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2019年Vol.20 No.3

レポート

EDTA 依存性偽性血小板減少症における血小板数推移パターンおよび抗凝固剤としての硫酸マグネシウムの有用性

著者

土屋 直道, 松尾 収二

公益財団法人 天理よろづ相談所病院 臨床検査部

Summary

EDTA依存性偽性血小板減少症 ( EDTA Dependent Pseudothrombocytopenia:以下,EDP ) は,血算 ( CBC ) 用採血管で使用される抗凝固剤EDTA 塩の存在下で血小板凝集が起こるために生じる,試験管内の現象である1,2).この現象は,GP Ⅱb/Ⅲa などの血小板膜上の膜蛋白質に配位しているCa2+ イオンがEDTA 塩のキレート作用により奪われることで構造が変化し露出した潜在性抗原に,当該患者の血液中に存在する免疫グロブリンが反応するため生じると考えられている3,4).EDP の発生頻度は0.09 ~0.11%5) といわれており,悪性腫瘍,肝疾患,自己免疫疾患,抗菌薬投与患者など免疫刺激状態にある基礎疾患との関連が指摘されている6,7)が,健常人にも認められる.EDP が見逃されると,血小板抗体や骨髄穿刺など過剰な検査が追加されたり,血小板輸血など不要な治療が行われたりするなど,重大な医療過誤に繋がりかねない8)
EDP に対する血小板数測定の対策としては,①ボルテックスミキサーで2~3 分攪拌して物理的に血小板の凝集をほぐす方法,②過剰量のEDTA 塩を添加する方法,③カナマイシンを添加
( 10mg/mL )する方法7),④プレイン採血管にて採血後,直ちに血球分析装置で測定する方法,⑤FC 管4),ヘパリン,凝固検査用 ( クエン酸ナトリウム),血糖検査用( フッ化ナトリウム) などEDTA 以外の市販の採血管を用いる方法,⑥硫酸マグネシウム ( MgSO₄・7水和物,以下MgSO₄) を用いる方法9,10)などがあるが,これらの方法について詳述した文献は少ない.そこで本論文では,当院で行ったMgSO₄ を用いた方法についての検討を紹介する.