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2000年Vol.1 No.3

総説

臨床検査値の基準範囲とその加齢変化に関する検討

著者

西田 敏信

徳島大学医療技術短期大学部 衛生技術学科

Summary

臨床検査業務の重要なポイントの一つは, 真の値を正確に, 精密に, 素早く報告することである. また, 検査を受けた人にとって望ましい判定基準を提供することも極めて重要である.

一方, 臨床検査値は, 遺伝( 個体差, 性別, 種族差 ), 生活環境( 食事, 姿勢, 運動, 飲酒, 喫煙, 職業, 風土 ), 時間( 日内, 日差, 季節, 年齢, 性周期, 妊娠 )等種々の要因により変化することが知られている. しかしながら,性, 年齢等で細分化された基準範囲に関する報告例は少ない. 多くの施設では, 理想的な健常者に対するただひとつの基準範囲を設定し, すべての受診者にこの判定基準の適用を強いていることが多い. この背景には, 要因別のデータ解析に膨大な数の臨床検査デ ータが必要であること, 及び, データを解析するための適切な道具( パソコンとソフトウェア )が少ないことが挙げられる.

著者は, スクリーニング検査として頻繁に利用される血液学検査と臨床化学検査の32項目について, 集団健診等の受診者から選択した多数の健常者データを中心に, 性, 年齢別の基準範囲を計算した. この時,分布型として, 正規分布, 平方根正規分布, 対数正規分布型の 3 つの分布型に分類し, 一連のデータ処理をパソコン上で実行できるアプリケーションを開発した. 得られた性, 年齢別の基準範囲を用いその加齢変化について検討したので紹介したい.

Key Words

基準範囲, 加齢変化, 加齢変化図( 鋳型 ), 臨床検査値