Sysmex Journal Web

2013年Vol.14 No.1

論文

水酸化ナトリウム-ドデシル硫酸ナトリウム溶液を用いた全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i による,液体試料中の細菌のグラム染色性を判定する迅速法の創案

著者

和田 淳, 河野 麻理, 高木 由里, 河内 佐和子, 森川 隆

シスメックス株式会社 学術本部 学術部 セルアナリシスセンター

Summary

背景:細菌性の尿路感染症 ( UTI ) の治療に用いる抗菌薬は,尿中に存在する細菌のグラム染色性を知ることでより適切に処方できる.そこで,UTI 治療に有用な,液体試料中に存在する細菌を簡便かつ迅速にグラム判定する方法の考案を試みた.

方法/主要な発見:細菌細胞壁の厚さや構造の差は,ある種の化学物質に対する耐性にも反映される.今回我々は,水酸化ナトリウム-ドデシル硫酸ナトリウム水溶液 ( NaOH-SDS 溶液 ) を細菌の細胞壁構造の識別のために,また全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i ( 以下,UF-1000i ;シスメックス社 ) を定量的な細菌計数に使用して,尿などの液体中に存在する細菌のグラム染色性を判定することを試みた.まずEscherichia coli ( 大腸菌 ) の培養液にNaOH-SDS溶液を直接添加することで,NaOH-SDS 溶液が液体培地中のグラム陰性菌を溶解できることを示した.また,同じ培地中で培養したグラム陽性菌Enterococcus faecalis ( 腸球菌 ) は同じ条件では完全には溶解されないことも示した.次に,3種のグラム陽性菌株と4種のグラム陰性菌株を用いて,NaOH-SDS 処理の反応時間の最適化を試み,室温での至適反応時間が5分間であることを明らかにした.最後に,この方法が一般化できるかどうかを評価するために,培養液中で培養したグラム陽性菌およびグラム陰性菌8種ずつ,または健常人ボランティア尿中で培養したグラム陽性菌およびグラム陰性菌4種を同じ方法で処理し,実験に使用したすべてのグラム陽性菌が,この方法で定量的にグラム陰性菌と識別できることを実証した.

結論/重要性:本法を用いることにより,液体培地中の細菌のグラム染色性を,UF-1000i による試薬処理前後の細菌計数値の比較だけで10分以内に容易に識別することができた.本法は,UTI の既往歴がなく起炎菌の推定が容易でないUTI 患者へ処方する抗菌薬を選択する際などに,特に有用であると考えられた.

Key Words

UF-1000i , 尿路感染症, 細菌, グラム染色