社会

人材の育成 —エンプロイージャーニー—

グローバルHRポリシー

 シスメックスでは、持続的な企業価値向上とエンゲージメントの高い組織をつくる上で、社員一人ひとりが充実したキャリアを実現できることが重要と考えています。採用から退職、セカンドキャリアまでの一連の流れを「エンプロイージャーニー」とし、多様な人材が自らのキャリアを構築し主体的かつ継続的に学ぶことを支援しています。
 キャリア自律を支援する基盤として、グループ全体でジョブ型人事制度を採用し、明確化された職務や人材要件に基づき、様々な施策を展開しています。これら一連の人材マネジメントは、「グローバルHRポリシー」を基本方針としています。

多様な人材の獲得

 シスメックス株式会社では、イノベーションの源泉は多様な人材であるとの考えから、様々な経験や価値観を持った人材の採用を行っています。「いつでも、どこでも、だれでも」をポリシーに、通年で採用活動を行うほか、国籍・人種・性別・年齢・職歴・障がいの有無を問わず、人物本位で採用を実施しています。
 職種別/ポジション別で募集を行っており、個々の専門性や志望に基づき応募できる採用形態を整えています。また、海外大学からの直接採用※1のモニタリングやジェンダー別の採用目標※2を設定し、多様な人材の獲得を積極的に推進しています。
 成長戦略を支える人材の獲得と育成は、人的資本戦略の重要テーマであり、付加価値生産性の持続的向上(2022年度実績:2,800万円/社員)と総労働力コストのバランスを考慮し、人的資本への投資を進めています。

  • 1 新卒の外国籍直接採用比率:2022年度実績 約10%
  • 2 新卒の女性採用比率:2022年度実績35.9%、2023年度目標 40 %

個・組織のニーズのマッチングに基づく配置

 シスメックス株式会社では、一人ひとりの自律的なキャリア形成のために、社員と組織のニーズのマッチングに基づき、配置を決定しています。
 新入社員の配属においては、本人と部門の希望に基づいたマッチングアルゴリズムを用いて、配属部門を決定する仕組みを採用しています。また、自律的なキャリア開発の基盤として、新たな職務にチャレンジすることができるアプレンティス制度を導入し、専門性の拡大などキャリアアップのための機会を提供しています。
 これらの施策の結果、2022年度は新卒採用の3年間離職率は0%、自発的離職率は2.7%と目標の3.0%未満を達成しました。

  • 空きポジションに基づき一定のトライアル期間を設け、その職務や組織で活躍できるかを見極めた上で、正式配属を決定する。

チャレンジを促し成果をたたえる評価・表彰

 シスメックス株式会社では、変化の激しい時代において、社内外の環境変化へアジャイルな対応を実現するために、CPM(Continuous Performance Management)の考えを取り入れた評価制度を導入しています。この制度では、期初の目標にこだわることなく、変化に応じて目標や施策を柔軟に見直し、加点的な評価を行うことで、チャレンジを促す仕組みをつくっています。上司と部下の間では、年間を通じて定期的に1 on 1ミーティングを行い、目標設定や評価だけでなく、日々の業務やキャリア形成などについて話すことで、リーダーシップへの信頼構築と部下の成長をサポートしています。年2回の企業風土調査では「リーダーシップへの信頼度」を測定し、リーダー育成と組織風土の改善を進めています。
 さらに、組織・グループをたたえる表彰制度「グループCEOアワード」では、毎年、グループ企業理念「Sysmex Way」を実践し、企業価値向上や社会課題の解決への貢献が認められた個人とグループを選出し、全社で共有しています。
 また、研究開発者のモチベーション向上と知的財産に対する意識を高めることを目的とした「特許大賞・優秀特許賞」「パテントマイスター」「出願記念賞」、さらに品質改善に関する成果を表彰する「品質アワード」を設けています。

個々に応じた育成プログラム

 シスメックス株式会社では、多様な働き方や価値観を尊重し、個々が描くキャリアに基づき、ビジネススキルやキャリアデザインについて自主的に受講できるプログラムを多数提供しています。
 自宅からも参加が可能なオンライン講座も充実させており、国境を超えて参加できるプログラムも用意しています。2022年度の研修プログラムへの従業員参加率は100%を実現し、個々の成長に加え、スキル向上による生産性向上、受講生間の交流による相互理解の促進と部門横断ネットワーク形成などにつながっています。(2022年度の研修投資92,000円/人)
 企業風土調査では、「成長のための機会提供がある」という点で従業員の65%が好意的な回答をしており、育成プログラムに対して多くの従業員から支持を得ています。また、年齢や階層を問わず持続的な学びを支援しており、多様な働き方を推進するための「スマートワーク」制度では、勤務時間内の1日15分の自己学習を推奨しています。2022年度は、従業員一人あたりの平均教育時間は42.8時間となりました。

次世代リーダー育成

 シスメックスでは、持続的な企業価値向上のために、次世代リーダーの開発は人的資本戦略の重要なテーマと考えています。ジョブ型人事制度導入以降、ポジションに求められる役割とのギャップを測るタレントレビューを実施し、タレントプールや後継者の充足度を定期的にモニタリングしています。
 後継者候補となった人材については、個々の課題に基づいた育成計画を策定し、必要なリーダーシップ開発プログラムを提供しています。特に、後継者としてReady(準備完了)のステータスの社員を対象とした選抜型の育成プログラムにおいては、受講を通じて、高い視点、視座で考える機会を提供し、上位ポジションへの登用を促進しています。2022年度のオンボーディング(昇進者)研修は延べ4,308名、選抜型研修(後継候補者)には91名参加しました。
 2023年度からは、コロナによって一時的に休止していたグローバル研修を再開し、グローバルリーダー育成に向けた投資を進めています。

リスキリング・キャリア転換

 シスメックスでは、新たなキャリアの可能性を広げる機会として、インプット中心の学習ではなく、実際の仕事や関連テーマの実体験を通じたリスキリングやキャリア転換をサポートしています。
 例えば、デジタル化に関するリスキリングとして、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に必要な知識・スキルを体系化し、それぞれのレベルに応じたプログラムを提供しています。
 また、本人の希望で配置転換を行う場合には、半年のトライアル期間を設け、その職務や組織で活躍できるかを見極めた上で、正式配属を決定するアプレンティス制度を導入しています。
 さらにジョブ型の人事制度をグループ関係会社にも導入したことで、共通のグレードに基づき、部門・グループ会社間での比較が可能となるため、本人の希望地域や専門性をマッチングさせることで、キャリア探索期や確立期だけでなく、リスキリングによる学びや経験を活かしたセカンドキャリアの構築にも有効に作用しています。

研究開発者向けの教育

 シスメックス株式会社では、研究の成果や取り組みを発表する「シスメックス イノベーションフォーラム」を毎年開催し、研究開発系人材のスキルやモチベーション向上を目指しています。
 また、研究開発系人材に特化した教育も積極的に行っています。2022年度は、イノベーションの活性化、創出に向けて、開発の初期段階から医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発できる人材を育成する外部プログラム「ジャパンバイオデザインフェローシッププログラム」や、大阪大学が主催する「イノベーション女性活躍推進プログラム」などに参加しました。
 また、開発プロジェクトメンバーを対象とした、国際標準のプロジェクトマネジメント手法を学ぶプログラムや、患者さんへの価値提供を重視するマインド醸成に向けた社外有識者による講演など、幅広く施策を展開しました。

Sysmex EMEAキャンパス

EMEAキャンパス

 EMEA地域では、欧州、中東、アフリカ諸国の全従業員を対象に、オンライン/オフラインでさまざまな研修プログラムを提供するトレーニングスペース「EMEAキャンパス」を開設しています。EMEAキャンパスでは、一般的なビジネススキルから技術的なものまで、テーマに沿って講義やワークショップを企画し、将来のリーダー育成やスキルアップ、社内ネットワークづくりを目指します。また、管理職向けには、チームマネジメントに必要なスキルの習熟を目的としたカスタマイズ型リーダーシップ研修「Ready to lead」をはじめ、人材開発やコーチング、リバースメンタリングなど幅広いプログラムを提供し、リーダーシップ発揮に必要なスキル習得の支援に注力しています。

  • 欧州、中東、アフリカ地域

その他人材育成プログラム

会社名 プログラム名・施策名 目的・概要
シスメックス
株式会社・
シスメックス
RA
ものづくりプロフェッショナル 育成活動 生産改革活動の一貫として、ものづくりの人材育成を推進。新人育成とともに、多能工育成のための技能訓練、ものづくりに必要な専門知識教育などを実施
DX リテラシー教育 AI等の新しい技術を活かし、データ活用方法を考える力、業務効率化・イノベーションの実行力を鍛える、DXリテラシー研修を実施
シスメックス
アメリカ
Sysmex University アメリカ、カナダ、ラテンアメリカの全従業員を対象とした、対面とオンラインを組み合わせた研修プログラム。リーダーシップスキルやプロジェクトマネジメントをはじめとしたビジネススキル、専門スキル、メンタリングなど、多様なコンテンツを提供。
Sysmex Management Academy 新任管理職などを対象とした半年間の選抜型研修。
シスメックスの経営の役割と責任に関する洞察力など、マネジメントスキルの強化を図る。
シスメックス
ヨーロッパ
 
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのプログラムを提供。専門知識の向上とカスタマートレーニングのトレーナーを育成することを目的とする
シスメックス
上海
Sysmex Shanghai University 全従業員を対象としたオンライン・トレーニングで、従業員の成長支援を目的に2019年度より開始
シスメックス
アジア・パシフィック
LinkedIn ラーニング 全従業員対象のSNS(LinkedIn)を利用したオンライン・トレーニングを約100コース提供。マネジメント、リーダーシップ、クリティカル・シンキング、ビジネス分析力、データ分析力などのスキル習得・強化を図る
Sysmex Academy 製品関連知識と医学的知識を習得するためのオンライン・トレーニングプログラム

HRテック

 シスメックスでは、グループ全体の人材情報を一元管理しています。これらの人事情報を活用しながら、DXや働きがいの創出に取り組んでいます。また、大切な人事情報の漏洩などを防ぐため、システムによるデータマネジメント機能に加え、グローバルでデータ管理規則を設け、データアクセスの制限を行っています。これにより安全かつタイムリーにデータを活用できる仕組みを構築しています。
 また、リモートワークやオンライン研修の開催など、業務内容や個人の生活スタイルに合わせて柔軟に働けるようシステムを整えています。さらにマッチングアルゴリズムを利用した自律的なキャリア形成、従業員エンゲージメントサーベイのリアルタイムでのフィードバックなど、最新のテクノロジーを活用してタレントマネジメントを推進しています。
  • 「シスメックス」はシスメックスグループを、「シスメックス株式会社」は、シスメックス株式会社単体を指します。