シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長:家次 恒 以下「シスメックス」)と国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都、理事長:堀田知光 以下「国立がん研究センター」)は、がん診断分野における共同開発の促進のため、国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都、病院長:荒井保明 以下「中央病院」)内に共同研究ラボを開設しました。
がん治療においては、がんの確定診断に加え、薬剤の効果予測や、再発モニタリングなど、遺伝子やタンパクを用いた多くの検査が行われています。近年は、がん細胞の持つ特異的な性質をとらえ、効率よく作用する分子標的薬をがん治療に用いることが主流となってきており、その投与には、薬剤の効果や副作用を事前に予測するためのコンパニオン診断薬※1が必要となっています。また、がんをより早期に、かつ血液などで簡便にスクリーニングするなど、がんにおける新たな診断法の開発が求められています。
これまで、シスメックスと国立がん研究センターは、2013年9月にがんの診断薬開発に向けた包括提携契約を締結し、新たながん診断法の開発に向けた共同研究を推進してきましたが、2015年10月に新たながん診断法開発の更なる促進を目的に、国際基準に準拠したSysmex Cancer Innovation Laboratory (以下「SCI-Lab」)を中央病院内に開設しました。
SCI-Labは、がんの診療・研究を専門的に行う国立がん研究センターと、遺伝子、タンパク、細胞などの先端測定技術・装置を有するシスメックスが連携して運用します。
まずは、網羅的な遺伝子解析情報の日常診療への導入に向けた臨床研究を2016年1月に開始する予定です。網羅的な遺伝子解析において、国立がん研究センターが開発した遺伝子診断パネル※2(NCCオンコパネル)およびこれを測定する次世代シーケンサー※3を用いて患者さんの検体(がん組織)の網羅的な遺伝子解析を行い、治療方針の決定や投薬の判断などへの活用を目指した研究を行います。
さらに、シスメックスの関係会社であり、国内で初めてCLIA※4を取得した実績を持ち、品質管理に強みを有する株式会社理研ジェネシス(本社:東京都、代表取締役社長:塚原祐輔)と連携することにより、網羅的な遺伝子解析においてCLIA等に準拠した信頼性の高い検査の提供を目指します。
シスメックスと国立がん研究センターは、患者さん一人ひとりに適した医療の実現に向け、新たながん診断法を一日も早く患者さんにお届けするという共通の使命を果たすべく、より緊密に共同開発を進めていきます。
【Sysmex Cancer Innovation Laboratoryの概要】 |
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※1 | コンパニオン診断 特定の薬剤の効果や副作用のリスクなどを予測する検査。 |
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※2 | 遺伝子診断パネル 診療上重要な複数の遺伝子の変異、増幅や融合を同時に解析することができるアッセイのこと。NCCオンコパネルは、国立がん研究センターが中心となり開発された遺伝子診断パネルであり、日本人に特徴的な遺伝子変異を適切に診断できるように作られている。 |
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※3 | 次世代シーケンサー 遺伝情報を持つDNAの塩基およびこの配列を、同時並行で大量に読み取る解析装置。 |
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※4 | CLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendment; 米国臨床検査室改善法) 呼称“クリア” 米国の臨床検査室改善法で検査の精度管理を行うもの。その認証を受けたラボは、定期的な査察などによって品質維持を図ることが求められ、検査における品質管理を保証するものとなる。 |
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※5 | PCR 少量の DNA を大量に複製する、遺伝子増幅技術の一つ。 |