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2010年Vol.11 No.2

論文

尿路感染症患者由来尿を用いた全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i による細菌種推定の可能性の検討

著者

村谷 哲郎*1,2, 小林 とも子*1,2, 美那元 勇希*1,2, 生野 陽子*2, 右田 忍*2

*1 株式会社キューリン 検査部
*2 ひびき臨床微生物研究会

Summary

患者尿208検体を用いて,全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i ( 以下,UF-1000i ;シスメックス社 ) による細菌数および細菌種の推定を培養同定試験と比較検討した。ドルガルスキー寒天培地または血液寒天培地による定量培養の結果とUF-1000i による細菌数測定の結果はほぼよい相関を認めたが,UF-1000i の方が10倍高い傾向を認めた. また,UF-1000i で104cfu/mL 以上と判定され,定量培養で菌の発育を認めなかった16例中5検体はグラム染色鏡検では陽性であり,この理由として抗菌薬の投与や使用した培地に発育しにくい細菌の存在が推定された.

UF-1000i の細菌チャンネルのスキャッタグラムのX軸からの角度を,同定済み菌株の懸濁液を用いて測定したところ,グラム陽性球菌の角度は40°前後,グラム陽性桿菌である Corynebacterium の角度は43°,グラム陰性球菌である Neisseria gonorrhoeae の角度は11°,グラム陰性桿菌は20°前後に分布しており,桿菌と球菌の差は認めず,グラム陽性,陰性で違いが認められるという結果となった. 患者検体を用いた場合のグラム陽性菌,グラム陰性菌の鑑別に関しては,スキャッタグラムの角度30°以下であれば,グラム陰性桿菌である感度が89.2%と高率に一致していたが,角度30°以上で,少なくともグラム陽性菌が検出される感度は55.8%と低かった. また,グラム陽性菌だけが分離された検体の83.3%が30°以上を示したことを考えると,抗菌薬選択時のある程度の目安となる可能性があると考えられた.

Key Words

尿路感染症, 起炎菌, グラム染色, UF-1000i