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2011年Vol.34 Suppl.1

論文

全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i による細菌スキャッタグラムと尿培養による細菌同定結果の比較

著者

小澤 秀夫*1, 矢島 尚子*2, 小林 秀行*3

*1 川崎医科大学附属川崎病院 泌尿器科
*2 川崎医科大学附属川崎病院 検査部
*3 シスメックス株式会社 学術部

Summary

尿中有形成分分析装置UF-1000i  ( UF-1000i;シスメックス社) における細菌スキャッタグラムのドットパターンによる細菌菌種推定の可能性について検討した.UF 計測を施行しWBC10 個/μL 以上,かつ同検体の尿培養細菌同定検査または淋菌RNA 増幅法にて細菌菌種が判明した81 例の尿検体を用いた.細菌スキャッタグラムにおいて,ドットのパターンは原点を通りX 軸と30 度をなす線より明らかに下に分布する“ 下方パターン ”,30 度の線近傍より上に分布する“ 上方パターン ”,下方から上方まで幅広く分布する“ 幅広パターン ” の3 種類に分けた.分類内訳は,“ 下方パターン ”57%,上方パターン20%,幅広パターン23%であった.“ 下方パターン ” の菌種は,グラム陰性桿菌類が多数 ( 89% ) を占めたが,グラム陰性球菌類に属する淋菌も認めた.“ 上方パターン ” では,逆にグラム陽性球菌類を多く ( 69% ) 認めた.“ 幅広パターン” では,複数菌が検出されることが多く,メチシリン耐性球菌類 ( MRS ),ESBL 産生大腸菌など多剤耐性を示す細菌が32%において検出された.“ 幅広パターン ” 以外で多剤耐性菌が5%しか検出されなかったのと比較し,“ 幅広パターン ” では多剤耐性菌検出頻度が有意に高かった ( p=0.02 ).

UF-1000i  の細菌チャンネルのスキャッタグラムのドットパターンから,尿培養結果を待つことなく,受診当日に尿路感染の起炎菌が桿菌であるか球菌であるかを推測することが可能であると思われた.この方法は,尿路感染症症例の抗菌薬選択における目安になる可能性が示唆された.

Key Words

尿路感染症, 起炎菌, UF-1000i , 抗菌薬