子を産生して血栓ができるのを押さえ,血流を保つように働く.血小板は血流中では安定した状態で流れているが,出血が起こると真っ先に出血部位にフォン・ヴィレブランド因子を介して結合することで止血に働き,活性化して凝集物質を放出することでさらに血小板を集めるとともに凝固反応の場を提供する.凝固因子は血液中を活性のない前駆体として流れていて,出血がおこると凝固因子が活性化されて血小板とともに止血に働き,最終的にはフィブリンをつくり止血する.凝固制御系は凝固反応を調節し,血栓ができすぎて血管を塞がないように働いている.一方,止血のためにできた血栓は出血部位が治るためには邪魔になる.この血栓を除去し治癒に向かわせる線溶系も通常は待機状態にあり,フィブリンができると適切な時期にそれを溶かすように働き,血栓が溶解されると線溶反応も終息する.すべてについて詳細に説明することはできないので,凝固反応の最近の理解と凝固系が関わる血栓形成以外の生体反応について述べてゆく.
凝固, 組織因子含有マイクロパーティクル, プロテアーゼ活性化レセプター, ADAMTS13
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