Sysmex Journal Web ※このコンテンツは医療従事者向けです

2011年Vol.34 Suppl.2

総説

血小板減少症

著者

矢冨 裕

東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻病態診断医学講座 臨床病態検査医学分野

Summary

すべての血球は骨髄で産生されるが,血小板は,その前駆細胞である骨髄巨核球により産生される.造血幹細胞から巨核球への分化・成熟,さらには,血小板産生において,多くのサイトカインが作用するが,その中でも,主に肝で産生されるトロンボポエチンが最も重要な血小板産生造血因子である.分化・成熟した巨核球は,細胞質が分裂することなく,核が多倍体化しながら成熟し大型化する.この成熟した巨核球の細胞質が最終的に断片化し,血小板が産生される.末梢血中の血小板数は個体間で差が大きく,15~36×10/μL 程度である.その寿命は8~10日とされ,最終的には網内系で処理される.体内では,血小板全体のおよそ1/3は脾臓にプールされていると想定されている.血小板数は,血小板産生,消費・破壊,分布のバランスにより,循環血液中で一定に保たれているが,これらのバランス機構に異常が発生すれば,血小板数に異常を認めることになる.

血小板は血栓形成において中心的役割を担っており,数・機能の総体としての血小板機能が低下すると,生理的止血能が低下して出血症状がもたらされる.一方,血小板機能が亢進すると病的血栓症の発症に繋がる.種々ある血小板疾患の中で,血小板減少症は,重大な出血症状を起こしうるものとして,臨床的に最も重要である.血小板減少症に遭遇したら,その原因を同定することが最も重要であり,これは治療に直結する.本総説では,血小板減少症の臨床の基本を概説する.

Key Words

血小板減少症, EDTA 依存偽性血小板減少症, 巨大血小板, 網血小板, トロンボポエチン