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2011年Vol.34 Suppl.1

総説

質的精度を狙った尿沈渣検査の技術向上の試み —ISO と尿沈渣検査—

著者

宿谷 賢一, 田中 雅美, 下澤 達雄

東京大学医学部附属病院 検査部

Summary

ISO 15189は臨床検査室に特化した国際規格である.「医療の質と安全」が問われる現代社会において,臨床検査室はその「品質と能力」を具体的に臨床医と患者に示さなければならない.

ISO 15189の適応範囲は機器分析のみではなく,尿沈渣検査も適応範囲に該当する.しかしながら,尿沈渣検査は機器分析とは異なり,検査マニュアルである標準作業手順書 ( Stand Operation Procedure : SOP ) に従って検査を実施しても,精度の高い検査には繋がらないことがある.原因は,形態鑑別の技術レベルにあり,この技術レベルの維持には,教育が必要不可欠である.ISO 15189の教育に関する事項は,「5. 技術的要求事項」として詳細に規定されている.

日常業務における尿沈渣検査の教育状況は下記にまとめられる.病院外では,臨床検査技師会やメーカー各社などの主催による尿沈渣検査関連の研修会が数多く開催され,また,専門書は数多く発刊されて尿沈渣検査の教育環境は整備されつつある.しかしながら,各施設において尿沈渣検査の指導できる技師は少ないことから,技術習得は,個人に任せられている状況である.現在,ISO 15189 では,尿沈渣検査の技術レベルの管理も重要視されており,それぞれの施設内でのSOP の整備やSOP に基づく技術教育の実施,内部精度管理としての個人の力量評価など,尿沈渣検査の教育システムの構築が必要である.

平成19年6月に開催された第41回国公私立大学病院臨床検査技術研修 ( 一般検査領域 )の総合討議では,尿沈渣検査の技術教育整備の必要性が重要課題に挙げられ,今後,各施設で教育カリキュラムを作成・実施することが提案された.今回,このような現状を踏まえて東京大学医学部附属病院検査部で運用している尿沈渣検査の教育カリキュラムについて提示する.

Key Words

尿沈渣検査, ISO 15189