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2013年Vol.14 No.1

論文

血液培養陽性症例におけるプロカルシトニン測定の検討

著者

小林 曜子*1, 直本 拓己*1, 高阪 智史*1, 中村 正邦*1, 林 伸英*1, 木下 承晧*2, 河野 誠司*1

*1 神戸大学医学部附属病院 検査部
*2 神戸大学医学部附属病院 医療技術部

Summary

プロカルシトニン ( PCT ) は全身性細菌感染症,敗血症などにおいて多臓器から産生され,血中濃度が著明に上昇するが,局所での感染やウイルス感染では高値を示さないことから,敗血症の特異的なマーカーとして用いられている.今回我々は簡便かつ測定時間が20 分と迅速で,24 時間対応が可能であるミニバイダスを使用し,バイダスアッセイキットB・R・A・H・M・S PCT ( 共に,シスメックス・ビオメリュー社 ) を用いてPCT 値を測定し,血液培養陽性となった患者61 症例および,病院職員の健常者20 例を対象に血液培養陽性患者における敗血症の起因菌とPCT 値との関係について検討を行った.さらに血液培養陽性日からのPCT 値の推移を調査した.

敗血症の起因菌をグラム陰性桿菌 ( GNR ),グラム陽性球菌 ( GPC ),グラム陽性桿菌 ( GPR ) および真菌 ( YE ) の4群と健常者群の間で比較すると,全ての菌種群で有意な差がみられた.特にGNR はPCT 値が高く,GPC,GPR と比べても有意な差がみられた.YE は高値を示さず,PCT 値は軽度上昇にとどまった.PCT 値が0.5ng/mL 未満の検体ではコンタミネーションを起こしやすい表皮常在菌が多く検出された例および,カテーテル関連の局所感染例が多かったことから,コンタミネーションの有無を判断することが重要であるとともに,局所感染の有無を注意深く観察する必要があると考えられた.また,PCT 値が高値の検体では重症外傷,手術など感染以外でも上昇する場合もあり,鑑別が重要である.PCT は血液培養提出日に感染かどうかの迅速な判断が可能であるが,一方でPCT 値が0.5ng/mL 未満であっても翌日に上昇する可能性もあることから,継続して測定することが重要であると考えられた.

Key Words

PCT, VIDAS, 血液培養陽性