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平成29年度全国発明表彰「発明賞」を受賞

 シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長:家次 恒 以下「シスメックス」)はこのたび、鉄剤投与効果の迅速評価を可能にする血球分析装置について、公益社団法人発明協会が主催する全国発明表彰※1 「発明賞」を受賞しましたのでお知らせします。なお、授賞式は6月12日(月)東京において行われる予定です。

 全国発明表彰は、大正8年、我が国科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に始まり、以来、多大な功績を挙げた発明、考案、または意匠(以下「発明等」)、あるいは、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等が表彰されています。
 このたびシスメックスは、腎性貧血における治療方針の早期決定に寄与する、「鉄剤投与効果の迅速評価を可能にする分析装置」について、全国発明表彰の「発明賞」を受賞しました。

 慢性腎臓病を患う、特に透析治療が必要な患者さんに認められる合併症である腎性貧血は、腎臓機能低下により、赤血球を産生する働きを促進するエリスロポエチンというホルモンの分泌能力が低下することが原因といわれています。その治療法として赤血球の造血を促す赤血球造血刺激因子製剤(Erythropoiesis Stimulating Agents:ESA、以下「ESA」)および造血に不可欠な鉄剤を投与する方法が普及しています。しかしながら、鉄剤の過剰投与は、副作用を引き起こす可能性があるとされており、過剰な鉄剤投与を避けるために、投与した鉄剤が赤血球産生に機能しているかを早期に評価することが重要となります。

 本発明の分析装置は、投与した鉄剤が赤血球産生に機能しているかを早期に評価できるように、赤血球に成熟する前段階の細胞である網赤血球のヘモグロビン含有量に相当する網赤血球ヘモグロビン等量(RET-Hemoglobin Equivalent: RET-He、以下「RET-He」)を算出します※2。具体的には、血液の生体試料に光を照射して細胞から散乱光情報を取得し、この散乱光情報に基づいて網赤血球からなる細胞群を分類し、この細胞群に含まれる各網赤血球の散乱光強度の平均値を算出し、その平均値に基づいてRET-Heを算出します。

 本発明の分析装置によって算出されたRET-Heを用いることは、慢性腎臓病における腎性貧血を患う、特に透析治療が必要な患者さんへの治療に関する早期の方針決定に寄与します。さらに、鉄剤投与効果の早期評価は、過剰な鉄剤投与を避けるだけでなく、ESA投与効果の評価にもつながり、必要以上のESA投与を回避することで、医療コスト削減にも寄与します。

 本発明は、多項目自動血球分析装置 XT-2000、XT-4000、XE-2100、XE-5000、およびXN-Lシリーズ、XNシリーズに採用され、これらの分析装置は米国、欧州、中国、東南アジアなどを含む世界各国に提供されています。

 シスメックスは、今後も検査のさらなる質の向上や効率化に向けた技術開発を進めるとともに、患者さん一人ひとりに最適な医療に必要な価値の高い検査の実現に向けた研究開発に取り組んでいきます。


【受賞内容】

    受賞名: 平成29年度 全国発明表彰 発明賞
    受賞発明の名称: 鉄剤投与効果の迅速評価を可能にする分析装置
    受賞者: 池内喜郎、小国振一郎、福間大吾、今津雅範、Joachim Louisa Maria Linssen

【注釈】
    ※1 全国発明表彰について
全国発明表彰は、大正8年に第1回帝国発明表彰として開催され、文部科学省、経済産業省、特許庁、日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本弁理士会などの後援により発明者、および発明実施功績者、発明奨励功労者を表彰しています。発明の奨励育成を図り、日本の科学技術の向上と産業の振興に寄与することを目的としている表彰制度です。
主催の公益社団法人発明協会は、明治37年(1904年)の創立以来、発明奨励事業および工業所有権制度普及事業を通じて科学技術の進歩、発展に貢献している組織です。
 
    ※2 網赤血球中ヘモグロビン量
通常、鉄の欠乏状態は赤血球中のヘモグロビン量で評価されますが、この赤血球中のヘモグロビン量は、最大数か月前の赤血球の状態を反映することになり、投与した鉄剤が赤血球産生に機能しているかを早期に評価するのに不向きです。
一方、赤血球に成熟する前段階の細胞である網赤血球は、成熟するまでの1~2日間しか血液内に存在しません。網赤血球中のヘモグロビン量を指標とすることにより、投与した鉄剤が赤血球産生に機能しているかを早期に評価可能となります。
 




以上
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    その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。

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