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2009年Vol.10 No.2

レポート

カイコ蛹を利用した遺伝子組換えタンパク質の発現と凝固試薬への適用 - 完全長ウシ組織因子原料の開発と特性 -

著者

奥田 昌宏*1, 谷口 友邦*1, 吉田 和代*1, 熊野 穣*1, 岸 浩司*1, 長屋 英和*2, 村山 宗司*2, 柿 宏樹*2

*1 シスメックス株式会社 診断薬開発本部
*2 片倉工業株式会社 生物科学研究所

Summary

血液凝固検査試薬の開発は,先天性出血性疾患や凝固因子の発見に伴って進んできた. 1920年代に,牧草の肥料としていたクローバーを食べた牛が出血死するというスイート・クローバー病が北米で発生した. 一方,ムラサキウシゴヤシ ( ビタミン K 含有 ) を食べていた牛では出血が止まる作用も知られていた. こうした経験を基に,クローバーからクマリン誘導体が抽出され,今日の抗凝固薬ワルファリンが合成された. 同時代には,プロトロンビン ( 第Ⅱ 因子 ) を測定する Quick 一段法 ( 今日の PT 試薬 ) が開発されており,初期の凝固カスケードが提唱されていた. 欧州では,1943年に PT測定で臨床症状に合致しない先天性プロトロンビン欠損症患者が見つかったことがきっかけとなり,Paul Owren ( オスロ大学;ノルウェー ) が上述の Quick 一段法を改良して第Ⅴ因子とフィブリノゲン濃度に影響を受けないトロンボテスト試薬を開発した.