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2010年Vol.11 No.2
総説高橋 俊司
市立札幌病院 検査部
近年,感染症診療において,あらためて評価されている微生物 ( 細菌 ) 検査にグラム染色がある. 感染症の初期診療や抗菌化学療法の選択に有用な情報をもたらすことから,グラム染色の必要性が高まっている. グラム染色は初期診療に限らず,抗菌薬投与後の治療経過の時々に有用な情報を短時間に報告することが可能で,感染症の“今の状態”を把握できる迅速検査として評価されている. では,培養同定検査や薬剤感受性検査の報告時間はどのように評価されてきたのか. これらの検査は細菌の細胞分裂を必要とすることから「細菌検査は時間を要する」検査とされてきた. 医療機関では耐性菌が大きな問題となっているが,いまだに細菌検査は「遅くて当然」的な認識があることも否定できない.
いま,抗菌化学療法は,PK-PD 理論による科学的な根拠に基づき安全で有効性のある投与法へと変わりつつある。台頭する薬剤耐性菌に対して有効性の高い抗菌化学療法を実現するためには,精度の高い細菌検査を迅速に行い,治癒率の高い抗菌薬を早期に選択することが重要である. 耐性菌の抑制をも考慮した抗菌薬の適正使用に貢献するには,臨床的に迅速な検査 ( 報告 ) 体制が望まれている.
本稿では,臨床の視点から「細菌検査は遅い」「いつ報告されるのかわからない」という問題点を細菌検査の業務運用などで改善して,感染症診療のプロセスに有用な情報を臨床が求める迅速性で提供するための考え方とその実際について紹介する.
感染症診療, 抗菌化学療法, 迅速報告, グラム染色, 自動細菌検査装置
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