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2017年Vol.18 No.3

論文

多項目自動血球分析装置 XN シリーズのバージョンアップに伴う造血器腫瘍細胞検出能の評価

著者

永井 直治, 高橋 陸, 津田 勝代, 嶋田 昌司, 松尾 収二

公益財団法人 天理よろづ相談所病院 臨床検査部

Summary

シスメックス株式会社の多項目自動血球分析装置XN シリーズはバージョンアップに伴い造血器腫瘍細胞に対するフラグ ( Blast?,Abn Lympho? ) が改良された.そこで今回,旧バージョンとの比較を行った.

対象はEDTA2K 加血のうち,塗抹標本にて芽球もしくは異常リンパ球を認めた358 件,陰性対照100 件を用い,採血後4 時間以内に旧バージョン ( Ver.16 ) および新バージョン ( Ver.20 ) で測定した.WDF チャンネル( “Blasts/AbnLympho?”Flag ) およびWPC チャンネル( “Blasts?” もしくは“Abn Lympho?” Flag ) の感度,特異度を比較した.旧,新バージョンの腫瘍細胞出現に対する感度,特異度は,旧バージョンは63.4 および100%,新バージョンは74.0 および100.0%であった.腫瘍細胞を系統別に見た場合,各々の旧,新バージョンの感度は,骨髄球系は65.2 および71.8%,単球系は77.6 および89.4%,リンパ球系は44.9 および65.4%,赤芽球系はともに57.1%であり単球系およびリンパ球系において大きな改善が見られた.新バージョンにおける偽陰性の腫瘍細胞数は,骨髄球系8 ~ 2,995/μL,単球系7 ~ 126μL,リンパ球系4 ~ 5,676μL,赤芽球系57 ~ 140μL であり,骨髄球系およびリンパ球系にて細胞数が多いにもかかわらず見落とす可能性があった.Blast? やAbn Lympho? のようなフラグのみでは腫瘍細胞の検出には限界がある.WBC Abn Scattergram,Lymphocytosis,Monocytosis,IG Present など,造血器腫瘍細胞が認められる検体で付記されやすい他のメッセージも使用することや,鏡検条件に特定疾患条件や診療科条件も交えた運用を構築することが重要である.

Key Words

XNシリーズ,腫瘍細胞,感度