Sysmex Journal Web ※このコンテンツは医療従事者向けです

2020年Vol.21 No.3

論文

法医解剖試料を用いたSIGNIFY™ ER の有用性評価と トライエージDOA との比較

著者

奈女良 昭, 村田 和大, 吉川 尚孝, 長尾 正崇

広島大学 大学院医系科学研究科 法医学

Summary

検視や法医解剖時の薬物検査にイムノアッセイを利用した検査キットが汎用されている。本研究では,薬物中毒検出用キットSIGNIFYTTM ER ( アボット ダイアグノスティクス メディカル株式会社 ) に注目し,法医解剖で得られた尿試料を用いて感度や特異性,交差反応性などを評価し,その有用性についてトライエージDOA ( アリーア メディカル株式会社 ) と比較・検証した。検査試料には,本学にて法医解剖され,尿が採取できた94例を用いた。尿中の薬物および代謝物濃度は,ガスクロマトグラフ質量分析計 ( GC-MS:Gas Chromatograph-Mass Spectrometer ) や高速液体クロマトグラフ質量分析計 ( LC-MS:Liquid Chromatograph-Mass Spectrometer )を用いて定量した。その結果,感度や特異性などの特性については,両キット間に大きな差は認められなかったが,交差反応性には差が認められた。特に覚せい剤とベンゾジアゼピン系において,反応する薬物種や陽性となる最小濃度に顕著な違いが認められた。このような簡易検査キットでの結果は,あくまでも薬物服用の目安であり,結果に一喜一憂することなく解剖で得られた知見や機器分析結果と対比しながら慎重に解釈すべきである。

Key Words

SIGNIFY ER, トライエージDOA, 薬物中毒検出用キット, 性能比較