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2011年Vol.34 Suppl.2

総説

血液形態検査のための形態学の基本

著者

東 克巳

杏林大学保健学部 臨床検査技術学科 臨床血液学

Summary

臨床検査は現代医療には欠くべからざる分野の一つとなってきている.また医学や医療技術などそれらの手法の進歩は日進月歩といわれるように,その進化には想像を絶するものがある.臨床検査分野もこの例外に洩れることなく進化している.特に診断試薬や医療機器,あるいはそれらの解析手法の開発には目を見張るものがあり,医療現場を数年離れると「浦島太郎」状態である.

血液形態検査の白血球分類のスクリーニング検査も同様で,従来は血液をガラスに塗抹して形態を観察していたが,現在ではフローサイトメトリーの手法を用いて分類する方法が開発されている.もちろん,塗抹標本を作製し染色した標本を自動分析する方法も従来からあったが,これとて最近ではさらに精度よく分類してくれる機器が登場してきている.

良質な医療を保証することの一つに正確な臨床検査結果がある.正確な臨床検査結果が提供されるが故に正確な診断が可能で,その結果,正確な治療が可能となる.正確な治療は正確な臨床検査結果なくしては不可能である.また治療効果判断も検査結果なくして正確に把握することはできないことが多い.

臨床検査には,数値を扱う客観的結果が得られる検査と画像を中心とした主観的結果しか得られない検査がある.血液分野では血球数算定は数値で表示される客観的結果であるが,形態検査は主観的検査の代表である.しかしながら,塗抹標本での形態検査は高々5μL の全血を使用するのみであるが,この血液の量で多数の情報が得られる検査は他にはない.この塗抹標本1枚から最大限の情報を得られるかどうかは標本を観察する観察者の力量に左右されることは言うまでもない.また,最大限の情報を得るためには「良い標本の作製」と「良い染色」が重要であることも言うまでもない.

本稿では正確な細胞判定ができるようになるための血液形態学の基礎について概説する.

Key Words

血液形態検査, 血液形態学と細胞機能, 核クロマチン構造, 血液像染色