Sysmex Journal Web

2012年Vol.13 No.3

論文

多項目自動血球分析装置 XN シリーズの新規異常細胞検出チャンネルにおけるスキャッタグラム上の正常白血球の出現位置の検討

著者

河内 佐和子, 河野 麻理, 高木 由里, 和田 淳, 森川 隆

シスメックス株式会社 学術本部 セルアナリシスセンター

Summary

新たに開発された多項目自動血球分析装置 XN シリーズは,異常白血球細胞を検出する WPC チャンネルを搭載している.WPC チャンネルでは,専用試薬が白血球の細胞膜に小孔を形成し,主に核内に存在する DNA を染色した後,それぞれの細胞の前方散乱光 ( FSC ) ・側方散乱光 ( SSC ) ・側方蛍光 ( SFL ) の強度を測定し,それらの情報を WPC スキャッタグラムおよび WPC ( SSC-FSC ) スキャッタグラムの 2 つの二次元スキャッタグラムとして表示する.

今回我々は,白血球の主要なサブタイプである Tリンパ球,単球,好中球が,WPCスキャッタグラム上のどの位置に出現するのか,またその位置に出現する理由について,健常人ボランティア由来の正常白血球細胞を用いて検討した.末梢血より分離した Tリンパ球・単球・好中球は,全血の WPCスキャッタグラム上に出現する左・中央・右のクラスターとそれぞれ一致していた.さらに Tリンパ球は,WPC ( SSC-FSC ) スキャッタグラムで上下2つのクラスターに分離しており,FSC の強度は Tリンパ球<単球<好中球の順であった.試薬反応後に共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡で解析したところ,3つの白血球サブタイプはほぼ同じ強度で染色されていた.透過型電子顕微鏡による観察では,試薬反応後の内部構造は単純な方から Tリンパ球<単球<好中球の順であり,特に Tリンパ球は細胞質がほとんど流出したものと,細胞質が比較的良好に残存し核が緊密な細胞の 2種類が見られた.走査型電子顕微鏡による観察では,試薬反応後の大きさは小さい方から Tリンパ球<単球<好中球の順であり,特に Tリンパ球は,表面の凹凸がなくなった小さな細胞と,表面の凹凸が比較的良好に保持されているやや大きな細胞の 2 種類が見られた.Tリンパ球の形態が 2 種類に大別される理由について汎用フローサイトメーターを用いて検討したところ,小さい方の細胞からは表面抗原の流出が見られたことから,Tリンパ球は細胞膜の損傷の度合いの差で,大小 2 種類の形態になることが示唆された.

以上の結果から,WPCスキャッタグラム上の 3つのクラスターを形成する主要な白血球サブタイプは,左から Tリンパ球・単球・好中球の順であること,また WPC ( SSC-FSC ) スキャッタグラム上では,Tリンパ球は細胞膜の損傷の度合いに応じて上下2つのクラスターとして出現すること,が示された.

Key Words

多項目自動血球分析装置, XN シリーズ, WPC チャンネル, スキャッタグラム